働き方はどんどん自由になり、多様な働き方が尊重されるようになった昨今。企業は、タレント(優秀な人材)を確保することが容易ではなくなり、多くの経営者はその関係構築のあり方を模索しています。

そもそも、出会いはどこにあるのか。出会ったところで、どうやって関係を構築していけばいいのか――。

Public Relationsはその一助を期待されていますが、現状の採用候補者や非雇用人材との関係構築の概念がない状態では、優秀な「個」との良好な関係は構築できません。経営層とPRパーソンには、Public Relationsだけにとどまらず、新たに「Personal Relations」が求められる時代が到来したのです。

2019年2月28日、PR Table Communityイベント第16弾として「優秀な人材と関係構築の未来〜第一線で活躍するビジネスパーソンと生討論」を開催しました。

これは、2018年11月27日に開催された「PR3.0 Conference」にて行なわれた本テーマのセッションの続き。実は、時間内でまったく収まりきらなかったので、今回のイベント開催につながったのです。

当日、5名のゲストのほかに、オーディエンスから2名の登壇者を迎えてセッション開始。予定調和のないディスカッションから、一部のトピックを抜粋してお届けします。

▼ゲスト
曽山 哲人さん(株式会社サイバーエージェント 取締役 人事統括)
村上 臣さん(LinkedIn カントリーマネージャー)
北野 唯我さん(株式会社ワンキャリア 著者/最高戦略責任者
藤本 あゆみさん(一般社団法人at Will Work 代表理事 / Plug and Play Japan株式会社 VP, Marketing / Communications)
菅原 弘暁(株式会社PR Table 取締役)

▼オーディエンス参加者
加藤 恭輔さん(株式会社メドレー  執行役員)
河原 あずさん(東京カルチャーカルチャー/コミュニティ・アクセラレーター)

「そもそも企業はどこまで個人を信頼する?」個人発信の推奨、黙認、禁止の基準

藤本さん:まず一番初めに、企業と個人の関係性について皆さんのお考えをお伺いしたくて。というのも、最近、不適切動画という言葉が流行語大賞を取りそうな勢いで不適切動画がニュースを賑わせていますよね。最初はアルバイトが当事者だったけど、その後社員も出てきました。

前回のカンファレンスで、社員がTwitterやFacebook、ブログなどで発信するのをどういう風にコントロールするか、そもそもしないかという話をしましたが、一連のニュースは、企業がどこまで個人を信頼するか、任せるかという部分を結構えぐっている感じがするんです。この部分に対してどのようにお考えでしょうか?

曽山さん:サイバーエージェントの場合は、推奨しているというよりは何も言っていないという感じです。ブログにしろSNSにしろ、社員が自分で判断して実名を出してたくさん発信しています。こちらからは、法律的なNG事項は伝えるし、悪口は炎上するからやめたほうがいいよというアドバイスをするくらい。

基本的には思ったように書けばいいと言っているので、4〜5年に1回くらいは社員が炎上します。でもその炎上も、真面目に書いたうえでの炎上だったら、「発信したことが素晴らしい」と褒めてあげたほうがいいと思っていますね。

曽山 哲人さん(株式会社サイバーエージェント 取締役 人事統括)——伊勢丹(現 株式会社三越伊勢丹ホ ールディングス)に入社し、1999年にサイバーエージェントへ中途入社。インターネット広告事業部門の営業統括を経て、2005年人事本部長に就任。 現在は取締役人事統括として採用・育成・活性化・適材適所に取り組む。著書に「強みを活かす」「最強のNo.2」「クリエイティブ人事」など

河原さん:IT企業という意味では前の会社(ニフティ)も似ていて。最低レベルのガイドラインは一応あるけど、どんなガイドラインかと聞かれるとあやふやにしか覚えてないんですよね。それぞれの判断基準でゆるい感じにやっています。

村上さん:LinkedInはガンガン投稿しろ系です。ソーシャルメディアの会社ですからね、社員が投稿するハッシュタグまで決められています。会社で起きた楽しいモーメントをどんどん発信しましょう。その代わり、もちろん社外秘の情報はダメだよっていう。

河原さん:僕自身はイベントをつくって発信するのが仕事なので、日がな一日TwitterやFacebookなどで投稿しています。イベントをつくるプロセスから当日の様子まで発信するけど、トンマナだけはきちんと意識してやっていく必要はあると思ってます。

企業のプロモーションをやっている公式アカウントの人たちは、その辺の線引きが上手い人が多いですよね。だけど、ソーシャルメディアを使う人たちの層が広がることで、もともと仕事でソーシャルメディアを使っていた人たちの想像を超えたことがおきてしまうようになってきたということかなと。具体的には、コンビニのアイス用の冷蔵庫にアルバイトが入った辺りが変わり目だったかなと思いますね。

▲河原あずさん(東京カルチャーカルチャー/コミュニティ・アクセラレーター)——2013年より2016年までサンフランシスコに駐在。現地の企業とのコラボイベントを多数実施し、現地コミュニティの活性につとめる。帰国後、NHK、伊藤園、オムロンヘルスケア、楽天証券など、数多くの企業コラボイベントをプロデュース。東急グループのイッツ・コミュニケーションズが運営する渋谷のイベントハウス「東京カルチャーカルチャー」プロデューサー。イベントプロデュースのみならず、企業のコミュニケーション・デザインや、新領域のコンセプト・メイキングも得意とする。

 

菅原:他人事ではないなと思っていて。っていうのは、ベンチャー界隈の、特に広報や採用の方って、感情むき出しの投稿をすることが結構多いじゃないですか。それはいわば武器だと思うんです。僕は割と節度を持ってやってるつもりですが(笑)。

でも、その投稿に対して「※これは個人のアカウントであって、会社の見解ではございません」って入れるの、あれ、マジで無意味じゃないですか?会社名出してるじゃんって。一部だけ切り取られて魚拓のように2ちゃんねるで出回ったら意味ないですからね。

記者の個別インタビューだって、いろいろ聞かれて答えちゃいけないことは伏せながら答えていくけど、本題が終わったあとに別の話から誘導して「個人的にどう思われます?」と聞かれてぽろっと答えたことが新聞の見出しになるとか。そういうのあるじゃないですか。

村上さん:個人の見解とオフレコほど守られない約束はないっていう。僕は自分のブログには「個人の見解」と入れます。何かあったときの保険になるかもしれないっていう希望的観測ですけど。

逆に、日経のサービス「COMEMO」では実名も本当の肩書きも出さずに、ゆるふわバンドマンの電脳コラムニストとしてやっているので、そもそもそのプロフィールが個人の見解。だから書いてないですね。

▲村上 臣さん(LinkedIn カントリーマネージャー) ——大学在学中に仲間とともに有限会社「電脳隊」を設立。その後統合したピー・アイ・エムとヤフーの合併に伴い、2000年8月にヤフーに入社。一度退職した後、2012年4月からヤフーの執行役員兼CMOとして、モバイル事業の企画戦略を担当。2017年11月にLinkedInの日本代表に就任。複数のスタートアップの戦略・技術顧問を務めている。

 

北野さん:ワンキャリアは、ブランドだけ守ってくれたらいいよと言っていて。他企業との競業はやめてほしい、こういうことはあまり言わないでほしい、という要望はあるけど、それ以外は自由にやっていいんじゃない?っていう。

元々はダメだったんですけど、それを打ち破ってきた歴史があるので、いまはみんな本当に自由にやっています。

▲北野 唯我さん(株式会社ワンキャリア 著者 / ワンキャリア最高戦略責任者)——『転職の思考法』『天才を殺す凡人』の著者。就職氷河期に博報堂・経営企画局に新卒入社。全社戦略を担当し、その後、博報堂DYHoldingsに出向。グループ経理財務局にて、子会社統廃合などを担当。米国・台湾留学後、ボストンコンサルティンググループへ転職。事業戦略立案・組織改編コンサルティングなどを担当し、2016年ワンキャリアに参画、最高戦略責任者として2年で日本最大級の上位校向け新卒採用サービスにグロースさせる。経営企画の執行役員

「登壇してほしい」と呼ばれるような人材であれ

藤本さん:会社が取り巻く環境によって、個人的にポジティブにいけるかなと思ったことでも周りが受け止められないということはあって、そういうのはコントロールできないことだと思うんですね。その不確定さが怖くて、イベント登壇とかしてみたいけどできないという人がいたとき、皆さんならどんな風に背中を押しますか?

加藤さん:僕は、登壇して自分の知見を同業者の方に聞いてもらったときに、「すごくいいことを聞いた、明日からすぐ実践してみよう」と思って帰っていただけるようなレベルで仕事をしようという話をしています。エッジの効いた仕事ができているか?やり切っているか?というところや、こういうテーマで声がかかるようになっていこうね、という話を1on1で常に話すようにしています。

▲加藤 恭輔さん(株式会社メドレー 執行役員)——2006年一橋大学商学部卒業。優成監査法人に入所し、公認会計士として監査業務に従事する傍ら新卒採用の責任者を兼任。クックパッド株式会社に経営企画担当として入社後、IR、事業推進、経営会議運営などを経て会員事業部長としてマーケティング、ユーザーサポート、サービス開発、新規事業の責任者を歴任。2014年に執行役員に就任。その後広告開発の責任者、アライアンス推進、採用、グループ会社支援等を担当。2016年より株式会社メドレーに参加。

 

藤本さん:登壇のやり方もいろいろありますよね。指南することはあるんですか?

村上さん:僕は前職でエンジニアの組織を見ていたので、エンジニアのイベントでその人の得意技を話す機会があったときにプレゼン指導をしていました。エンジニアは話すことに苦手意識を持っている人が多いので、まずはスライドに逃げろ、喋れないならスライドを送り続けろとか。

こっちがプレゼンするような形式以外に、Q&Aで答えればいいという形式のときもありますよね。どちらにせよ話し方も大事だと思うので、どういう風に話すかというのも結構指導しました。

北野さん:曽山さん、喋るのめっちゃ上手じゃないですか。ポイントはあるんですか?

曽山さん:場数です。場数が絶対です。僕は2005年に人事本部長になってから登壇する機会が増えたんですけど、どれだけの人がメモを取ってくれるかというのをベンチマークにしています。僕の話を聞きに来てくれる人って、人事部に所属している固めの方や年上の方が多いので、あまりメモを取ってくれないんですよ。そういうときは、目を合わせて「いまから3つのことを言います」っていうんです。そうすると、スッとメモを取り始めてくれます。

北野さん:終わったあとにTwitterのハッシュタグを追いますか?

曽山さん:エゴサーチはします。これが刺さった、刺さってないというのがわかるので。あとはセミナー後に回収したアンケートを見ますね。皆さん、いい意味で自由に書かれるじゃないですか。それを一つひとつ受け止めて、なるほど、こっちだったらマジョリティが取れたのか、次はこうしようなんて考える。それをもとに、セミナーが終わったその日に、次の機会があると仮定したプレゼン資料をつくるときもあります。

藤本さん:河原さんも結構登壇していますよね。何かやられていることはあるんですか?

河原さん:僕の場合はファシリテーション側が多いんですけど、とにかくTVに出ている司会者の回しや受け答えなどを観察して、リアクションを磨くというのをまずやりました。上手い人の話を聞いて、自分なりに咀嚼していると、だんだんと話し方が身についてくるんです。

会社の市場価値にたよらず、個人の市場価値を上げないと意味がない

菅原:うちは社員の登壇を推奨しているんですけど、最近は、会社の市場価値と個人の市場価値は必ずしも比例しないということを社員に伝えています。会社が伸びていれば自ずと社員の市場価値が上がるものだと思ってしまうのはミスリード。だからとにかく自分を社会に売り込むことはやっておきなさい、と。

あと、社員がずっとうちの会社にいるはずだと執着してはいけない。むしろヘッドハンティングされるくらいの方がちょうどいい。その時にPR Tableが「それでもこの会社にいたい」と選ばれるかどうかは、自分たちの努力次第だと思っています。社員が引っ張られたら誇らしいという気持ちは持っていますね。

いつかリクルートみたいに、人材輩出企業みたいになれるんじゃないかなって妄想しています。そこら辺、皆さんはどうされていますか?

▲菅原 弘暁(株式会社PR Table 取締役)——2011〜2015年 大手総合PR会社(株)オズマピーアール、内1年間は博報堂 PR戦略局に在籍。その後、国内最大級共創プラットフォームを運営する会社でPR・ブランディングに従事し、2015年9月より(株)PR Tableに参画。2016年12月より現職。250社以上の広報コンサルティング、500本以上のコンテンツ監修など、PR Table初期の事業立ち上げを経て、2017年12月から「PR Table Community」をリリース。その後、2018年11月には国内初となるPRの大規模カンファレンス「PR3.0 Conference」をプロデュースする。

 

加藤さん:僕自身は、比例しないとは思っていなくて。どちらかというと、会社の価値と知名度が上がってきたタイミングで、うまくそこに自分を乗せられると、引っ張られて市場価値が上がりやすくなると思います。

例えば僕の場合、クックパッドにいたときに、事業部長をやらせてもらうことになったんですね。半年後にグロースハックの本を書いたのですが、「日本ではまだ馴染みがないグロースハックっていう手法だけど、実はみんなが使っているクックパッドでも実施しているんだよ」というストーリーが世間的にウケるだろうということで、話をいただいたという背景があるんです。

これって、会社の知名度と自分がやり始めたことをうまくリンクさせて市場に充てられたということだと思うんですよね。それがあって、いろいろな経営者の方や、サービスグロースの責任者の方々から話を聞かせてほしいと言っていただけるようになりました。

そういう方々の話を聞くにつれて、自分の目線もどんどん上がっていったり、最先端の知見が集まるようになるという現象が起きたんですよ。だから、自分の実力をあげる努力をしつつ、会社の価値や知名度はうまく使っていくということを意識するとすごくいいかなと思います。

村上さん:基本的には会社って、個人が使い倒すものだと思うんです。会社の方針に合っていて、それで自分も乗っかって上がるんだったらウィンウィンで健全な関係じゃないですか。どんどんやればいいと思います。

あと、伸びている業界にいるというのもいいと思います。いるだけで丸儲け。インターネットは業界的に全部そうじゃないですか。

北野さん:僕らも「上りのエレベーターで戦おう」ってよく言います。伸びている産業で働く、同じ会社の中でも伸びている分野をやらせてもらう。それだけでも絶対自分の価値は上がると思うので。そういう意味で、僕は会社と自分のキャリアを重ねれば、一緒に市場価値を上げていけると思っています。

河原さん:逆に、周りのスタッフがやらないことをあえてやるというのは、自分への投資としてものすごくプラスに働くことが多いなという気はしています。ほかの人は登壇に行かないけど、自分は行く。ほかの人は勉強会に行かないけど、自分は行く。つまり、空いているところを探す。これって合理的なアクションだと思うんです。

村上さん:丸ごと空いているところというのはなかなか難しいじゃないですか。でも、組み合わせや掛け算で探していくと、意外と見つけられますよね。


個人が企業を選ぶように、企業も個人を選んでいい

藤本さん:会社って合う合わないがありますよね。長期的なキャリアを形成するルートが敷かれている会社があれば、スピード感を持ってキャリアを重ねていくビジョンの会社がある。結局は、自分がどう生きていきたいかだと思うんです。

▲藤本 あゆみさん(一般社団法人at Will Work  代表理事 / Plug and Play Japan株式会社  VP, Marketing / Communications)——大学卒業後、2002年キャリアデザインセンターに入社。求人広告媒体の営業職を経て、入社3年目に、当時唯一の女性マネージャーに最年少で就任。2007年4月グーグルに転職。代理店渉外職を経て営業マネージャーに就任。女性活躍プロジェクト「Women Will Project」のパートナー担当を経て、同社退社後2016年5月、一般社団法人at Will Workを設立。株式会社お金のデザインでのPR マネージャーとしての仕事を経て、2018年3月よりPlug and Play株式会社へ。VP, Marketing / Communicationsとして従事。

 

曽山さん:若手の転職は、以前と比べれれば簡単になっているのは間違いありません。その追い風になっているのは、ソーシャルメディアです。LINEやFacebook、Twitterなどから、どんどん会社の中身がバレていく。どういう仕組みの会社なのかが、入社しなくてもわかるんです。

藤本さん:採用でいうと、昔は求人サイトのデータベースを見れば、企業はいい人を見つけられたかもしれませんが、いまや、どこで求職者と接点を持つかというのが課題になってきているんですよね。会社の中身がバレているかもしれない、嫌われているかもしれないという不安もあると思うんです。その辺の対策は、何かされていますか?

曽山さん:例えばサイバーエージェントは、派手なイメージを一部の人にもたれていることもありますが、そういう方々に別の側面を含めた会社の真実ことを伝えるにはどうするか。興味を持ってもらえるように切って伝えるというのが、僕は大事だと思っています。

具体的にはインターンを何十種類もつくるということです。サイバーエージェントのインターンは、社名のインターンが1個もありません。広告のインターン、新規事業を考えるインターン、アドテクの新しいプロダクトをつくるインターンという感じです。

やりたい仕事のイメージでサイバーエージェントに来てくれて、その結果、ギャップに驚くというのはものすごくあります。本気で学生の興味がどこにあるかを考えて、僕らは持っているものを伝えて、どうにか出会いをつくっていく努力したのがすごく良かったみたいです。

村上さん:(求職者に)嫌われないというもの大事かもしれないですけど、最近はカルチャーフィットという言葉があるじゃないですか。その企業での働き方が合うか合わないかは絶対あるし、そこからどういう選択するかは個人の自由。でも、逆に言うと、企業側もその権利があると思うんです。

だって、合わないとお互い不幸じゃないですか。不幸は極力減らしたいので、ある程度合う人が来てくれてコミュニケーションをとっていくというのが、これからは大事なんじゃないかな。

そのために企業ができることはカルチャーの発信。LinkedInはカルチャーが変なので、合わない人は絶対合わない。具体的には、わりとワイワイ遊んでいるかのように仕事をするのが推奨されている会社なんです。たぶん、変だということを自覚しているから、社内の様子をどんどん発信しろって言っているんでしょうね。

菅原:最近、Twitterのトップに「会社の性格」を固定しているんです。極端に言うと、「うちは強者の論理が好きで、弱者の論理は嫌い」と公言しています。そしたら、エントリーの数はドーンと減ったんですけど、一次面接を通過する確率がドーンと増えて、無駄な面談をしなくなったんですよ。

北野さん:なんで会社の性格を出そうと思ったんですか?

菅原:ミスマッチを無くすためです。ミスマッチがあった時期って、ちょっと髪が長くて、パーカーを着てたんです。喋り方のせいもあって必要以上に優しい人だと思われちゃって。そういう僕の雰囲気=会社の雰囲気だと思って面接に来られた結果、ミスマッチが起きる要因の一つになっていたんですね。つまり、見た目と会社の性格が一致していなかった。

会社の性格って、完全に好き嫌いの世界だなと思っていて。うちの会社の性格を好きだと思わない人は、絶対に違う会社に行った方が活躍できるし、それが世のため人のためだと思うんです。労働人口はどんどん減っていますから。

企業の本当の姿を見え隠れさせることが、いい採用につながる

北野さん:いま学生や求職者に「どういう方法で企業を選んでいますか?」って聞くと、企業側の認識と大きなギャップがあるんです。1位だけは一緒で、いわゆる就活情報サイト。でも2位以下は全く違っていて、企業は2位に自社WEBサイトをあげるんですけど、学生や求職者にとってはものすごく下位。じゃあ2位は何かっていうと、口コミなんです。

インターネットの口コミもそうなんですが、友人や先輩からの口コミで企業を選びます。それはどういうことかというと、1回採用で不誠実なことをしてしまうと、それは来年以降のブランドになってしまうということ。なかなかイメージ回復ができないんです。

じゃあ企業はどうやって採用に取り組めばいいのかというと、お土産を持って帰ってもらう。このイベントに参加した方が1個でも2個でも何かしら持って帰ってもらえるように、ということを企業がやっていくと、いい口コミが溜まるという時代なんですよ。

河原さん:僕は前職がニフティという会社だったんですけど、今の親会社に買収される前はわりとまったりしたカルチャーを持ったところだったんです。サブカルチャーに興味のある人が自然と集まって仲良くなって、みんなで面白いことができる環境がありました。

普通考えると、バリバリの会社に比べると採用には苦戦するんですが、うまく採用がまわってました。新入社員が入社を決めた理由として多かったのが何かと言うと、当時ニフティが運営していた「デイリーポータルZ」(現在はイッツ・コミュニケーションズ運営)なんですよ。あれは当時PR・ブランディング部署の管轄で、採算は取れていないけど、企業が自分たちはこういう価値観を大事にする会社なんだとアピールするという役目を結果的に果たしていたんです。

自分たちの素のカルチャーが伝えられるメディアがあるとマッチングが効いていい影響が出てくる。そう考えると、みんなデイリーポータルZみたいなサイトをつくればいいんですよ。

村上さん:実態が見え隠れする場ですよね。やっぱり嘘はバレますから。

もう嘘はつけないから、いっそ自ら暴露していく

曽山さん:僕の中に「トリプルE」という採用のトレンドがあるんです。1つ目がエクスポージャー、さらけ出し。何かあると簡単に晒される、バレる時代になっているので、いっそ自らエクスポージャーした方が絶対にいい。

2つ目がエスティームニーズ、承認欲求。いま学生たちはたくさんの「いいね」をもらうことが生活の中に自然と入っています。実際、最終面接で「僕、承認欲求強めなので」と言う学生もいるんですよ。「それ、アピールとして言ってる?」って聞くと、「結構それで頑張れるタイプなので」って。

彼らは、承認欲求が武器になると思ってるんですね。褒められたらもっと頑張りますって言う、前向きな表現として解釈しているんです。自分自身もいいねをもらえた方が嬉しいのは事実ですし、SNSをやらない人事の方が面接したら何を言っているかわからないかもしれません(笑)。

3つ目がエモーションリワード、感情報酬。報酬には、お金の報酬と感情の報酬があるけど、いま、感情の価値がすごく上がっています。なぜかと言うと、楽しいっていう感情はどんどん伝わって広がるものだからです。

インターンに来た学生が同期や先輩といい出会いがあるとすごく良かったってなります。また、企業側も「僕、こんなに成長できたインターンはなかったです!」って言ってもらえるとすごく嬉しい。これらも感情報酬ですよね。

この3つに配慮して採用を進めるべく、チームで議論しています。

北野さん:嘘はつけないから、ということですよね。僕は今年、仕事選びが透明化されて、来年の2020年は経営が透明化されると思っているんです。その兆しはもうすでにあって。

例えば、サイボウズが経営するうえで一番重要視しているのが情報をシェアすることだったり、トヨタが社員向けのカンファレンスをTwitter上でオープンにしたり。ほかにも同じ「透明化」というキーワードで語れる取り組みをしている会社が結構あるんですよ。

菅原:まさに北野さんがおっしゃったとおりで。もう嘘はつけない、実態との乖離をちゃんと埋めようというのが、いまの時代なんです。

説明責任を果たして伝えるというのが、PR業界とHR業界をつなぐ架け橋だと僕は思っていて、それがちゃんとできている会社は両方ともうまくいくし、できていない会社は両方とも沈むと思っています。

「嘘をつかなくていい」ならば、私たちは生きやすくなるのかもしれない

それぞれの知見を持った7人による今回の生討論。筋書きなしとはまさにこのことで、いい意味で縦横無尽にトークがくり広げられたセッションになりました。

これからの企業と人材の関わりにおいて重要なのは、「嘘をつかない」ということ。SNSが発達して、個人や企業の本来の姿が見え隠れするようになった昨今、嘘はすぐにバレて、命取りになります。

だったら、そもそも嘘はつかずに、正面から自分のことを伝えるのがベター。

「嘘をつかない」それは、言い換えれば「嘘をつかなくていい」ということになります。そう考えると、何かを取り繕うために嘘をついて生きるよりも、よっぽど生きやすい世の中がこの先に待っていると思えるのではないでしょうか。(編集部)