「一般消費者」ではなく「個」との関係性へ——パブリック・リレーションズの歴史をたどってみる【vol.6】

text by Yu Oshima(PR Table)

自分が関わっている仕事は、どのくらい昔からあったのか。そもそも発祥の地はどこなのか。どんな経緯、どんな背景があって、現代に受け継がれてきたのか——。考えてみたことがあるでしょうか? 日々、私たちが当たり前のようにふれていること。すべてのものごとには必ず、なんらかの”歴史”があるものです

 

もちろん、パブリック・リレーションズ(PR)にも。

目の前の仕事に一生懸命になっていると、なかなか過去を振り返っている余裕はないかもしれない。でも私たちが歩んでいる1本の細い道は、たしかに過去から現在へとつながれてきたもの。そこには、たくさんの資産があると思うんです。この道を切り拓いてきた先人の想いだったり、思いがけない起源や背景だったり。

 

そして、そうした歴史をたどることで、きっとこの先の未来が一体どっちに向かっていくのか……その道筋を示してくれる、ささやかなヒントも得られるはず

 

ではご一緒に、PRの歴史をたどる旅をはじめましょう——。

 


▼ vol.1から読む

PRの発祥は19世紀のアメリカ—— パブリック・リレーションズの歴史をたどってみる【vol.1】

PRの舞台は政治から民間企業へ—— パブリック・リレーションズの歴史をたどってみる【vol.2】

企業課題を解決するPRエージェントの登場—— パブリック・リレーションズの歴史をたどってみる【vol.3】

大衆消費社会とパブリシティの発展期—— パブリック・リレーションズの歴史をたどってみる【vol.4】

PRの重要性が浮き彫りになった70年代—— パブリック・リレーションズの歴史をたどってみる【vol.5】


不祥事が相次いだ、「顔の見えない日本」

1970年代以降、世界中で環境や人権問題への意識が高まり、同時に消費者運動も盛んに行われるようになりました。そうした時代の変化に伴い、企業も利益の追求を優先するのではなく、自分たちのステークホルダーとどう向き合うのか、その社会的な責任を厳しく問われるようになっていったのです。

しかし80年代になると、日本はいわゆる“バブル景気”に突入。空前の好況を迎える中、利益を追求する企業の不祥事が相次ぐことになります。

さらに80年代は、アメリカとの間の経済摩擦が大きな問題となっていました。今でこそ、企業で問題が起きればトップが表舞台に出て発言をすることが当たり前。しかし当時の日本では、まだそうしたコミュニケーションが活発ではなく、海外から「顔が見えない日本」と批判されていたそうです。

こうしたさまざまな出来事を経て、コーポレート・コミュニケーションやコンプライアンスの重要性が少しずつ企業の中で認識され、整備されていきました。

インターネットの登場による時代の変化

1991年にバブルが崩壊し、経済が低迷する中で、もうひとつの変化が生まれはじめていました。インターネットの登場です。

『Windows95』が登場した1995年以降、インターネットが中心となって、世界中の人々のコミュニケーションを大きく変えていきました。その影響は、もちろん企業活動にも及びます。

企業から一般消費者へ。ずっと一方通行でしかなかった顧客・ユーザー(その他、ステークホルダーも含む)とのコミュニケーションは、インターネットによって双方向性を帯びていくことになりました。

企業が提供する商品やサービスに対し、顧客・ユーザーからのフィードバックが生まれる。単に“消費者”に対する情報提供をするだけでは、十分なコミュニケーションといえなくなったのです。

SNSの普及と、双方向のコミュニケーション

インターネットの普及率は2000年代半ばから急速に高まり、2005年時点で7割以上の人が日常的に触れるようになりました。

さらに2004年にはFacebookが、2006年にはTwitterが、アメリカで誕生。新たなメディアとして、SNSが登場することになり、さらに劇的にコミュニケーションの在り方が変わっていきます。

かつてはマスメディアのみが伝えていた情報が、一般の人たちが誰でも、気軽に発信できる時代へ——。

こうした変化によって、情報の透明性がより重要視されることになり、全方位的な“Public Relations”を意識した企業活動が求められるようになりました。

時代とともに、アップデートを繰り返すPublic Relations

これまで日本の社会において、PRはメディア・リレーションズを通じた情報発信を中心に行われてきました。

しかしコミュニケーションの在り方が大きく変わったいま、メディアを通じた情報の提供だけではなく、各ステークホルダーとの直接的な対話が重要性を増しています

顧客・ユーザーだけではなく、従業員、株主・投資家、地域社会、行政や自治体、メディアなど、さまざまなステークホルダーとの関係性一つひとつを良好に構築し続けること。

そうした個々の関係構築が重要となっているのです。

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これまで6回にわたり、かなりざっくりではありますが、19世紀に誕生してから現在にいたるまでの、PRの歴史をたどってきました。根本的な考え方は変わらないものの、社会の変化に合わせて、企業活動に求められること、必要とされる手法はアップデートを繰り返しています。

これからの未来に向かう中で、Public Relationsを実践し続けるためにはどんなアップデートが必要になるのでしょうか。

 

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<参考文献>
猪狩誠也(2007)『広報・パブリックリレーションズ入門』 宣伝会議.
井之上喬(2006)『パブリック リレーションズ 戦略広報を実現するリレーションシップ マネジメント』 日本評論社.

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