自社はもちろん「社会」をともによくする気持ちを。共創の意識が、採用×PRを体現するーーオイシックス・ラ・大地 三浦孝文さん

text by Kana Hiyama
photo by Takuya Sakawaki

現在、超売り手市場となっている新卒採用ーー。

面接中心の選考方法により、無意識に現れてしまう上下関係。相互理解の不十分によって起こるミスマッチ……。多くの企業が悩むこれらの課題は、日本全体で考えると非常に大きな社会的損失とも考えられます。

課題が尽きない「超売り手市場」のなか、学生から愛される会社になるには、どうすればいいのでしょうか。

PR Table Communityは、そんな課題を打ち破る鍵が「Public Relations」の視点にあると考え、新卒採用における「学生との良好な関係構築」のあり方を探究していきます。

今回は、社員、人事、学生…それぞれの距離を近づけるため、数々のコミュニティやオフラインイベントの立ち上げに参画してきた三浦孝文さんをたずねました。

おもしろい学生とおもしろい人事をつなぐ「OGOJ会」、社会課題に企業と学生が共に向き合う「SIH(Social Insight Hub)」、学生が主体的に考える機会を提供する「 Venture’s Live」や人事向けコミュニティ「人事ごった煮会」などの運営。社外でも「人と人をつなぐ」を軸に活動されています。

「ミスマッチをなくす」という新卒採用の課題に対し、一つの選択肢としてコミュニティの運営という形をとった裏には、どのような想いがあったのでしょうか。三浦さん流の新卒採用におけるPublic Relationsの実践について、お話をうかがいました。


Profile
三浦 孝文さん Takafumi Miura

オイシックス・ラ・大地株式会社 人材企画室 人材紹介スカウトセクション マネージャー

1987年、大分県別府市生まれ。関西学院大学を卒業後、 株式会社D2Cで採用などを担当したのち、クックパッド株式会社に中途入社。採用を中心に携わり、子会社の株式会社トクバイ、株式会社おいしい健康の人事機能の立ち上げに関わる。その後、退職して現職に至る。 社外では「OGOJ会」「SIH」「 Venture’s Live」「人事ごった煮会」など数々のコミュニティの運営に携わってきた。


学生と企業の出会い方に、本質的な課題がある

ー まず、三浦さんが立ち上げに参画された「OGOJ会」とはどのようなものなのでしょうか?

三浦さん(以下、敬称略):OGOJとは「O:おもしろい・G:学生と、O:おもしろい・J:人事」の略で、運営メンバーが信頼できる他社の素敵な人事界隈の方と、その方々の周りのおもしろい若手社会人や学生さんに声をかけ、参加者に素敵な出会いを提供しようという会です。

会自体は採用活動に直結するようなものではありません。むしろそういう色はなくし、学生さんも社会人もフラットに出会える場づくりを心がけています。だからこそ、短期的な就職や転職に限らず、仕事的な付き合いや友人関係など、参加者同士がさまざまな関係性に発展しています。

ー なぜこのような場をつくろうと思ったのでしょうか。

三浦:多数の人事と多数の学生さんや若手社会人、それぞれがクロスするような場をつくる。そうすれば、参加者のの選択肢を広げることができ、「ミスマッチのない採用を実現する」という目標に、結果的により速くたどり着けると考えたからです。

もともと人事仲間と話していたときに、各社の選考を受けに来る学生さんが「魅力的なんだけど、自社じゃないんだよな」という課題感を持っていたんです。

すごく面白いことをやってるんだけれど、本人の向かっている方向性が必ずしも今の自社にマッチしない。本人も気づいていないけれど、そういうケースって結構あるんですよね。才能があるのにうちの会社だけとしか出会っていないって、すごくもったいない。と思いつつ、会社という枠組みのなかにいると、他社を紹介するなんて手出しもできない。そんな自分たちもまた、もったいないなと思っていて。

ー 企業と求職者がお互いに化粧しあい、素顔が見えない結果、誤解が生じ、互いが不幸になってしまう。それってそもそも両者の出会い方に問題があるということを、noteにかかれていましたよね。

三浦:そうですね。出会いの話でいうと……人事仲間のある方が、自身と交流のある学生さんを僕が主催していた人事仲間のBBQに連れてきてくれたことがあったんです。そこで「三浦さんの会社、絶対合うと思うんですよね」と紹介され、実際にいまオイシックスで働いている後輩がいます。そういう、学生さんと企業の自然な出会いもあって良いのではと思うんです。

人事、学生さん、あるいは社員。それぞれがオープンに繋がることに積極的だと、そのようなご縁があるかもしれません。また、僕も他社のカルチャーを知っていれば、自分の後輩に就職やインターンの選択肢を勧めることもできるかもしれませんよね。そういった、オープンな関係性がつくれる「場」が少ないことや、現状の採用活動や就職活動という出会い方…すなわち仕組みや構造にこそ、課題があるのではと考えています。

就職活動において大切なことは、学生さん自身が潜在的・顕在的にやりたいことや、やってきたことの延長線上で、それらを求めている企業と結ばれることです。

就活ツールはそのようなミスマッチを解決するためにあるのであって、それがナビ媒体やエージェントで解決できるならそれでいいんです。ですが、もしそうなっていないなら、自分たちができることをやればいい。そう思ったのが、OGOJ会の発端でした。

ー 三浦さん自身が学生と関わるときに大切にされていることはなんでしょうか。

三浦:個人としてもOGOJ会としても意識しているのが、学生さんとコミュニケーションを取るときに採用だけを目的にしないこと。興味をもってくれたらそれでいいし、なければ別にいいと思っています。

ー なぜ、採用を目的にしないことが良好なコミュニケーションに繋がるのでしょうか?

三浦:採用はこちらの都合であって、相手あってこその採用活動だからです。相手の顕在的・潜在的な想いに向き合い、結果としてそれが実現できるのが自社であると互いに感じることができれば、その時はこちらも思いっきり気持ちを伝えるようにしています。

そして、僕は人事であると同時に会社の成長を推進していく立場でありたいと思っています。だからこそ、会社を好きになってもらえるような長い関係性や、パートナー企業として何かを生み出していく関係性を、出会った人と築いていきたいと思っています。

採用を目的にして今を好きになってもらうのもうれしいですが、採用を目的にせず長く好きになってもらえたら、もっとうれしいですよね。会社のサービスや商品を使ってくれるお客さんやパートナーになってくれる可能性を常に秘めているので。

近年、そういった「私的に信頼のあるつながりから採用に至る」ケースが増えているなと感じます。だからこそコミュニティの運営に注力されていると思うのですが、とりわけオフラインでのコミュニティ運営にこだわっているのはなぜでしょうか。

三浦:たとえば、いま僕がこのインタビューに載っている時の気持ちって、オンラインだけだと、どんな表情や声色、気持ちで言っているのか想像しにくいですよね?

相手の声色や表情が見えるのは、とても大切だなと思っています。オンラインを否定するつもりは一切ありませんが、僕はオフラインの手触り感や温度感が好きです。

ー SNSでつながることが容易になったいま、オフライン・アナログでのつながりこそが信用されるようなところはありますよね。

三浦:SNSの台頭もあり、選ばれる側も選ぶ側も情報が見えすぎることによって、何を選べばいいのかが選びにくくなっているんですよね。「何が一番自分にしっくりくるのか?」を判断する基準として一番確度が高いのは「自分が信頼できる身近な人」「関係性が深い人」。だからこそ、その人の人となりがわかりやすいオフラインコミュニティの重要性が増してきているんだと思います。

情報を隠すことは、絶対に無理だなと感じます。たとえば「社員のSNS禁止」とルール化したとしても、オフラインで誰かがそれを第三者に言ってしまうかもしれない。人の口に戸を立てるのは難しいので、防ぐのではなく、誠実に向き合うことが大切だと思います。

つまり、会社としても採用担当個人としても、評判が見える化してきてしまっているということ。会社も僕自身も完璧ということは絶対なくて、アラを探せばたくさんあるはず。それにどう向き合おうとしているかの姿勢で判断されていると思います。

課題に向き合おうとする熱量、また実際どれくらい泥臭くやれているのかを見て、周りの人は判断していくんだろうなと思います。

ー といっても、採用を目的にしない関係構築ってなかなか遠回りですし、ご自身の採用人事担当という会社での立場上、難しいことなのかなとも思います。

三浦:短期的なKPIを追うこと、達成することは大切です。一方で、採用数などの短期的なKPIを追ってばかりいると、中長期的に解決しないといけないことがわからなくなったりすると思います。それに、採用目的だけでは関わらないというフラットな意識を持つだけで、学生さんから多くのことが学べるということも実感しています。

フラットに接すれば接するほど、「いまの学生さんってこんなことを思っているんだ」と、”お客様の声といいますか…。そこからの発見や気づきがあって、遠回りかもしれないけど、すごくプラスになっていることを実感します。

企業の中にいる人と学生をつなぐため、全員を主役に

ー OGOJ会のようなコミュニティを運営する、すなわち企業とそのステークホルダーをつなぐために意識されていることは何ですか?

三浦:主催者と参加者が1対nのパワーバランスになる会ではなく、n対nが出会い→1対1が盛り上がる会にすることを意識しています。そこに来てくれているひと全員が主役として自分の思いをアウトプットして、共感してくれる人と次のアクションにつなげていけるか。

特定の誰かだけにフォーカスされたり、運営してる人がすごいという会になると、どんどんずれていってしまうと思うんですよね。運営側のパワーでコミュニティを運営することをしてはいけないと言っているわけでもなくて、それだけだと属人的なものになってしまって、場が繋がっていかないというのはあると思います。

属人的なものになりたくないという思いには、何かきっかけがあったのでしょうか。

三浦:1社目をやめたときのことが、そう考えるようになった原体験として強く残っています。

自分が辞めてしばらくたったある日、ある先輩に「三浦が抜けて〇〇がガクッと下がったよ」と声をかけられたことがありました。そのときに「あれ、俺って何を残せたんだろうな……」と、強烈に後悔してしまったんです。

だから自分がその場から抜けた後も、そこから生まれた関係性や場が継続的に機能していくような仕組みを残し、さらにそのときの想いが、次の方へも繋がっていく場になることを意識しているんです。

「場の編集者」みたいですね。広義の編集者って、その場に仕組みを残せる人なのかなと思っていたので。

三浦:そうなんですかね。「場」をつくるため、企業や組織とあらゆるステークホルダーを繋げるために、常にフラットであること、対極を知ること。ひいては経営と現場をつなぐ者でありたいと考えています。

なぜ、そう思うようになったのでしょうか。

三浦:僕は大学で日本史を学んでいたのですが、その時「史実は書かれていることは一つだけど、解釈は人によって違う」ことを学んだんです。

 それは、人間は論理的思考力を持ち合わせながらも感情の生き物であるということの証明で。すごく頭がいい人でも、背負っているバックグラウンドによって、感情は必ずしもコントロールできないということ。そんな人間が集まって「組織」になると、当然感情同士がぶつかり合う。自分の気持ちも思い通りにいかないのに組織が思い通りに行くだなんてことは、絶対にないんだなと。

だからこそ、数多ある選択肢の中で決めなきゃいけないし、決める為に常に優先順位を考えないといけない。そして、フラットじゃないといけない。でも、自分の感情をフラットにするってすごく難しい。全然、僕ができているわけでもないし、そうありたいと思っているだけです。

僕は、自分と違う世代や立場の人、対極にいる人こそ積極的に会ったほうがいいと思っています。そうすることによって想像の幅と深さは確実に広がるし、出せるソリューションも増える気がします。そのためのコミュニティが「人事ごった煮会」や「SIH」、「OGOJ会」なんだろうなという気はしています。

「社会をよくする」目標に、大勢で向き合うという視点

ー OGOJ会のお話を聞いて、三浦さんは『企業と学生のミスマッチをなくす』目標に、大勢で向き合う視点を大切にされているのだなと感じました。これについて、話を深めていきたいです。

三浦また少し、歴史の話を引用させてもらいますね。

坂本龍馬はよくすごいと言われますが、何がすごいかざっくりいうと、薩摩と長州という同じ日本を良くしたいと思う組織や人をくっつけたこと。要は、くっつくはずじゃなかったものをくっつけて日本を動かしたということです。

会社が始まるときや、サービスが始まるとき。世の中で何かが起こるとき、絶対に人と人とが出会っているんですよ。人と人とが出会うからこそ、事業とか会社が生まれてそれがスケールしていきます。

坂本龍馬に影響されたわけではありませんが、昔からそういうことに興味があって。自分だけ、自社だけで物事を良くする発想は、かなり昔に消えたんですよね。自分より頭のよい人、すごいと思う人はたくさんいる。なので、いかに世の中をより良くしたいと思ったら、同じ志を持ったすごい人同士が繋がっていったほうが世の中は大きく動くのかなと。

自社のミッションに共感する人を採用するということはつまり、その会社の掲げているミッションが前進するわけですよね。だから、一社だけとか、個人だけで考えるよりは、世の中にある強みを掛け合わせたり、課題をすでに解決している会社からノウハウをもらって解決する。そうすることで業界が前進するんだったら、全然それでいいじゃん、と。そういう風に、健全に切磋琢磨していくのがいいんじゃないかなと思いますね。

海外のスタートアップやベンチャーが勃興し、時代が大きく変革する今は、幕末でいうところの黒船が来たのと近い状況。外国からの脅威がすぐそこに来ているときに、もう日本のなかで争っている暇はない!みたいなところで、じゃあ日本人としてどう世界に打ってでるか、ということで、変化を求めたそれぞれの藩が繋がったと思うんですよね。その思想ってすごく重要だと思っていて。いかに会社の枠組みを超えて、世の中にある課題を解決しにいけるかを発想する時代だとも思うんです。

新卒採用についても同じ考えです。「社会をよりよくする」という目標に向けて、N対Nの企業と学生さんが交錯する。みんなで取り組めば、結果的にみんながよくなると思うんです。そうすること、より早く課題の解決にたどりつけるなら、全然いいんじゃないかなと。採用活動も社会の何かしらの課題を解決するための手段のひとつ。それを解決するのに、自社内だけでやらないといけないルールはありません。

「社会をよくする」目標に、大勢で向き合うという視点

三浦これまの就活ツールには「自社がいかに優秀な人材を獲得するか」ということばかりが飛び交っていました。就活ツールを介すと、学生さんひとりから複数の会社をみているという構図に見えがちです。

でも本来はそうではなくて、両方ともN対Nというか。企業と学生さんは、複数対複数の構造のなかにあるはずなんですけど、これまではなんだか一方通行に、それぞれの思いがクロスしないまま終わってしまっていて。でも、それはもったいないですよね。

本来の目的をいかに一番早く達成するかを考えると、適切なのはN対Nの適切なクロスのある関係構築なはず。その仕組みがなきゃつくろう、という発想です。

ー 三浦さんは、会社がいかによい方向に向かうかだけではなく、業界や世の中をいかによくするか、広いところまで視点を広げて見ているのですね。

三浦個人的に「〇〇の会社だけがよくなった」に、あまり興味がないんですよね。

それはそれで素晴らしいことだと思うのですが、「世の中がこう変わったよね、そこには◯◯っていう会社もあったよね」という順番が理想だと思うんです。自社がいかに素晴らしくなるかだけを考えてしまうと、どんどん視点がずれていってしまう。

一社ここがよくなりました言っても、じゃあそこの会社のパートナーはどうなんだっけ、お客さんどうなんだっけ、と。

やっぱり会社はお客さまやパートナー、社員がいて成り立つので、その人たちがみんなで出来るだけ良い状態になっていくのが理想だと思うんです。その状態をいかにつくるかを考えると、自社だけで目標に向かう発想はなくなるというか。

ー そういえば、三浦さんは新卒で入社した時からずっと人事職として働かれているとうかがいました。ずっと人事一筋で仕事をしていると、現場のことがわからなかったり、外からの視点を理解するのが難しい、ということはありませんか?

三浦もちろんありますし、未だに難しいですね。人材企画室のマネージャーという立場で、経営陣と近くで仕事をするからこそ、事業をやるという難しさを知るんだったらこうやって自分でコミュニティや場を立ち上げたことはとても有意義なことだったなと感じています。

やっぱり、わからないことは実践してみないとわからないし、聞いてみないとわからない。だからわからないことをちゃんと認めつつ、やり続けるしかないんですよね。

ー それはずっと人事をやってきたからこそ、そう思うようになったのでしょうか。

三浦そうだと思います。自分ができないこと、やれていないことのほうが多いので、いかに自分のフィールドじゃないところに入って泥臭く活動するかというのは重要だなと思いますね。人事ごった煮会も、OJOG会も、異なる立場の視点を知るという点では、結局そこに繋がっているのかもしれません。

ー これは個人的に気になることなのですが、採用を目的とせず学生と交流することで、どのようなことを感じますか?

三浦:月並みな言葉ですが、すごいな、としか思わないですね。自然体で着飾っていない学生さんからはむしろ学ばせてもらうことのほうが多いのですが、学ばせてもらう以上に自分が培ってきたもので何か還元できるものがあると良いなと思っています。

そのように「共創」できる関係性をつくることで、新卒採用やHR業界、ひいては社会をより良いものにしていきたいと考えています。

「自社をよくする」だけでなく「社会をよくする」に目を向ける。その場をつくることが、異なる立場の溝を埋める

コミュニケーション課題が起きてしまうのは、そもそも「出会い方」の仕組みに問題がある。

そこに目をつけた三浦さんは、就職活動や採用活動の本来の目的に向けて共創できるような仕組みづくりに取り組んでいました。それは、かの坂本龍馬が繋がるはずのなかったものを繋げて危機に向けて立ち向かったときのようにーー。

「自社をよくすること」だけではなく、「社会をよくすること」に目を向けること。その意識は、あらゆる企業がそれぞれのPublic Relationsを実現するためのヒントとなるのではないでしょうか。(編集部)

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