少子化により、超売り手市場となった新卒採用活動ーー。

面接中心の選考方法により、無意識に現れてしまう上下関係。相互理解の不十分によって起こるミスマッチ……。多くの企業が悩むこれらの課題は、日本全体で考えると非常に大きな社会的損失とも考えられます。

課題が尽きない「超売り手市場」のなか、学生から愛される会社になるには、どうすればいいのでしょうか。

PR Table Communityは、そんな課題を打ち破る鍵が「Public Relations」の視点にあると考え、新卒採用における「学生との良好な関係構築」のあり方を探究していきます。

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今回は株式会社ベルフェイスのWantedlyに投稿された緊急座談会!!’19卒内定辞退者が語る『なぜ私はベルフェイスを選ばなかったのか』に注目し、その仕掛け人である、人事・広報の西島悠蔵さんをたずねました。

採用においては、強みも弱みも含めた ” リアル ” をさらけ出すことが、ミスマッチのない出会いに繋がるのは確かーーしかし実際の自社発信では、内定者インタビュー等において”良い話”しか載せないことが多く、自社の弱みやリアルを積極的に伝えることができない企業が多い現実もあります。

そんななか、既成の枠にとらわれない、独自の視点から会社を描く発信をされている西島さん。この背景には、どのような想いがあるのでしょうか?

つっこみどころのある人事として独自のキャラクターを確立している西島さんから、Public Relationsの視点を取り入れた自社発信の在り方をうかがいました。


Profile
西島 悠蔵さん Yuzo Nishijima

ベルフェイス株式会社 経営企画 人事 広報

1987年生まれ。大学卒業後、全日本空輸株式会社( ANA)にてパイロットとして勤務。その後、株式会社リクルートキャリアにてキャリアアドバイザー、コンサル領域の転職支援を行ったのち現在はベルフェイス株式会社 人事/広報として従事。社外では僕がウインナーではない3つの理由僕は元カノに土下座を4回して許してもらったから、僕は学生の間違いを5回まで許そうと思っている。など、つっこみどころのあるコンテンツを発信する人事として独自のキャラクターを確立している。


「我々って、これが全部だったっけ?」綺麗な部分しか出さない人って、面白くない

ー Wantedlyで発信されていた「内定辞退者インタビュー」を公開した経緯を教えてください。

西島さん(以下、敬称略):ベルフェイスはもともと、Wantedlyの記事の更新など発信力を強めていくことを採用の主戦略としていました。主に中途で採用された社員に入社前インタビューを行い、入社と同時に公開するという流れでコンテンツを発信していたんです。

そうして何本も記事がアップされていくなかで、ベルフェイスのWantedlyはめちゃくちゃかっこいい記事で埋め尽くされていくわけなのですが……。

そこで、なんとなく違和感を感じたんです。「どれもいい記事だけど、これが我々の全部なんだっけ?」と。

言っていることは間違いではないのですが、綺麗な部分しか出していない、良い話だけしかしていない。そんなWantedlyを見て、ちょっと気持ち悪くなってきてしまい…(笑)この現状をどうにかして変えていかないと思ったのがきっかけでした。

そんなとき、新卒採用で多くの学生と向き合っていくなかで「内定辞退のされ方がすごく気持ちいい」と思う出来事があったんです。

大手の映画配給会社とベルフェイス、どちらにも内定していた学生がいて。「ずっと行きたいと思っていた配給会社から内定をもらいました。だけど、なぜかベルフェイスが気になっている」と、直接会いに来てくれたんですよね。

ー 直接!私だったらメールで終わらせてしまいそうです。

西島:すごく真剣に相談してくれたんですが、彼女の芸能に関する想いを面接でも聞いていたので、ほぼほぼ彼女の中で決まっている感じだったんです(笑)そもそも大学も芸術学部出身でしたし…。ベルフェイスに来なくていいよ。と背中を押して辞退になりました。

僕は学生や候補者と会う時に「辞退したから、ベルフェイスとは(西島とは)これで終わり」という感覚があまり無くて。でも、こういう話こそちゃんと外に出したいなと思ったんですよね。数年後もふらっと連絡をくれそうな前向きな終わり方がすごく多かったので、「あの子達に連絡すればやってくれそうだな」と、19卒で内定辞退した5人、ひとりひとりにLINEを送りました。

「ちょっとうちでインタビューしたいんだけど来てくれる?」と送ると、全員「行きます!」と返事をくれて。そのなかから2人抜粋したのが、あの内定辞退者インタビューなんですよ。

ー お話を聞いていると、これまでの発信は本来のベルフェイスというよりも「おしゃれをしたベルフェイス」のようなイメージだったのかな、と感じました。

西島:間違ったことは言っていないけど、きれいな部分しか出していませんでしたね。

今の時代、悪い情報なんてもう隠せないので(笑)。だとしたら、弱い部分を自分からさらけ出していったほうがいいのかなと。

会社も人間も、綺麗な部分しか出さない人って面白くない。そう考えているうちに、自分たちの素の部分や泥臭い部分、弱い部分も出していこうと決意したんです。

ー そのほうが潔いですね。今まできれいな部分しか出してこなかった中、「内定辞退者インタビュー」を発信することで、その殻を破ることに抵抗はなかったのでしょうか?

西島:抵抗は無かったですね。学生の辞退理由と、僕たちが感じている組織の課題が一致していたので、別に怖くありませんでした。

例えば、福利厚生を理由に辞退した学生。どのみち4年目のベンチャーですので、福利厚生が整ってないんですよね(笑)なので、そこに期待してくる学生はうちには合わない。良い悪いではなく、合う合わないの問題ですからね。

ー 福利厚生が整っていないことは、会社の個性。入社予定の方だけではなく、辞退者にも話を聞くと、それまで目に留めていなかった角度から会社の個性を理解していくことができそうです。

「発信」ではなく「表現」と考える

西島:株式会社才流の代表取締役の栗原康太さんという、マーケティング業界で有名な方が、ブログで「企業人事って良いことしか言ってなくないか」と書かれていたんです。それにすごく共感をして、であればベルフェイスを語る角度も変えていかないと面白くないな、と思ったのも大きなきっかけでした。

ー いつもと違った角度から会社を発信するために、西島さんはどのようなことを意識されていますか。会社を語る角度を変えたい!と思いつつ、いきなり自社の弱みを発信しようとするのは、なかなかハードルが高いです…。

西島:「弱みを発信しよう」と意気込むというより、「個人」の存在を目立たせてみてはどうでしょう。誰が発信しているかをはっきりさせるだけでも、会社を語る角度は変わると思うんです。

例えば「僕(人事)が話すベルフェイス」と「社長が話すベルフェイス」は、見え方が違いますよね。
同じように「僕から見たベルフェイス」と「辞退者から見たベルフェイス」は、見ている角度が違う。その違いを見せるように発信すると、いつもと違った角度から発信をすることができると思います。


緊急座談会!!’19卒内定辞退者が語る『なぜ私はベルフェイスを選ばなかったのか』より

西島:会社の発信って、あまり一方通行じゃなくていいのかなと思っていて。

そもそも法人というものは個人の集まりで、おおよその方向性は向いているけど、みんなが同じ言葉を使う必要、みんなが同じ見方をする必要はないと思っています。

「発信」というより、各々の目から会社を「表現する」と言ったほうが近いでしょうか。

ー 表現という言葉、とてもしっくりきます。そういえば、ベルフェイスのWantedlyは、誰が書いているのかが分かるようにコンテンツが作られていますよね。

西島:そうですね。だから僕の書くWantedly記事は、あくまで「僕」という角度から見た会社を表現しています。

ー それぞれの視点がはっきり違うので、語り手の分だけ違った角度からベルフェイスが表現されていて面白いなと思っていました。

▲西島さんの記事。【内定式レポ】鳴り響くロンドン五輪のファンファーレと共に


▲新卒一期生・比嘉さんの記事。社長!!会社でおやつを食べてもいいでしょうか!?

ー 西島さんは、どこかつっこみどころのあるコンテンツを発信するイメージがあります(笑)キャラの立った表現者であるために、何か心がけていることはあるのでしょうか?

西島最近いろんな人にそれを言っていただいてすごく嬉しいのですが、あまりその自覚がなくて(笑)

ただ、何かをするときには、「遊び」というか「余白」が絶対に必要だと思っているんですよね。

高校のときに冗談半分で小説を書いていたこともあってか、真面目なものを真面目につぶやくとか、刺しにいくというのは、たぶん僕の表現には合っていなくて。

言い争いとか、真面目な言い合いをしても悲しくなるだけなので。だとしたら、ちょっと笑いを入れたほうがあったかくなるんじゃないかな、ということは意識しています。

まっとうに正しいことをいうのは多分、真面目なひとに任せれば良い。僕はそんなにできた人間ではないので、真面目なことを少し笑える感じにすればトゲが立たないと思っています。

人も会社も。モテる人は、分厚さがある

ー そういえば、西島さんってモテたいから仕事をしているとSNSに書いていますよね。

西島:はい(笑)

ー そもそも「モテてる」って、どのような状態だと思いますか?

西島:僕はモテる=興味を持ってもらうことだと思っています。いろんなひとに突っ込まれる、ちゃんとニーズが高まっている、知ってもらっているというのもそうですよね。

モテるためには工夫をしないといけないんです。例えば小学校の時、足が早くて勉強がちょっとできれば、わかりやすいヒーローだったと思うんです。多分、これはモテてる。

でも足が早くない人はどうしたら良いのか?何かしら工夫をしないといけない。例えば、クラスを盛り上げるとか、何かしら努力をしないと注目はされなかったのです。

それと一緒です。ベルフェイスはまだまだ知名度が高くないので、何かしら工夫をしないとモテないと思っています。

ー 仕事だけでなく、プライベートにおいてもモテるために、じぶんの弱みとかを最初からさらけ出すほうですか?

西島:恋愛は、はじめは出したがらないです、でもやっぱり、どこかで出ちゃいますよね(笑)。

最近よく思っているのは、人の魅力も会社の魅力も、プラスだけ見せてもあまり分厚さがでないなと思っていて。

マイナスの顔を見せることによってそのひとの魅力ってすごく分厚くなるのかなという感覚があって。なので、恋愛とかははじめはもちろんいい格好をしたいのですが、たまにちょこちょこ抜けているところを出します(笑)。

ー 強い面だけ見せていても、いずれバレますもんね。

西島:そうなんですよ。強い面だけ持っているひとなんていくらでもいるので(笑)

強い面だけではなく、あえてマイナスのところを見せることが、人としての魅力を引き出してくれるのかなと最近腹落ちしてきました。

だって僕自身、元パイロットからリクルートでベンチャー人事って、けっこう綺麗なサクセスストーリーに見えるのですが、全然そんなことはないので(笑)。表面的なところだけでモテてもやっぱり仕方がないとは思っているので、ちゃんと中身のところを伝えないとなと思っています。

ー ギャップがあると、モテますよね。

西島:会社と恋愛も一緒だなって思うんです。意思決定の仕方とか、たぶんすごく似ていると思います。

オペレーションを整えて、クリエイティブとエモーションを増やそう

ー お話を聞いて、その人独自の視点から会社を表現するには、自分自身がキャラを立たせることが大切のかなと感じました。

西島:さきほどの繰り返しになりますが、僕は法人というのは個人の集団だと捉えています。法人として大きな方向性はあれど、個人の見え方や向き方は違うと思うのです。だからそれをできる限り、素直に個人に近い形で発信にしていく。その集合体が法人からの発信になれば良いかなと思っています。

同じ法人を表現するのも、ポジションやバックグラウンドが違うんだから、感じ方は自由で良いと思うんです。ベルフェイスはある人にとっては良いかもしれないし、ある人は悪く見えるかもしれない。それが素直な会社像なのかなと。

ー その人にとっての素直な会社像は、そもそも発信者にエモーショナルな視点がないと作れないとは思います。

西島:そうですね。そのためにも、僕たち人事はもっとオペレーションを整えて、クリエイティブ、エモーショナルなところに時間を割くべきだと思うんです。

西島:少し愚痴っぽくなってしまうのですが、人事の地位って日本国内においてとても低いと思っていて。僕、いろんな人から「なんでお前人事やってんの」「もったいなくない?」と言われたりするのがすごく嫌なんです。

だけど、それにはちゃんと原因がある。

ー というと?

西島:いわゆる「オペレーション人事」になっている人事が多いからです。

これは自戒を込めてですが、人事の仕事にはオペレーション、エモーション、クリエーションと3つあって、このバランスは大事だと思っています。

だけどオペレーション、つまり学生との面接や日程調整をして満足してしまっている人事がとても多い。だけど僕は、ここで満足している人事は卑下されてもしょうがないよなって思っています。機械でも出来る仕事なので。

ー 西島さんは内定者面談の際、意思決定のために50ページほどの資料をつくったり、クリエーションの部分に時間をかけているなと感じます。元パイロット人事がベンチャーで新卒1期生を9名採用できた5つのこだわりで拝見しましたが、学生の人生と向き合うことにとても時間をかけていらっしゃいますよね。

西島:「大谷クロージング」と呼んでいる、口説き落とし資料のことですね(笑)

人事はなんだかんだ忙しいので、致し方ない部分も多いとは思います。ただ、オペレーションをできる限り仕組み化して、自分の手を離していく努力は絶対に必要だと思っています。

だからできる限りオペレーションをアウトソースしてきちんと終わらせることで、クリエイションが生まれる。エモーションとクリエーションの時間を作らないと人事は先に進まないのです。

ー 人事だけでなく、PRパーソン全員が持つべき意識だと思いました。自分の感性を高めていかないと会社に対する解像度も高くならないし、会社を表現することはできないですもんね。

西島:そのとおりだと思います。

強い一面しか見せない人と、いろいろな顔を見せる人。どちらが魅力的か?

「僕から見たベルフェイス」「辞退者から見たベルフェイス」「新卒から見たベルフェイス」……。

法人の人格をグラデーションのように表現していたベルフェイス。それまで自社発信というものは、「公式として、ひとつの視点からしか情報を発信してはいけない」と、どこか極端に考えている部分があった私にとって、自社発信を「表現」と捉えている西島さんはとても印象的でした。

「発信」ではなく「表現」、そう捉えてみると、自社の弱みやリアルを積極的に伝えることができそうです。

強い一面しか見せない人と、いろいろな顔を見せる人、どちらが魅力的か?

会社を人格とたとえる視点は、Public Relationsを実践していく大きなヒントとなるのではないでしょうか。