人の心が動く理由はずっと変わらない。PRは自分起点で人を幸せにできる仕事——ミレニアル世代のPRウーマンたち

text by Tomoko Hatano
photo by Yuka Uesawa

ミレニアル世代(1980〜2000年生まれ)のPRパーソンは、日々どんなことを想い、どんな感覚をもってPublic Relationsを体現しているのか——。

今回はキャリア4年目までの若手PRウーマン3名に集まってもらいました。3人の共通点は同世代の女性で、「広報」の仕事をしているということ。

企業の規模感やフェーズ、業種や業態、伝えたいステークホルダーが全く違う中で、仕事にかける想いや、日々の業務のこと、未来のことを語っていただきました。

自分たちの仕事について、キラキラした瞳で語ってくれた3人。前向きな姿勢で懸命に取り組んでいる姿から、「広報の仕事とは何か」という初心を思い出させてくれました。

彼女たちにとってのPublic Relationsとは何か。そして、それぞれの熱い想いとは?


Profile
柴田菜々さん Nana Shibata(写真左)
株式会社マテリアル 2015年入社、4年目

権平由紀さん Yuki Gondaira(写真中央)
株式会社ZERO TO ONE 2016年入社、3年目

岡田麻未さん Asami Okada(写真右)
株式会社ミライロ 2016年入社、3年目


PRの仕事は音楽と同じ。“心は熱く、頭は冷静に”

— 今回はミレニアル世代のPRパーソンの女性3名にお集まりいただきました。まずはプロフィールと、事業内容を簡単にお話頂けますか?

柴田さん(以下、敬称略):柴田菜々と申します。PR会社マテリアルで働いていて、新卒4年目になります。会社は今年14期目、社員数が100名前後。入社からずっと営業局に所属していて、提案、クライアントワーク、エグゼキューションまで全部やっています。

— 3名の中では唯一のPR会社の所属なんですよね。どんな案件を多く担当しているんですか?

柴田:もともとファッションと食がすごく好きだったので、必然的にそういうお客さんを担当させていただいています。でもゲームや地方企業、自治体関連も担当していて、けっこう幅広いです。

権平:ZERO TO ONEの権平由紀です。中古の車のパーツをECサイトで販売するのがメイン事業で、最近はライドシェアのアプリもリリースしています。

新卒1期生で今入社3年目なんですけど、会社ができる前に入社したので、とにかく失敗しながら覚えていくみたいな感じで仕事に取り組んでいます。

— 会社創設したばかりでいきなり広報って、大変じゃなかったですか?

権平:大変でした! 1年目はとにかく事業に関係のある記事を書いてる人のリストを作って、電話をかけまくって。最近やっとWBSや産経新聞、ヤフーニュースとかにちょっとずつ出られるようになってきたタイミングです。

岡田:ミライロでユニバーサルデザインの提案をしている岡田麻未と申します。新卒3年目です。ミライロは今年、設立8年目で、50名の社員のうち10名が障害のあるスタッフなんです。障害を価値に変える “バリアバリュー”を理念に事業を行っています。

— バリアバリューについて、少しご説明いただいてもいいですか?

岡田:バリアバリューは、一見マイナスに見える障害(バリア)を、社会やビジネスの価値(バリュー)に変えていこうとい考え方です。

社会には、“環境と意識と情報”という3つのバリアが存在するのですが、それらを障害のある当事者の視点を活かして、誰もが快適に過ごせる環境をつくることをビジョンに取り組んでいます。

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— 広報とひとことで言っても、みなさん仕事内容はさまざまですね。ちなみに広報をはじめようと思ったきっかけってあるんですか?

柴田:アパレルのプレスになりたくて、大学のときにダブルスクールでPRの学校に通っていたんです。その学長の信念が“情熱がないと伝わらない”っていうもので。私自身がもともと、愛があって、情熱がある! みたいなタイプなので、自分の信念とリンクすると思って目指しました。

それから私、ずっと音楽をやっていたんですけど、PRって音楽みたいな仕事だなと思ったんです。

音楽をやるときって“心は熱く、頭は冷静に”っていうワードがあって。そのふたつのポイントがマックスになっていないと、人を感動させることなんてできないっていう。PRの勉強をしていたら「まさに同じじゃん!」って思う部分がすごいあったんです。

権平:私も音楽をずっとやっていたけど、そこには気づかなかったです(笑)。

柴田:そういう風に、自分の培ってきた感覚で仕事ができるっていうことが大きかったかな。最初から即戦力で「1年目から経験積めます!」みたいな所を探して、マテリアルに入ったっていう感じです。おふたりはどうして広報に?

岡田:私は最初から広報がやりたかったわけではなかったんです。就職活動をしているときに今の上司に会って、こういう会社なんだけど、一緒にやらない?って言われたのがきっかけでした。

— すごい。スカウトされたんですね。

岡田:スカウトなんですかね……? もともと障害者支援のジャンルには興味があって。入社前に代表の著書出版のお手伝いをしている中で「ぜひ広報に」となり、正式に決まりました。

わからないことばかりだったので、とりあえず関連の書籍を大量に買い、広報の勉強会に参加して学び……っていう状況でしたね。

権平:私はもともと採用がやりたかったんです。入社当初は社員が10人しかいなかったので、まずは人材確保が第一ということで採用をやっていました。

そんななか、一旦新卒採用が落ち着いたタイミングで代表に呼ばれて。パソコンを見せられながら「こういうネットニュースに出たいんだよね〜」って(笑)。

一同:(笑)。

権平:突然その日から採用広報担当になりました。当然「広報とは?」みたいな感じだったので、Googleでひたすら調べて、勝手に自分の先生を見つけて。「ちょっとこの会社に電話かけてみよう」とか。

一同:いきなり電話!すごい!

権平: 広報にルールがあるとしたら、きっとだいぶ違反をしてきたと思います。電話口で「今生放送中なんですけど」って怒られたこともあります。そういうことをやり続ける中で、露出がちょっとずつ増えて、関係がつながって、っていう感じでした。

必要なのは企業のパーツに甘んじず“プレゼンス”を失わないこと

— すごいですね、みなさん! 今3年目とか4年目ということですけど、広報ってけっこう、特殊な仕事じゃないですか。これから続けていくためには、やりがいとか達成感がないと難しいと思うんです。そのあたり、いかがですか?

柴田:会社の広報にいるおふたりとPR会社の自分だと、やりがいを感じる部分も違うかと思いますけど……。仕事への情熱はまったく消えていない反面、これから何十年もPR会社にいるっていうのは違うな、と思うこともあって。

事業会社の広報さんは、24時間自社のPRのことを考えられるじゃないですか。でもPR会社だと、ひとりが担当する案件が多くてそうはいかない。それはけっこう課題かなと思っているんです。みんながやりがいを感じられなくなるポイントって、そこなのかなって。

権平・岡田:なるほど。

柴田:でも最近、がっつりチームに入る案件をやらせてもらえるようになってきたんです。広報としてだけじゃなく、“この商品どうしよう会議”に最初から入れさせてもらっていて。

めちゃめちゃやりがいがあるし、自分のプレゼンスというか、存在価値みたいなものを日々感じられているんです。「PR会社の柴田さん」じゃなくって……。

— クライアントと一緒になって、会社の未来を考えられているんですね。

柴田:そうなんです。きっと「自分はPR会社の人間だから」って線引きしちゃうと、自分で課題を作ってしまう。それを打破していけるようになることが、PRパーソンにとっての、お客さんにとっての幸せだと思ったんです。超最近ですけど(笑)。

— わかるなあ。PR会社って、本当はそうではないのに、悪い言い方をしてしまうと、企業の広報部のパートにすぎなくて、メディアに出してくれるプロ集団みたいに思われがちっていう悩み……。ありますよね。私もPR会社時代に感じることはありました。対して、事業会社のみなさんはどうですか?

岡田:私は、自分たちが広めたい価値に対して、共感と応援をしてもらっているなっていう反応を感じたときに、やりがいを感じます。

先日「ガイアの夜明け」で弊社を紹介していただいたんです。多くの人に知ってもらえることが嬉しい反面、実はすごく怖くて。障害のある方に対しての施策は、結構センシティブな部分でもあるので、批判や反論をされることも覚悟をしていたんです。でも放映後、弊社のSNSで紹介された旨を投稿すると、ポジティブな反応がたくさんあったんですね。

柴田・権平:おお!

岡田:「障害のあることが価値になるなんて知らなかった」とか、当事者の方からも「発信してくれてありがとう」とか。やっていることが間違っていなかった、応援してもらえるんだって思えたときはすごくうれしかったです。

— すばらしいですね。普段のお仕事としては、メディアリレーションが多いですか?

岡田:最近は、一般の方に向けて発信していく仕事が増えましたね。インタビュー記事を書いたり、SNSを使ってファンを増やしたり。直接障害のある方やご高齢の方、そのご家族に対して、どういう風に何を伝えられるかっていうことを、常日頃から考えています。

— なるほど、メディアを介さず、ダイレクトにPublic Relationsを実践しているのですね。 権平さんはいかがですか?

権平:私のやりがいは、自分起点で誰かを幸せにできるということですね。たとえば、ハードワークし過ぎて家族から疎外感を抱えてるお父さん社員がメディアに出たときに、子どもから「テレビで見たよ!」って仕事を理解してもらえたリ……。

直接数字を作れる部門ではないと思うんですけど、社員やその家族、もしかしたらこれから入社してくるかもしれない人たちに、会社のファンを増やすことができるっていう。

可能性でしかないんですけど、そういうきっかけに自分がなれているっていうのは、すごいやりがいですね。

— 反対に、課題みたいなものって感じます?

権平:今年度から、個性の違う4つの事業の広報を担当することになったんです。会社のことをまず誰よりも知らないといけないのに、まだそれが十分にできていない。それから、同じ思考を持たない人たちに共通の文化や価値観って、どうやったら浸透させることができるのかな?と悩んでいて……。

— エンプロイー・リレーションズ(インターナルコミュニケーション)の部分ですね。

柴田:あ、今の話で思い出したんですけど。以前担当したお客さんも同じような悩みにぶち当たっていました。そこで、毎週月曜日に“今週も1日がんばりましょうメール”を社員全員で持ち回り制にしたんですよ。

権平:へえ!

柴田:食品系の会社だったんですけど、販売の人もいれば製造、研究の人もいて。「●●部署の○○です。今週僕はこういうことにチャレンジしようと思います」って宣言するんです。プライベートなものだと「子どもに逆上がりを教えるのにチャレンジします」とか(笑)。

一同:すごい!

柴田:それで他部署の仕事や人となりも知れるんです。そこから派生して他部署飲みをやったりして。コミュニケーションの問題が一気に解決したって聞きました。

権平:すごいアイディア! ありがとうございます! 情報と感情を、どうやって一緒に発信できるかなとすごく悩んでいて……。今の施策、すごくいいなって思いました。逆上がりのエピソードがすごくいいですね。

柴田:私たちはいろんなお客さんと関わっているので、もちろん許可は必要ですが、
他社の良い事例を他のお客さんでもシェアすることができるんです。

愛を注げなければ、PR会社の仕事はなくなってしまうかもしれない

— それぞれのやりがいや課題感がある中で、今後こんなPRパーソンになりたいとか、PRをバネにこんな人になりたいとか、ビジョンはありますか?

権平:私は広報って、一番人間力を磨ける職種だと思っています。これから先、求められるスキルはきっと変わっていくと思うんですけど、人が感動する理由とか、感情が動く理由は絶対変わらないはずで。アーティストがずっと愛されるみたいに。

相手のことを考えて、情報を設計して、伝え方を意識して届ける。それを最後までやりきることの積み重ねじゃないですか、広報って。それはチームにとってもすごくプラスの影響だし、自分にとっても絶対役に立つことだと思うんですね。

一同:うんうん。

権平:どんな環境で何をお願いされても「この人がいたら大丈夫、なんでもできる」、そんな風に思ってもらえる仕事。だから将来、みんながもっと憧れる職業になるんだろうな、って考えています。

— 権平さんの考えにすごく共感します。ぜひ続けていって欲しいです。

権平:がんばります(笑)

柴田:権平さんの話を聞きながら、PR業界がどうなったらいいのか考えていました。私は反対に、PR会社って別に絶対なきゃいけない存在じゃないのかな、と感じましたね。

企業のいいところや存在価値を発掘するとか、世の中と企業の価値をつなぎ合わせる橋渡しみたいな役割は絶対に必要。でもPRを全部事業会社の中でできるようになっちゃえば、PR会社って別にマストじゃないと思いました。

—たしかに、私も「いつかPR会社はなくなるんじゃないか」っていう不安はずっとあったかもしれない。

柴田:だからさっき権平さんが話していたみたいに、愛を持って仕事ができるとか、人の心を動かすにはどうしたらいいか考えられるとか……。それを行動に移せて、向き合える人っていうのが、PRパーソンとしてあるべきで、なっていくべき方向なのかなと思う。

— 結局人間力なんですよね。でもみなさんはすでにそれに気づいているから大丈夫。きっとこの先も、自信を持ってお仕事に取り組まれるのでしょうね。岡田さんはどうですか?

岡田:事業部に入り込んで「サービスを広めるためにどうしたら良いのか」を、チームメンバーと一緒に考え、意見や提案ができるのが魅力ですね。広報という枠にとらわれず、必要なことは何でもやります。

— 確かに事業会社の広報部は、ちょっと特別なところがありますよね。

岡田:そうなんです。そのメリットを使って、「バリアバリュー」という言葉を広めていきたいんです。「障害者=かわいそう、不幸」というイメージを、障害のある方の感じている不自由な体験が、多くの人にとっても価値になることを見せていきたくて。

ただ課題解決の手段が無限大にある分、工夫が必要ですね。誰にどんなメッセージを届けたいのか、どの媒体で発信することが効果的なのかなど。

詳しい人に聞きながら、本を読みながら、サイトで収集しながら取り組んでいます。柴田さんはPR会社ならではの、いろんな課題解決のノウハウが得られて羨ましいです。

柴田:その視点なかったな。たしかに、知らない内にいろんなところに首を突っ込ませていただいているかも(笑)。

なんのために、なぜそこに至ったのか。企業にストーリーが求められる時代

— では、少し未来に話を移したいと思います。ミレニアル世代のPRパーソンの立場から見て、これから自分達と同世代、もしくは、少し下の世代に企業が愛されるためには、どんなことが必要だと思いますか?

柴田:日本のドメスティックな会社の大半って、新しい施策をひとつするのにすごく承認まで遠いじゃないですか。

たとえばSNS運用って、スピード感やどれくらい気軽にできるかが重要なのに、何時にどういう文脈で何の写真と一緒に出していくかっていうスケジュールを求められられたりとか……。課長、部長、社長って承認をとらないとできないっていう。

— 大企業になればなるほど時間がかかる印象がありますよね。

柴田:あんまり考えすぎないで動く方がいいんじゃないかと思いますね。会社がどう見えるか恐れるよりも「自分たちの感情が動いたらみんなの心も動く」って信じてやっちゃえばいいって私は思います。

— 例えばひとつの商品に関して、開発、マーケティング、広告とか、たくさんの部署の方と一緒にひとつのことを考えていって、その場にいる全員の意見が一致したら、すぐ社長に打診! みたいな企業があるようですが、そういうことですよね。

柴田:そうです。その場にいる20人が「いい感じだね」って思ったんだから、それはもう世の中に出てもいいんだよ、って。

岡田:なるほど。世代によって価値観が違うというのはありますよね。例えばバブル世代の人は、「持っているモノ、身分など外的なものがステータス」という価値観を持っているイメージがありますが、ゆとり世代の人は、「自分の信念に忠実に生きているか」を考えている印象があります。

— 採用側も、「俺と結婚したらいい暮らしができるぜ」っていう口説き方じゃダメになってきていますよね。

岡田:そうだと思います。規模や事業の大きさだけではなく、その事業は何のために存在して、何を目指しているのかっていうストーリーを見せた方が、これからの世代には響くのではと思います。会社のビジョンに共感するし、自分の目指したい方向にも合うから、同じ船に乗りたい、と感じられるかが大切かと。

権平:みなさんの話を聞いていたら、きっと今は自分の“親しみやすいもの”とよりつながっていく時代なんだろうなって思いました。

自分と遠い世界のものには、親近感を持てなくなってきている。テレビとかより、Instagramとかライブコマースとか、手が届きそうで届かないくらいの身近なメディアが影響力を持ちはじめている。

だから相手の感情を動かすためには、企業側から動かなくちゃいけないと思います。学生に対しても他業界に対しても「みんなこれが好きなんでしょ?」って掲げるだけじゃなくて、もっと下まで下りて来て「うちの息子が逆上がりできるようになりましたよ」っていうくらいの身近さで。

— たしかに、もっと企業から“人格”が見えていいと思いますね。これからのPR業界では、“人とストーリー”がキーワードになっていくんだろうなあと私自身も今回実感しました。本日はありがとうございました!

広報の仕事への情熱と、初心を忘れない

ほぼ同年齢で、同じ広報の仕事をしている彼女たち。

この日、さまざまな“気づき”を発見したり、新しいアイディアを共有したり。「なかなか同じ仕事を持つ同世代で集まることがなかったから刺激受けました!」と、これからの仲間、同士を見つけたような喜びを最後に語ってくれました。

広報の仕事を、ただのスキルやノウハウ、経験量だけで測らない。周辺を取り巻くステークホルダーの“愛”を汲み取り、個の人間力と熱量を持って発信しながら、それを自分自身の役割として楽しんでいるのが印象的でした。

彼女たちがこれからのPR業界を牽引していく存在になっていく未来を想像しつつ、思い返させてくれた初心を、私も忘れないようにしようと思いました。

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