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ブランドを人に例える?!キットカットはじめ20年以上ブランディングを手がけてきた宇佐美清さんに「キットカットのブランディング秘話」を聞いてみました(後編)

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志賀祥子

志賀祥子

PR Table Labo所長/PRコンサルタント。大手金融機関を経て、大手上場企業にて社長秘書と広報を兼任。2011年ベンチャー企業へ入社、新規顧客の開拓からPR企画に携わる。その後、スタートアップから上場ベンチャー企業の広報部門の立ち上げや広報コンサルティング業務を担当。2016年8月よりPR Tableへ参画し、個人の活動としてPRとしてスタートアップ企業を中心に広報コンサルティングにも携わる。
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「Have a break, have a Kit Kat」というフレーズがお馴染みのキットカット。キットカットといえば、受験生を応援プロジェクトや仕事中のちょっとしたおやつ・・・そんなイメージが強いのではないでしょうか。

今回は、キットカットのブランディングを15年以上にわたり手がけてきた宇佐美清さんに「キットカットのブランディング秘話」についてお話を伺いしました。

◼︎宇佐美清さんプロフィール
早稲田大学政経学部卒業後、広告制作プロダクションAZ(エージー)にコピーライターとして入社。その後、博報堂第一制作室に移籍し、日経広告賞など受賞多数。そして米国の広告代理店レオバーネット協同(現在のビーコン)に移籍。レオでプランニング部を設立。アカウントプランニングディレクターになる。1999年、JWT(J・ウオルター トンプソン)JAPANに移る。2006年JWT退社後、2007年にUSAMIブランディング株式会社を設立し代表取締役社長。現在はカタパルト株式会社取締役でもある。また早稲田大学グローバルエデュケーションセンター非常勤講師。

受賞歴
– キットカット受験キャンペーン(2003年~現在)のブランディングにより、2009年、カンヌ国際広告祭(現カンヌライオンズ・クリエイティブフェスティバル)メディア部門グランプリ。
– 2005―2006年 AMEA(Asian Marketing Effectiveness Awards)プラチナ最高賞。
– 2004年・2006年 New York・AME(Advertising Marketing Effectiveness)合計4部門でゴールド最高賞ほか多数。

著書
– 2006年 USAMIのブランディング論
– 2009年 USAMIのブランディング・ノート
– 2009年 右脳会議
– 2014年 ズラす!思考

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しぶとくやらないとブランディングは浸透しない

キットカットは、毎年受験生に向けたキャンペーンが印象的ですが、どのような背景があったのでしょうか?
ターゲットを女子高生と決めて、そのブランディングをするということで「受験キャンペーン」の企画が生まれました。2001年から戦略を作って、2003年に初めてキャンペーンを立ち上げました。「受験キャンペーン」と同時に「花とアリス」というウエッブ上映する映画企画を並走させていました。映画を製作したため、そちらに予算が行って、受験キャンペーンの最初の予算は信じられないかもしれませんが、20万円でした。事実です(笑)。予算内でできること・・・と企画をしたのが、受験生が泊まるホテルで現品を配布することでした。

ターゲットである受験生を応援するため、昼食のサンドイッチと一緒に、「キットサクラサクよ」という合格祈願の絵葉書とキットカットを配ってもらいました。この反応がとてもよくて、翌年には大手ホテルから問い合わせが増え、100社近くから申し込みがあり、導入されました。

そのうちセンター試験会場である東京大学のゴミ箱がキットカットの赤いパッケージで溢れている写真が話題になりました。受験の御守りとしてのキットカットは自然に学生たちに受け入れられたことで、それ以降13年間、今でも続いているキャンペーンです。

受験生を応援するお菓子は、今では各社から毎年発売されていますが、当時はありませんでした。このことがきっかけで競合各社が受験生向けに商品を発売して行ったのです。

この企画を進めるにあたって、大変だったことはありますか?
企画後の実施、戦術展開が大変だったと思います。ただし、心強かったのはキットカットを発売するネスレさんの理解があったことでした。ブランディングはしぶとくやらないと確立できないことをよくわかっていたと思います。キャンペーン当初、ホテルに営業をかけるリソース作りなど、辛抱強くそのバックアップをしてくれるみなさんがいたからこそ、実現できたことでした。

ブランドを「人」に例えてみる

キットカットいう商品を伝えていくときに、まずどのようなことをしていったのでしょうか?
コミュニケーションについては、伝える時のトーンアンドマナー、空気感や基調が大事です。キットカットが所有する雰囲気と言ってもいいです。この役割はブランドパーソナリティが担います。ブランド、つまりキットカットを人に例えたときに、どんな性格になるか、形容詞をいくつか当て込んで考えます。ブランドを人に例えてみるのです。

キットカットには「あたたかい」「明るい」などのほかに、「いつもそばにいる」という形容詞が出てきました。そこから、“ポケットに入っていつもそばに寄り添う友達のような存在でありたい”というブランドパーソナリティにつながっていきました。

キットカットはポケットに入るサイズです。それはある意味で「機能価値」であり、友達のように寄り添ってもらっているように感じるのは「情緒価値」です。機能価値と情緒価値がブランドパーソナリティで一つの新たな価値になるということを、その時に学びました。この新しい価値をどのように伝え、好きになってもらい、買ってもらうのか、ここがポイントでした。

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変わらないものもずっと、新しい価値を生み続ける

15年もキットカットという商品を伝え続けていくことで苦労した点はありましたか?
受験キャンペーンはキットカットのターゲットを受験生に絞り込んで成功しました。ところが、逆にターゲットを固定したことが課題でもありました。ターゲットをずらそうと思っても、思い通りにはいかなかったですね。

実は受験キャンペーンのほかにもいろんな企画を試みました。「七夕」「ハロウィン」などいろいろキャンペーンを打ち出しました。ハロウィンはタイミングが合わず、うまく行きませんでした。ここ2-3年ではハロウィン商戦なんて言われるほど世の中に浸透してきましたが、当時はまだ早かったのですね。世の中より半歩か一歩早いのが理想と言われていますが、そんなにうまく行かない(笑)。

そこでいろいろ協議され結果として大人たちに食べられるキットカットを出すことになりました。「オトナの甘さ」です。「オトナだって、甘えたい。オトナらしく、甘えたい。」という切り口で、キットカットのコンセプトは変えていないんですよ。TVCMでは、ストレスを減らすというストーリーでOLが登場します。

根本的なことを変えずに、新たなブランディング展開をしていく。とても難しいと思うのですが、どのように戦略を立てていくのでしょうか?
このようにコンセプトとなる根っこは変えないけど、変えられるところはバッサリ変える。ブランドに関する判断をするのは経営者、それをサポートするのは僕らです。組織の中にいるとインザボックスになりがちです。僕たちはアウトオブザボックスです。箱の中に入っていると、見上げれば空に雲が流れている。それしか見えない。しかし、外にいれば、風が強いなとか、雨が来そうだな、など感じることがたくさんあります。僕たちの役割はこういうことを最大限にブランドのために役立てることです。

広報・PRも同じで、企業の外から見た声を社内に伝えるのも大事な役割だと思うのですが、いかがですか?
本当の外からの声って意外と経営陣にも入ってきづらい部分ですね。そこを広報はアウトオブザボックスで、伝えていかないといけない。外と内に乖離がある場合は、なんで乖離があるのか、本当はどう伝わってほしいのか、原点になるポイントを、根っこであるブランドストーリーにして語っていかないといけない。

どういう歴史や資産があって、これらを今どうするのか、これからどこに向かうのか。企業であれ商品やサービスであれ、ブランドについて本質を語っていこうという精神が大事です。ブランドに語るべき中味があっても、文脈やストーリーになっていないと伝わらない。最近は「コンテンツからコンテクストへ」ということをよく考えています。ブランディングとPRは切り離せないですね。

LP

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