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何から始める?危機管理広報。プロに話を聞いてきました!<後編>

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ヤマダヤスヒロ

ヤマダヤスヒロ

PR Planner/Story Designer。 PR会社、ブランドコンサルティング会社、広告代理店、デザイン会社を渡り歩く、ハイブリッド型のPR流浪人。現在は、ブランドづくりとコミュニケーションに悩めるジョブパーソンを助けるべく、日々奔走しています。
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前回は、危機管理広報は何から始めればよいか?をご紹介しました。

今回は、さらに発展させて危機に強い会社を作るためにはどうすればよいのかをご紹介します!もちろん、お話を聞いたのは、危機管理に強みを持つ広報コンサルティング会社(株)エイレックスでチーフトレーナーをつとめる平野さんです。

-「危機に強い会社は、風通しが良い会社」とおっしゃっていましたが、そのほかには何が「危機への強さ」につながりますか。

われわれはしばしば、危機発生時の対応で成否を分けるポイントが3つある、と説明しています。ひとつはスピード。これは前回の「風通しの良さ」、すなわち日頃から良い情報も悪い情報も経営層に届くような仕組みができているかどうかと関係します。仕組みができていれば、実際に危機が起きてしまった場合にも、早い対応につながります。

2つ目は当事者意識に基づく積極姿勢です。残念ながら大変な危機が起こってしまった、けれどもこの危機は自分たちが解決していきますからご安心ください、といえるだけの覚悟を持った姿勢です。

ここでは原因追求、再発防止に向けた強い姿勢は当然ですが、同時に、情報開示への積極姿勢も重要です。というのは1点目のスピード感を重視すると、開示できる情報が少なくなってしまう可能性がある。それでもなお、できる限り情報を開示するんだという強い姿勢がないと、「隠ぺい体質」などと見られてしまいかねない。

情報開示姿勢が低いと、記者は「この会社に頼れない、周辺取材で記事を書くしかない」と判断し、様々な情報が交錯する周辺の関係者の発言をもとに記事を書いていくことになります。周辺から情報を取るということは、”会社を快く思っていない人”からも話を聞くわけで、結果的に会社にとってネガティブな情報が出やすくなり、結果的にネガティブな印象が流布することにつながりかねません。

-危機対応で、情報の積極的な開示がいかに重要かということはよく分かりました。その他に外せないポイントはなにになりますか?

3つ目のポイントは、スタンスです。どの立ち位置から危機を見るか、しっかり決めてブレないようにしてください、と言っています。具体的には、「自分たちは被害者なのか?それとも加害者なのか?」ということです。緊急事態においてはしばしば加害者と被害者の線引きが難しかったりします。電力会社は地震の被害者なのか、それとも原発事故を起こした加害者なのか。情報流出が起きたとき会社側はハッカーの被害者なのか、それとも顧客に迷惑をかけた加害者なのか。

謝罪会見を開くとき、自分たちは被害者だというスタンスで臨むと、どこかでその立ち位置が発言のなかに現れて、実際の被害者である顧客や消費者が反感を覚えます。被害を被った顧客・消費者・生活者の視点を想像し、加害者の立ち位置から情報を伝えた方が消費者心理の観点では好感を持たれます。

スピード、当事者意識、スタンスの3つの視点で考えると、古典的な事例ですが、テレビドラマ「西部警察」※1 のロケ撮影中に起きた事故に対する渡哲也・石原プロモーション社長の対応や、ジャパネットたかたで顧客情報が流出したときの高田明社長の対応※2 は、高い評価を得た事例だったと思います。

「そこまでやらなくても」と一般消費者に思ってもらえるくらいの対応を、スピーディに行うことによって、起きてしまった事故や事件に対して、真摯に向き合い、反省している会社の姿勢が伝わった好例だと思います。

普段の広報活動でいくら美しいことを語っていても、危機時には企業の本質が露呈してしまいます。危機対応での失敗は、積み上げてきた評判やブランドを一気に喪失させる事態にもなりうるのです。

【補足説明】
※1:2003年8月12日、『西部警察2003』の撮影中に松山高之刑事役の池田努氏が運転する劇用車が運転操作を誤り、撮影現場を見学していた一般客のいるところへ突っ込み、5人が重軽傷を負う事故が発生した。これに伴い、撮影は中止となった。石原プロモーションでは、この事故を重く受けとめ、『西部警察2003』の制作中止、放映中止をテレビ朝日に申し出、テレビ朝日もこれに了承した。

※2:2004年3月初旬、毎日新聞から149名分のリストに関する問い合わせがあった。その内容は、「氏名」「性別」「住所」「電話番号」「生年月日」「年齢」からなる個人情報であり、個人情報の管理が余り注目されていない1998年(6年前)の情報であった。後日新聞のトップで報道。報道された当日、社内調査を行った上で、社長が記者会見し謝罪、営業自粛も発表。社長自らが会見し、非常に細かい数字を説明し、今後の対策(CMの自粛等)を発表。その後、3/9~3/12は毎日、その後は1週間ごとに謝罪と経過報告を公表した。CM自粛の思い切った対応やきめ細かな対応が評価された。

-最近の危機管理広報のトレンドを教えてください。

少し前から増えてきている相談としては、やはり「SNSの使い方」に関することです。

企業はマーケティング目的で、、美しい言葉を使って外向きにブランドイメージを築きあげてきました。しかし、SNSの普及によって、社内のさまざまな現場における就業体験を誰もが気軽に情報発信できるようになった。この社内体験が、外向きに築いてきたイメージと余りにも異なると、ブランドは一気に失墜します。従業員の体験が簡単に外に出てしまいかねない環境に広報担当者は以前よりも気にかけています。また、外部と接触する部署は広報に限りません。例えば、お客さま相談室で、お客さまへの対応に失敗してしまうと、それがSNSを通じて広く外に出てしまいかねない環境ですから、お客さま対応のトレーニングを実施するニーズも増えてきています。

-最後にこれだけは伝えておきたい危機管理広報で重要なことはありますか?

記者会見は法廷ではない、ということでしょうか。たまに謝罪会見で「法的に問題はない」「技術的な瑕疵はない」という点に固執した説明を聞くことがありますが、こういった説明はメディアやその裏にいる一般生活者に対して、効果的とは思えません。なぜなら彼らが期待しているのは、法的責任に限らず、説明責任や道義的責任、社会的責任だからです。

謝罪会見は法律的白黒、技術的瑕疵の有無を議論する場ではなく、事実関係について情報を開示し、お詫びや同情の気持ちを伝える場です。弁護士や法務部門の立場からすると、法的な白黒の決着が最大の関心事なことは理解できますし、技術部門が技術的な欠陥の有無にこだわるのは当然です。

しかし、緊急事態が発生してしまった。そのときどうするか。顧客、一般消費者、地域生活者の信頼をつなぎとめて、評判を落とさない、という目下のタスクについては、法律や技術のディビジョンだけでは判断できません。それはトップの仕事であり、パブリックとのリレーションづくりに責任を負う広報部の仕事でう。危機管理の観点から言うと、PRパーソンは、常に企業のトップに進言できるような人間関係そして社内体制の構築と、社内外の人たちから機敏に情報収集を進めるための努力やアクションが必要不可欠だと思います。

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