posted by

事業会社の広報担当は、PR会社から卒業しよう! /株式会社プラチナム 吉柳さおりさん

saori_kiryu_ogp
The following two tabs change content below.
doberman

doberman

PR会社に勤める現役バリバリのPRパーソン。クライアントのため、メディアのため、日々現場を駆け回っている。時々熱く吠えることもある。
Pocket

筆者はこれまで多くのベンチャー・スタートアップの広報担当の方とお話をしてきたが、必ずしも全員が上手に自社製品やサービスのPRを行えているわけではないな、と感じている。

なかには、「PR会社に依頼しているのだけど、あまり上手に付き合えていないんです。全然動いてくれている印象がなくて…」と悩む方もチラホラ。

筆者のようなPR会社の立場として言わせてもらえば、「成果が出ないのは、本当にPR会社だけが悪いの!?」って感じである。PR・広報においては、社内の人が頑張らないといけないことがとても多い。

そりゃ「自分たちでは出来ないからこうしてお金を払ってプロにお願いしているんだ!このヤロー!」という代理店存在意義論もわかるけど…。うーん、これは悩ましい問題である。

そこで、「PR力養成講座」などで、多くのベンチャー・スタートアップ企業の広報担当者にPRのノウハウを伝授されている、株式会社プラチナム 代表取締役の吉柳さおりさんに、この難しい問題を解決するヒントをいただくべく、お話を聞いてきたぞ。

ご自身の若手の頃の経験談や、「ベンチャー・スタートアップ企業とPR会社の良い付き合い方」について、とても有難いアドバイスをいただけたので、事業会社の広報担当者やPR会社の若手PRパーソンは、ともに目ん玉ひんむいて熟読するように!!ちなみに筆者が勤めている会社は、ベクトルグループではないので決してステマではないぞ。

吉柳さおりさん プロフィール
株式会社プラチナム 代表取締役。大学在学中に独立系PR会社のベクトルにアルバイトとして入社。正社員同様の生活を送り、大学卒業後に同社へ入社。2002年にベクトル取締役、04年にベクトルコミュニケーション(現プラチナム)代表に就任。2011年4月より慶應義塾大学非常勤講師。

TV番組のプロデューサーは100万回電話してようやくあってもらえると思え!?

―吉柳さんが若手の時、ベクトルがPRの事業を始めた時って、どんな感じだったんですか?

私が大学生の時、アルバイトでベクトルに入社した頃が、ちょうどPR事業をはじめようとしていた時だったんです。当時ベクトル社員は4名で、競合の老舗PR会社は、新聞記者とのネットワークなど、メディアとのリレーションをPRビジネスの売りにしていました。ベクトルは新規参入なので、とにかくTVに強くなる、ということを意識して、新聞のラテ欄やエンドロールのテロップを見て、プロデューサーの名前を調べて会いに行くところから始めていましたね。

もちろんメディアに提供するネタを作るためにも、クライアントから仕事をもらわなければいけないので、少ない社員数の中で、二兎追い営業をしていました。日経新聞や会社四季報に掲載されている企業を片っ端から当たっていたから、当時は目に映る全ての情報がアポリストのような感覚になってて(笑)
よく長谷川(現・株式会社アンティル代表取締役)と、どっちが先に新規アポを取ってくるか、という競争をしていました。

―めちゃくちゃハードワークですね…。PRの事業が軌道に乗った要因はなんだったんでしょうか?

当時は「マーケティングPR」という発想は全然なくて、事業部や宣伝部がPRにお金を投資するという発想がなかったんです。ただ逆にいえば、事業部や宣伝部はPR会社にとってはブルーオーシャンだった。老舗PR会社さんはやはり広報部とやり取りをしていたので、ベクトルは広告代理店が出入りしている宣伝マーケティング部、事業部などにアプローチして、宣伝予算をPRに投資をしてもらうプレゼン営業をしていました。

ベクトルはみんな学生起業家だったので、歴史がない、若く見られる、など大手企業からすると「ハズレは避けたい」というネックは、クライアント獲得の上で大変苦労しました。そこで、自分たちの会社を客観的に見たときに、「若くてスピーディ」「アイデアが斬新」「他がやらないことをやってくれる」でやっていこうと。そんなベクトルに、「やってみなはれ」という感じで投資をしてくれる、仕事をくれるクライアントとの貴重な出会いが積み重なっていくことで会社ができていきました。あとは、仕事をいただいたら、絶対に結果を出す!というのを積み重ねていました。

―僕らのような若手は、「マーケティングPR」という発想が出来あがってからPRに携わっているので、その風穴を開けてくれた吉柳さん世代には頭が上がらないです…。メディアに対しては、新規参入のPR会社だから困ったことなどはないのですか?

メディアがベクトルという会社を知らなくても、リサーチャーとして入り込めば障壁は何もありませんでした。もちろん、プロデューサーを出待ちしたり、何度もアポをブッチされたりもしたが、そんなことはイチイチ気にしない。TV番組のプロデューサーは、『100万回以上連絡をしないと会えない人』と思いながらやっていました。なので今、社員や部下が「なかなかアポが取れないんです…。」としょげている姿を見ると、「あんた、ちゃんとアポをとれる時間や取り方など戦略的にアポをとってるの?」と叱ってやります(笑)

―肝に銘じます!

PR領域において、クライアントはどんどん進化を続けている!

―PR会社の経営者という立場になられて、PR業界のトレンドや今後をどのようにお考えですか?

クライアントのPRリテラシーがとにかく高くなったので、とてもやりやすくなった側面があるし、反面、求められることが厳しくなってきました。いままではパブリシティ獲得がゴールだったのが、KPIがよりマーケティング寄りなものが指標になって、ハードルが高度なものになっています。既存のPRのやり方だけでは応えられない部分もあるのですが、そういう意味ではやり甲斐がありますよね。

あと、クライアントはよく勉強しているというか、努力をしているのをすごく感じます。マーケティング部門の中にPR担当やデジタル担当など、人事・組織的なところでも進化している。統合マーケティングでも「PR視点」で考えよ!というオーダーが増えてきていますね。

―それ、すごくわかります。我々PR会社もクライアントに勝るスピードで進化しなきゃと思います。そのような状況で、プラチナム、ベクトルグループとして目指している姿はどのようなものですか?

私たちは今、パブリシティ領域のみならず、クライアントの課題解決のために、消費者のマインドチェンジや行動喚起のための、導線設計までは全部ワンストップでできる会社になれるように、そういうサービスもドンドン増やしています。PRによる認知獲得だけではなくて、事業開発やテクノロジーなども活用した行動喚起までできる会社になる、というのが今行っている取り組みです。そして絶対に結果を出す!というのはこれからも変わりません。

「ベンチャー・スタートアップ企業とPR会社の良い付き合い方」とは?

―「こんなPRパーソンがクライアントにいればいいのに」って思うことありますか?

ベンチャー・スタートアップ企業とお仕事をさせて頂くケースでは、私はトップの方と仕事をすることがほとんどなのですが、そうではない場合、PR的センスやアウトプット能力だけではなく、社内のコミュニケーション能力に長けている人がいると助かるなと思いますね。事業やプロジェクトの川上地点で情報を持ってこれる人脈や、関係各所との調整能力を持っていることが必要不可欠だと思います。

―仕事がデキる人はみんな持っていますね。他には何かありますか?

マーケティングニーズや世の中のニーズを分析して、商品開発の人たちにしっかりと伝えられる人がいればなお良いです。そうすればもっと良い商品を作れると思うし、事業の本質だと思うんですよね。もしそういう人が社内にいないなら、外部パートナーとしてPR会社を使ってほしいです。

―事業会社の広報担当が、ゼロからPRを始めるときに必要なスキルはなんだと思いますか?

さっきの話と共通で、ズバリ分析能力です。一人の広報担当がメディアリレーションを全て行おうとするのは大変なので、私はそこの部分はアウトソーシングして良いと思っています。それよりも、マーケット分析能力、情報開発能力を駆使したリリースを作れるようになれば、パブリシティは自ずと獲得できるようになります。

そういった知見・ノウハウは、最初はPR会社を使って方法やアプローチの仕方をどんどん社内にインプットすればいいんです。それで自分たちでできるようになったら、PR会社を卒業していこう!という気持ちで頑張ってほしいですね。そのような付き合い方がベンチャー・スタートアップ企業とPR会社の良い付き合い方なのかも…。

―仰る通りですね!良い情報を開発できれば、それこそ「PR TIMES」を使えばメディアから問い合わせが来るわけですし…。どんどん社内のPR機能を高めて商品・サービス開発を高めていってほしいですね。

ただ、ベンチャー・スタートアップの人たちが気を付けなければいけないのは、業界内や経営者界隈の盛り上がりで満足してしまうところ。「ちゃんとユーザーや一般生活者にその情報が届いているのか?」「クラウドなんて言葉がわからない人にも理解してもらえるのか?」をもっと疑問視するべきだし、そこを目指していくべきだと思います。自分たちで情報開発をできるようになってからも、その最終目的を果たすための外部パートナーとして、是非PR会社を頼ってほしいところですね。

―最後に、吉柳さんの部下を含む、全ての若手PRパーソンへのメッセージをお願いできますか?

PRだけではないですが、どんどんクライアントのニーズが変わってきています。ただ逆に言えば、自分たちが変わり続けることができる素晴しい仕事なので、そこを楽しんでほしいですね。これからを担うPRパーソンには、今までなかった新しい場所を目指してほしいです!

―僕も頑張ります!本日はどうもありがとうございました!

ありがとうございました!

saori_kiryu_2

まとめ

いまPR業界で最も早いスピードで成長しているベクトルグループ。その最大の要因は創設時のベンチャースピリッツにあるのではないかと感じた。

それにしても、筆者のようなひよっこPRパーソン(しかも競合会社)にも分け隔てなくご自身の経験談をお話してくれる吉柳さんは、所属している会社はどうあれ、尊敬すべき先輩PRパーソンである。「卒業してほしい」なんて、PR会社の立場はなかなか言えないことだぞ。

日々の業務に追われて「でも~」「だって~」とかつい愚痴っちゃうお前らも、この有難きお言葉を心に刻んで、今日も大好きなPRに打ち込もうぜ。

LP

Pocket