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PRパーソンは「虹を見たければ、雨は我慢しなければならない」 /PHP研究所 書籍制作局 新書出版部 山岡編集長

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高橋ちさ

高橋ちさ

神奈川県出身。ラジオ局お手伝い⇒広告代理店(横浜駅スタジオDJ)を経て、現在は都内PR会社でIT企業、コンサル会社など、BtoB企業の広報を全力でバックアップ中。セミナー勉強会、飲み会の企画立てるの大好き。何かあればご相談下さい。
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山岡勇二(やまおかゆうじ)編集長 プロフィール
1962年、大分県生まれ。85年、PHP研究所に入社。
東京本部で1年半ほど書店営業に携わったのち、京都本部に転勤。月刊誌『PHP』『PHP増刊号』『別冊PHP』の編集に携わる。89年、再び東京本部勤務に。月刊誌『Voice』編集部に4年半ほど在籍後、93年の『小説歴史街道』創刊に参画。そして95年には、『THE21』編集部へ。2000年11月~10年9月、編集長を務める。この間、季刊誌『DUAL』編集長も兼務。
さらに、10年10月~12年9月には、『Voice』編集長を務めるなど、一貫して雑誌編集畑を歩む。12年10月に出版局に移り、14年10月より現職。趣味は読書、映画、サッカー。スポーツはランニング、フットサル。

広報・PR担当者も今は編集センスが問われる時代

-今までいろんなタイプのPRパーソンに出会われてきたと思いますが、特にPRパーソンから情報をもらうとき、重要視されることは何ですか?

雑誌の現場を離れてすでに2年ほど経っており、本サイトの読者にどこまでお役に立てる話ができるかどうかわかりませんが(笑)、ご指名ですので、それまでの四半世紀、ビジネス誌や論壇誌など、雑誌編集ひと筋で過ごしてきた経験をもとに、今回はお話しさせていただきます。たとえば雑誌編集部に記者会見のプレスリリースが送られてきた場合、チェックするポイントといえば、

①編集コンセプトとの親和性
②人であれモノであれ、知名度の有無
③会見後の懇親会(担当者との交流機会)の有無
④開始時刻(午後一が動きやすい?)と拘束時間(1時間くらいがベストで、MAX2時間?)

あたりでしょうか。なかでも、仕事柄どうしても重要視するポイントは①です。企業の広報担当の方からいただいた情報が、果たして自分が編集してきた雑誌で使えるかどうか、実用性を最優先していましたね。ですから、理想論でいえば、広報・PRの方には、お互いがWin=Winの関係になるような情報提供の仕方を心がけていただけると、編集者としては嬉しいですね。

-たとえば、どんなところに注意したらよいのでしょうか?

では、どういうことか、具体的に説明いたしましょう。ご存じのように、われわれのような弱小出版社であっても、編集者のところには毎日、あらゆる手段でたくさんの企業情報が送られてきますので、失礼ながら、なかには開封せずにゴミ箱直行の郵便物もありますし、早朝から深夜まで途切れることなく送られてくるメールも、タイトルはチラ見しても、本文は(ましてや添付ファイルなぞ)開かないケースがほとんどでしょう。

その点、ビジネス誌の編集者時代の話ですが、新商品のプレスリリースを送ってこられる際にも、商品開発のエピソードやビジネス・ユーザーの活用シーンなど、独自に加えたと思しき情報が添えられていると、ついつい読み込んでいました。たしかに面倒な作業ではありますが、「今度の新商品のプレスリリースは、あの編集部だったら、どのように活かせるか」想像力を働かせ、少しずつ情報をカスタマイズして提供していけば、そのまま捨てられずに読んでもらえるという“第一関門”は通過できると思います。

-編集者の立場になって考えることが大切なのですね。

企画というのは本来、編集者の仕事なのですが、とくにデスクや編集長に毎日せっつかれている若手編集者などは、いけないと知りつつも、”そのまま使えるネタ”を求めています。要するに、手抜きです(笑)。あとは、誰にインタビューできるか、新商品のプレスリリースでいえば、マーケティング担当、開発担当は当たり前で、もし社長に会える機会がありそうだとなれば、折り返し編集者サイドから反応するという“第二関門”も突破できるのではないでしょうか。

現金な話、新商品のCMに起用するタレントのインタビューが可能とか書かれていたら、たとえ論壇誌でも(?)なんとかテーマを捻り出して、見開きページは用意するのでは…(笑)

要は、一方的な情報の押しつけ(失礼!)では、われわれ編集者の食指は動かないということです。とくにメールの場合は、少なくともタイトルに何らかの仕掛け、フックが必要です。上記の例に倣っていえば、タイトルに「〇〇社が新商品□□を発売! CMに起用した△△さんのインタビューもOK!」などと書かれていると、つい本文や添付ファイルを開いてしまいますよ。その意味でも、雑誌編集でいえば、いかに魅力的な目次やタイトル、キャッチコピーをつけるかが勝負、広報・PR担当者も今は編集センスが問われる時代ではないでしょうか。偉そうに聞こえるかもしれませんが、われわれ編集者を動かしたいなら、相手の立場に取った情報提供の姿勢(Win=Winの関係)が大切だということで、説明になっているでしょうか。

信頼されている人は、誰からも信頼されている

-ちなみに、今まで出会ったPRパーソンの中で、最も印象に残っている人はどんな方ですか?

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個人を特定するような話は差し控えさせていただきますが、受けていただけるにせよ断わられるにせよ、誠実な態度で取材対応してくださる、できあがった記事に対しても、公正な態度を貫いてくださる広報・PRの方は、応援したくなりましたね。そういう方々は、広告記事でさえなければ、原稿チェックをお願いしても、事実関係の誤りしか指摘してこられませんし、執筆者の意見は意見として(たぶん違うなあ、と思うことはあっても)、寛容に受け止めてくださいます。

かつては猛者といいましょうか、深夜の編集部に直接乗り込んでこられる(その意味で)有名広報マンもいらっしゃいましたから…。ただ、「いま(編集部が入っているビルの)下にいるんですけど…」「近くに来たついでに…」と、突然ブラリと訪ねてこられると、悪い気はしませんでした。某運輸企業の広報マンでしたが、“ウチみたいな弱小メディアのことも気にかけてくれているんだなあ”と、感謝したくなります。

そういえば先日、あるライターさんと喫茶をしていたら、たまたま二人とも知っている某メーカーの広報マンの話になりました。この夏、某誌に業界レポートを書いたとき、大人の事情(?)で記事がボツになったらしいのですが、お詫びかたがた経緯説明のメールを取材した各社宛てに送ったら、彼からは「私は〇〇さん(そのライターさん)を信頼しています」と返信があったとか。普通なら「せっかく何度も取材のセッティングをしたのに」と、嫌みの一つも言われるところですが、長いジャーナリスト人生でボツをくらったのは初めての出来事で落ち込んでいたところだっただけに、「彼の言葉に救われた」と言っていました。

某運輸企業の広報マンにせよ某メーカーの広報マンにせよ、やはり、取材する側・取材される側、信頼関係の構築がいちばん大切であることは、言うまでもありません。そんな人のためなら、不義理な僕なんかでも、主催する記者会見の参加人数があまりにも少なくて困っておられたとき、朝一で連絡をもらい、午後一の会見に駆けつける、といったことも厭いませんでしたから。

広報・PRの方に限らず、やはり人柄だと思います。信頼されている人は、誰からも信頼されているんだと感じますね。

-誌面を創るときに、こういうPRパーソンがいたらいいなぁと感じることはありますか? もしあれば、どんなイメージの人物か教えて下さい。

雑誌編集をしていると、リアクションが早い広報・PRの担当者は助かりますね。とにかく誌面を早く埋めたいという思いが強いので、取材の諾否にせよ返事は(特に「NO」の返事ほど)早いほうがいい。次の依頼にすぐに取り掛かれますので。

では、それはどんな人かといえば、社内に顔が利く人、ということになるでしょうか。あらゆるセクションの人とコミュニケーションを密に図っていて、取材のハンドリングがスムーズにできる人。なかには、いるらしいんですよ。周囲から嫌われていて、「広報です」と内線電話で言った途端、「忙しいんだ! 取材に応じる時間がない」と断られる広報マンが…。さらにいえば、トップとも意思疎通が図れていて、トップの意向を汲んで即決即断できればなお最高です。

-ニューメディアとトラディショナルメディアが乱立している中、PRパーソンの役割が変わってきている気がします。メディア側から変化は感じますか?

正直申しあげてよくわかりませんが、広報・PRの役割は、昔もいまも変わらないのではないでしょうか。相手がニューメディアだろうがトラディショナルメディアだろうが、企業サイドはCSR(企業の社会的責任)の姿勢を変えてはいけないと思います。ニューメディアには砕けた口調で情報発信してもかまわない、などと勘違いしてはいけません。

広報・PR担当者は真摯な姿勢で、いい話だろうが悪い話だろうが、きちんと説明責任を果たすべきだと思います。あとは、役割が変わったというよりも広報・PRの方々にも、いまは直接的な成果、具体的な結果が問われているようですね。メディアとの関係を良好に保つ、といった間接的な成果だけでなく、何件テレビで取り上げられたか、新聞や雑誌の記事になったかなど、実績が必要な時代なようで、お会いしていても話の端々から焦りというか必死さを感じることが多くなったような気がします。昔を懐かしんでいても仕方がありませんが、今は時間をかけて良好な関係を築いて…というような時代ではないのでしょうね。

粘り強さが一番大切な資質

-メディアもそうですが、広報・PRの世界も転換期に来ていると感じます。焦りを感じているPRパーソンも多いと思います。そんな次世代のPRパーソンに一言お願いします

yamaoka3企業の広報・PRという仕事は、社会人としてのキャリアアップに必ずつながる、羨ましい仕事です。社内のさまざまなセクションの人、社外のひと癖もふた癖もあるマスコミ人と触れ合うことで、人間性が磨かれていく。なかには、自分の意に添わず配属された人もいるでしょう。そんな人も、向き不向きはべつにして、貴重な体験を無駄にしないでほしいと思います。

そして実際に広報・PRの仕事をやっていくうえでは、傍からみていると、粘り強さが一番大切な資質に思えます。この高度情報社会、スピード時代にあっても、ことさら効率を求めてはいけません。各メディアへ情報提供するにも、デジタルの効率性よりは(というよりも、デジタルの効率性に加え)、アナログの希少性に賭けてみてはいかがでしょうか。

その企業や商品に興味がある編集者なら、自らそのサイトに飛んでプレスリリースのPDFを漁りまくりますが、みなさんが相手にしなければならないのは、そんな興味や関心が微塵もない編集者がほとんどでしょう。そんな相手に、いくら毎日のようにメールで大量のリリースを送っても、99%は読んでもらえません。だからこそ、先述のように編集センスが必要だし、人間の感情を揺るがす努力が必要。何度、邪険に扱われても、あきらめずに連絡をとり続けること、直接会いにいって説明すること。落ち込んでいる暇はありません。特別なノウハウでも何でもありませんが、まさにアナログ的なドブ板営業であり、ダメモトで “下手な鉄砲も数撃ちゃあ当たる”的な信条で仕事に取り組めば、必ず成果は出ると僕は信じているほうです。

言うことが年寄りじみてしまいますが、成功に近道はありません。正確な表現かどうかは不確かですが、「虹を見たければ、雨は我慢しなければならない」(ドリー・パートン/米国のシンガーソングライター)のです。

-いつもオシャレで洗練された雰囲気の山岡編集長。今回のインタビューでは、とても分かりやすく具体的な話を交えて、PRパーソンに向けて温かな激励を頂いた気がします。山岡編集長、ありがとうございました!

(撮影:野村裕)

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