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メディアで権力のある人を見極めろ!! 次世代のPRパーソンは、とにかく頑張れ!/ネット編集者 中川淳一郎 氏

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高橋ちさ

高橋ちさ

神奈川県出身。ラジオ局お手伝い⇒広告代理店(横浜駅スタジオDJ)を経て、現在は都内PR会社でIT企業、コンサル会社など、BtoB企業の広報を全力でバックアップ中。セミナー勉強会、飲み会の企画立てるの大好き。何かあればご相談下さい。
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今回は、ネットニュース界の第一人者中川淳一郎さんのご登場です。
お会いするたびに印象が異なる中川さん、私の周りにもファンが多い(特に男性ファン)のも納得の魅力的で、とってもチャーミングな方です。

中川淳一郎 氏 プロフィール
1997年 博報堂入社。コーポレートコミュニケーション局に配属。2001年に退社後『TV Bros.』編集者を経て、2006年からネットニュース編集者、企業のPR活動、ライター、雑誌編集などを経て『NEWSポストセブン』など様々なネットニュース編集者となる。インターネット論も行う。
著書は『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『ネットのバカ』(新潮新書)、『夢、死ね!若者を殺す「自己実現」という嘘』(星海社新書)、『縁の切り方 ~絆と孤独を考える~』(小学館新書)などがある。
Twitter:@unkotaberuno

プレスリリースで書いてもいいけど、書きづらい時代になった

-中川さんは、「NEWSポストセブン」など数々のネットニュースの編集を手がけてらっしゃいますが、実際に記事や特集のトピックスを決めるにあたり、どこを重要視していますか?

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やっぱりアクセスが取れるかどうかでネタを判断しています。それと、一番重要なのは訴えられないことですね。書き方とか、ネタとか関係なく、うざい人もいる、やたらと訴訟をちらつかせる人。そういう人がいるから気を付けないといけないです。たとえば、出版社は訴訟担当の弁護士がいるけど、そうじゃない場合は大問題に発展します。

-炎上とかですかね。あっ、そういえば。 先日大宮冬洋さんのことも叩いてらっしゃいましたが、ああいったことでしょうか。

たしかに、大宮のこともあった。ああいう『ベビーカー論争』など、「そういうことがあった」という事実は報じてもいいけど、正論だったとしても、それについて自分の意見をいうのは得策ではない。

参考:
日本男子は、なぜベビーカー女子を助けないのか 女の言い分、男の言い分(プレジデント)

ギャラが安いから記事を2回に分けたぜヒャッハー! ベビーカーは邪魔なんだよ、の大宮冬洋についてだ

ネット炎上のテーマってもんは案外シンプルなのでここに書いときますわ。反省してまーす、チッ

-話は変わりますけど。以前、宣伝会議の記事で「プレスリリースで記事が書けなくなった」とおっしゃっていましたが、プレスリリース以外で企業の最新情報を収集するのに最も活用しているツールなどあれば教えて下さい。

あぁ、あれはプレスリリースでは記事を書かないっていった訳ではなくて、プレスリリースで書いてもいいけど、書きづらい時代になったということです。読者や運営元から、やたらとステマじゃないかと疑われてしまう。いいネタなら書けるけど、単純にこういった新製品が出たとプレスリリースを元に書いても、やっぱり疑惑がでちゃう。プレスリリース記事だけでは運営会社や読者から変な詮索をされてしまうことが増えています。

だから、極力「横並び」をするようにしていますね。本当は商品力があるのであれば、1商品だけ紹介してもいいのでしょうが、なんとなく今はそれをする雰囲気ではない。なので、オレは、傾向記事を書くようにしているんですよ、例えば「今年の秋はこんなのが来るよ」とかね。経済系の記事を書くにしても、だいたいどんな記事だとPV稼げるか分かるので、まずは情報収集として、セブンやファミマのプレスリリースがおいてあるサイトに行きます。

例えば、少し前に冷凍麺のブームがあったとき、冷凍つけ麺とかね、傾向記事の方が書きやすい…となると、ファミマ、セブン、ローソンなど、冷凍麺が置いてあるいろんなコンビニの情報を探すわけです。なので、プレスリリースの価値自体は変わっていないと思いますよ。

あとは、プレスリリースを元に書くことで「いつか広告入れてくれればな~」という下心も当然あるっちゃーあるけど、やっぱりやりにくくなって来ていると感じます。

一つに特化していくPRパーソンは残るかもしれない。プレスリリース職人、電話かけ職人みたいな。

-プレスリリース発信以外だと、これからの広報PRパーソンの価値(役割)はどんなところになると思いますか?

PR会社だと、やっぱり嶋浩一郎さんみたいな人が必要とされていると思いますよ。「編集者に電話しといたよ」「編集長に頼んでおいたよ」で記事が出ちゃったりもする。さっきの冷凍麺の話もそうだけど、情報が欲しいときに、わざわざPR会社の人から情報をもらわなくても、勝手にサイトに取りにいけばリリース情報が載っている。

企画力というか、ここの媒体に必ず出せるという明確な約束ができないとだめだと思います。そこは人間関係が構築されていたり――みたいなことが重要だったりもします。

※嶋浩一郎 氏:言わずと知れたPR業界の重鎮、日本のクリエイティブディレクター。博報堂ケトル共同CEO。@shimakoichiro

-でもそうすると、広告と何が違うのって話になる?

うん、うん、そう。いまの若いPRパーソンは、ペイドパブが仕事だとおもっている節がある。予算が幾らあるから、この媒体出せますとか、平気で言ったりします。

その考えだと、フリーの編集者が、PRパーソンの仕事を取ってしまう。オレ自身なら、5媒体に必ず掲載させることができますよって言えてしまうんですね。それは、媒体を持っているから。企画力も大切だけど、今までのようにやっていると、お前は何のためにいるの?って話になります。

オレはPRプランナーです、みたいなことも言っていますが、それは、オレが編集者としていろんな媒体を持っているからなんです。プランニングするにしても、メディアをたくさん持っているので、だいたいこのレベルの話題なら、これくらいの媒体には出せますよと、クライアントに言えるわけです。

ただ、作業マンとして、地道にリリース書くだけとか、電話かけるだけとか、一つに特化していくPRパーソンは残るかもしれないですね。リリース職人、電話かけ職人みたいな。

なんだかんだ言って、メディアの人間は感じのいい人を求める。

-話は変わりますが、今までで、もっとも印象に残るPRパーソンのエピソードがあれば教えて下さい。
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2つあります。

1つは、プラップジャパンだったかな。日経エンタテインメントで、彼女はたしか缶コーヒージョージアの担当で、当時缶コーヒーのCMが結構面白かったんですね。BOSSのCMで、永瀬正敏が走って逃げていると、別の企業やメーカーがコラボでCMに出てくるみたいな。あと、ジョージアのCMでも「明日があるさ」を吉本の芸人が歌ってCD発売して、話題になっていた。

そこで、缶コーヒーのCMの編集特集を組もうとなったとき、そのPRの彼女がうちのジョージアをたくさん出してくださいと言ってきたんです。でもね、たくさん出して欲しいと言われてもね、、、。

で、彼女がどうしたかというと、過去10年間の缶コーヒーのCMをジョージア以外のワンダやファイヤとか、BOSSとか、全部データ化してエクセルにしてきたんです。しかも、タレントの誰が出演しているとか、何年にどんなCMだったかとか、かなり完成度が高かった。そこまでやってきてくれたら、もうこちらとしては紹介するしかないんですよ。なので、そのリストをそのまま掲載しました。

当初は半ページの特集予定だったけど、それで2ページになりました。結果その中で、ジョージアの記事はかなり多く露出することになりました。そりゃ、そこまで企画作りの手伝いをしてくれたらこちらだってそうせざるを得ない。編集部がこういうネタが欲しい、ああいうネタを探していると言ったら、社蓄のごとく働きまくって、体を動かすこと。彼女はほんとよかった。

あと。もう一人は、常見陽平って分かります?今までで彼ほど優秀な広報はいない。これが結論です。調整と段取りが段違いに素晴らしい。

※常見陽平 氏:日本の人材コンサルタント、評論家。HR総合調査研究所客員研究員。リクルートという幻想 (中公新書ラクレ)を出版。@yoheitsunemi

彼は、2003年~05年までリクルートとトヨタの合弁会社の広報を務めていたんですが、その時に、オレは彼と一緒に翔泳社さんで本を作ったんですね。常見が間に立ってくれたんだけど、その仕切りが素晴らしかった。

そもそも、トヨタをやめた年配の方が、カイゼンの技術をいろんな会社に伝授していくっていうコンサル事業をやっている会社(株式会社オージェイティー・ソリューションズ)です。

その会社の初代広報が常見だったんですね。あの頃、トヨタのおっさんと、リクルートの若手が頑張ったんですよ。その時、彼はテレビ朝日系の『サンデープロジェクト』とかの仕込みもやっていて、会社をPRするのにどうするかってなった時に、彼は本を出せばいいと提案して、著者としてオレを指名しました。自費出版じゃなくて、キチンと翔泳社に企画書持ってプレゼンをし、『イノベーションのジレンマ』を手掛けた敏腕編集者の中村理さんに話をつけ、商業出版として出版できることになりました。

当時、トヨタのコンサルタントに取材していて、例えば質問があったら、その日のうちにしっかりとした回答が来る、足りない部分の資料もすぐに用意してくれる、本当に仕事が速かった。特に思い出深いのは、名古屋の工場に取材にいく話があったんですが、朝9時に名古屋に到着してなくてはいけなかったのに、起きたら9時だった。

で、9時に常見から電話が来て、「いま、起きたごめん」って・・・・。実はその日、4件も取材入れてくれていたんですよ。名古屋の工場で2件取材して、そのまま名古屋の事業所でコンサルタントの取材を2件する、というスケジュールだったです。

-自分が広報の立場だったら、ぞっとします。

4人の取材時間をとってくれていて、しかもその中の一人は取材だけでなく工場を案内して回ってくれる予定だったんです。

でも、オレは寝坊してしまって、9時に起きてとりあえず東京駅に今から行くと言ったんです。そしたら、「調整し直すから、少し待っていてくれ」と言われて、また一気に取材を再調整してくれた。すでに時間が決まっていた人の取材も、瞬時に調整して、その日のうちに予定していた取材を全て再調整してくれたんです。

・・・・オレが完璧に悪いにも関わらず、彼は一度も無理とか、出来ないとは言わなかったし、怒ることもしなかった。しかも、それって自分にとって初めての著作であり、雑誌の特集の記事は作れても書籍を書くスキルはできなかった。「はじめに」がまったく書けず、中村さんからは何度もダメ出しをくらっていたんですよね。すると、中村さんはもう呆れ果ててしまい、裏で「中川さんは書けないみたいなんで常見さん書いて下さい」なんて言って常見に書かせたら、これが良い出来栄えでした。オージェイティー・ソリューションズという会社のこと、カイゼンのことがよく分かっているが故の文章でした。

-いまの2つの話をお聞きして、広報とPRとでは求められるスキルが違うのかな? という気がしてきました。

うーん、同じですよ。調整力、それとメディアとどのくらい仲がいいかだと思います。

-信頼関係ですね。

信頼関係というか、仲がいいかですよ。なんだかんだ言って、メディアの人間は感じのいい人を求めるんです。あいつは頑張っているとか、女性だったら好みのタイプだとか 笑。男性なら、あいつは可愛げがあるとかね。

-営業マンと一緒ですね。

サントリーの広報もいいです。越野さんっていって慶応卒のイケメンで。あっ、あとで検索してみて、本当にイケメンだから。越野さん、本当格好いいからリンク張っときましょ。

▼カメラマンがスマホで瞬時に検索、二人で本当だー格好良い!!と盛り上がりました。
地道な活動が火を付けた「ハイボール」の大流行(日経ネットマーケティングオンライン)

彼は、例えば新製品が出たよとかすぐ教えてくれるし、よく飲み行ったりするし、仲が良いんです。以前、京都を安く旅しようって特集を組んだんですが、酒工場の取材で、中立を保つためにいろんな企業を取材するんだけど、他は1か所だけど、サントリーは、ウィスキーとビール工場の2か所取材するとかね。

その時も、すぐに越野さんが、私が手配しておきますからって言ってくれて、オレ一人で工場回らせてもらって、とても良くしてくれたし、帰ってきてから、手配有難うってお礼を言ったら、こちらこそって言って飲みに行ったりね。

-中川さんのお人柄かもしれないですね、愛されキャラだと思います。炎上についてはどうお考えですか?

極力「風を読む」を考えなくてはいけない。それはもう、ネットの風を読んでいたから。どんなバカでも、これだけネットの記事の編集をやれば、それくらいは読めるようになる。この間の藤田社長を援護したのも、大宮の記事をたたいたのも、炎上しないとわかっていたからやったんです。なぜしないと分かっていたか――それも「勘」でしかない。すいません、なんの役にも立たず。

参考:
私が退職希望者に「激怒」した理由(日本経済新聞 電子版 藤田晋氏の経営者ブログ)

勝ち馬に乗ってCA藤田社長を叩くお前ら 一生権利主張しとけ by中川淳一郎(ザ・ハードワーカーズ)

いろいろあるけど、藤田さんの記事も計算されていると思いますよ。広報や人事もかんで発信していると思う。

-以前DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー岩佐編集長に話を聞いたときに、メディアを社内広報のようにある意味社員への情報発信につかってもらうことも、メディアを使う上で一つのやり方だという話を聞きました。まさにその形だったと思います。

そうなんです。結局、メディアを使っても、特にあの話題は、辞めた社員の事を経営者がどう思っているかという普遍的なテーマですし。

-最後に次世代のPRパーソンに一言お願いします。
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広報を金のかからない宣伝だと思っている会社が多いし、そういう会社に入っちゃうと、広報の立場も弱いだろうし可哀想ですね。

メディアで権力のある人を見極めろってところですね。駆け出しのPRパーソンには難しいから、本当に経験積んでいくしかない。

そうして、自分の形を作っていく、強みを創っていくんだと思います。やっぱり次世代のPRパーソンには、とにかく頑張れ!しかないですよ。

-中川さんが主宰&講師を勤める勉強会でお会いしてから、図々しくインタビューまでお願いしてしまいました。ネット業界でめちゃくちゃ有名でとっても多忙な人なのに、下々のわたし達仲間にも良くしてくれる「人間味あふれる神さま」みたいな中川さんでした。とても良いお話を有難う御座いました!

(撮影:福田典代)

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