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“等身大の自分”で話しているか――聴衆に「伝わる」話し方を、元NHKアナウンサーの松本和也さんに聞きました

matsumoto
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志賀祥子

志賀祥子

PR Table Labo所長/PRコンサルタント。大手金融機関を経て、大手上場企業にて社長秘書と広報を兼任。2011年ベンチャー企業へ入社、新規顧客の開拓からPR企画に携わる。その後、スタートアップから上場ベンチャー企業の広報部門の立ち上げや広報コンサルティング業務を担当。2016年8月よりPR Tableへ参画し、個人の活動としてPRとしてスタートアップ企業を中心に広報コンサルティングにも携わる。
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人生はプレゼンの連続。PRパーソンだけでなく、ビジネスパーソンの誰もがプレゼン技術を向上させたいと思うのは当然ですよね。それでも、人前で話すのが苦手、滑舌が悪い、声が通りにくい…などコンプレックスを抱えている人もいます。

しかし、滑舌が悪いのではなく話すスピードが早いだけ、声が悪いのではなく聞こえるように言ってないだけ、そう「伝えるプロ」はいいます。

聴きやすい、理解しやすい、惹きつける、話し方とは?誰もが知りたいこの話を、7月に著書を出版予定の元NHKアナウンサーの松本和也さんにお聞きしました。

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◼︎松本和也さんプロフィール
松本和也(まつもと・かずや)
音声表現コンサルタント・ナレーター。
1967年兵庫県神戸市生まれ。私立灘高校、京都大学経済学部を卒業後、1991年NHKにアナウンサーとして入局。
奈良・福井の各放送局を経て、1999年から2012年まで東京アナウンス室勤務。2016年6月退職。7月から「株式会社マツモトメソッド」代表取締役。
アナウンサー時代の主な担当番組は「英語でしゃべらナイト」司会(2001~2007)、「NHK紅白歌合戦」総合司会(2007、2008)、「NHKのど自慢」司会(2010~2011)、「ダーウィンが来た!生きもの新伝説」「NHKスペシャル(多数)」「大河ドラマ『北条時宗』・木曜時代劇『陽炎の辻1/2/3』」等のナレーター、「シドニーパラリンピック開閉会式」実況に加え、報道番組のキャスターなどアナウンサーとしてあらゆるジャンルの仕事を経験。
株式会社 青二プロダクション所属

誰もが陥りがちな”伝わらない”話し方

-人前で話す伝える力をつけたいと考えている方は多いと思います。そうは思いつつ、なかなか上達しないと頭を抱えている人も多いと思いますが、どういった点に気をつけるべきか、松本さんにお聞きしたいです。

プレゼンやスピーチで、うまく話せていないなと感じる人には、3つの特徴があると思っています。

それは、「話すスピードが早い」「聞きづらい」「言いたいことが分からない」の3つです。

特によくあるのは、ペラベラと話していたけど、「で、何をいいたいの?」と、結局、伝えたい内容がわからないという場面です。

-ビジネスの世界では、特に、長々と話すことは好まれないですよね。他にも、「滑舌が悪い」とか、「声が通りにくい」といったことを気にされている方もいます。どういった点に注意すれば、改善できると思われますか?

「ゆっくり話す」「しっかり発音する」「ノイズをなくす」の3点を意識することです。

まず、滑舌が悪いと悩んでいる人は、実は滑舌が悪いでなくて、喋るスピードが早い。ゆっくり話せていないだけなので、その場合は、ゆっくり話す意識を持つだけで良いでしょう。

また、声が悪いと思っている方は、声のせいではなくて、聞こえるように言っていないだけだと思います。「私は」というときは、「あしゃしゃ」と言うのではなくて、「わたしは、」としっかりと聞こえるように発音すれば、声が悪くてもしっかりと伝わります。

最後のポイントは「ノイズをなくすこと」です。ここを大事にすることで、言いたいことをしっかりと伝えられると思います。例えば、「今日はありがとうございました」という場合、一番伝えたいことは、「ありがとう」ですよね。

「ありがとうございました。」と平坦に言うのではなく、「ありがとう」と言う最も言いたい部分を丁寧に言うことで受け手にとっても聞きやすいスピーチやプレゼンになると思います。

誰でもすぐに取り入れられる「もっと聞きたい!」と思わせる話し方

-広報の方で、記者さんに「もっと聞きたい」と思わせるような話しをしたいが、その良いバランスが分からない、と悩んでいらっしゃる方もいるようです。

もっと聞きたい!と思わせるためには、「話しすぎない」ことがポイントです。冒頭で、重要なことをシンプルかつ魅力的に伝えるのです。

それはどうすればいいのとかというと、情報をひとかたまりでいうのではなく、ひとつの情報に対しひとつの文章というように、文章を短く切ればいいのです。例えば、「私が飲んでいる水はおいしい」という一つの文ならではなくて、「私、この水、飲んでいます。おいしいです。」と2つの文に切るんです。

極端なことを言えば恐れずに主語、目的語、形容詞をそれぞれ一つの文章に区切る。さらに、何が言いたいかをはっきり伝えるために、大事な情報である述語を早めに言うんです。「きれいだよ」「何が?」とか、「食べるんだよ」「何を?」など、そういった具合です。

-確かにそうですね。必然的に、続きが聞きたくなります。

英文法の構造も同じですよね。「I have 〇〇」。〇〇はpenと言うように、述語を早くいって、「何を?」と思わせて、ポンといれる。そうすると、聞いている人は「ほうほう」と耳に入ります。それなら、聞き手も退屈しないでしょうし、もっと聞きたい!と思いますよね。

聴衆を惹きつけるプレゼンの方法-「自然に、短く」話す

-プレゼンをする際に、スティーブ・ジョブズのようにカッコよくプレゼンをしたいと言う人は多いと思いますが、人前で話すことにあまり慣れていない人でも、いいプレゼンをする秘訣はありますか?

「普段のように」「短く」話す、たったこの二つです。

プレゼンとは、考えが「伝わる」ことが重要だと思っています。「伝わる」にはどうしたらいいかと言うと、「普段喋っているように、人前で話す」ことが大切だと考えています。

変に芝居がかっていたり、不自然なプレゼンだと伝わるものも伝わりません。プレゼンをするのは、ジョブズのようなスター経営者でない一般の方がほとんどですから。

また、「普段喋っているように」といっても、その「普段」が荒れていたり、いろんな癖がありすぎると人前で話すと伝わらない。普段通りにやると伝わらないからといって、原稿を用意してそれを何も考えず読むと、棒読みになってダメになる。ということは、普段から人前で話すぐらいに意識していれば、プレゼンでも普段の自分で話せるようになるでしょう。

-頭では理解しつつも実践することは難しいと思います…。何かお手本になりそうなプレゼンはありますか?

ぜひ見てほしいTED(Hope invites | Tsutomu Uematsu | TEDxSapporo)があります。

植松努さんという北海道の電気機器メーカーの社長で、ロケット開発を行っている方のスピーチです。言葉は悪いですけど、見た目は普通のおじさん。本当に淡々と話すんです。でも、それがすごく伝わってくるんです。

(植松さんのTEDtalk冒頭から抜粋)
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“47年前に生まれました、植松努といいます。僕は北海道の真ん中へんにある赤平っていう街で、生まれて初めて、会社を経営しています。

僕たちは、リサイクルに使うマグネットを作っています。そのかたわらでロケットを作ります。

僕たちは宇宙開発ができて丸ごとロケットを作れて打ち上げできるようになって、そして人工衛星も丸ごと飛ばせるようになって、そして、世界で3つしかない、日本には僕の会社にしかない。

どれも売っていないから買うことができません。でも、自分たちでがんばってつくりました。でも、僕にとって、宇宙開発は夢ではないんです。僕にとって、宇宙開発は僕の手段にすぎません。”
————

これは完璧なプレゼンです。なぜなら、自然に話しつつ、文章が短いんです。文章が短くて、その人が無理をしていない、つまり、”等身大の自分”なので、聞いている人も無理しなくて聴きやすいんですよ。だから伝わるんです。

付け加えるなら、人に向かって、ちゃんと前に向かって話しているところもいい点です。だから、変な芝居はいらないんです。植松さんのプレゼンは、プロにはできない話し方です。一般の人が学ぶべきプレゼンの1つだと言えますね。

謝罪会見、取材中…想定外のことや答えづらいことを質問されたときの”印象の良い”返し方とは

-プレゼンだけでなく、記者会見や取材に場慣れしていない人は想定していない質問がくると、あたふたしてしまうこともあります。そうした場合のいい答え方はありますか?

想定外のことは、「想定外です。」、答えられないことは「答えられません。」と正直かつ誠実に伝えれば良いと思います。

結局、人は何をみているとかいうと、「どう答えているか」というその人の「姿勢」を見ているんじゃないかと思うんです。「真面目に答えているのかな」、「一生懸命答えているのかな」というところです。

もし本当に考えていなかった時でも、「考えていませんでした。」と言うよりは「想定外の質問だからお時間をください」と答えることが大切になるのではないでしょうか。

「想定外なんですよ」というほうが聞くほうも「おぉー」となるでしょう。もちろん、そこで終わるだけでなく、「ちゃんと答えるからちょっと待ってくださいね」と誠実に答えることで点数が上がります。

-取材でも答えたくないことがありますよね。それでも、誠実に答えることが大事なことは、会見でも、取材でも同じことが言えそうです。

「言えないところは言えない。」「言えるというところは言える。」と線引きすることが重要でしょう。答えられないことが出た時は、その先は「申し訳ございませんがお答えできません。」と伝えればいい。ただし、その理由はちゃんと説明するべきでしょう。

今まで自分なりに努力したり、準備したことがあると思いますけど、やるべきことを果たした上で、わからないことが出てきたら、「そこは仕方ない」と割り切って、謝るしかないと思います。

逆に、ここでカッコつけて答えようとすると、自分のハードルをあげて、会話がギクシャクするでしょう。それは、爆弾を仕込んでいるようなものだと思います。「ちゃんと見せなきゃ」と変に意識してしまうことは、自分で自分に鎧を着させているようなものだと思うんです。

そういう意味でも「誠実に答える姿勢」が大事なのではないでしょうか。

伝え方の極意「松本メソッド」が詰まった一冊

-松本さんは、7月に著書を出されるそうですが、どういった内容なのでしょうか?

スピーチやプレゼンのように、「1対多数」で話す際、”どうやって聴き手を惹きつけるか”という具体論をまとめたものです。

最初が「伝え方の基本」で、そのあとが「具体的な聴衆との会話」、「プレゼン」「スピーチ」といった内容になっています。

「伝えることは聴きやすいこと」、「わかりやすい話しが人を惹きつける」。このポイントを抑えていれば、聞き手は理解しやすいんですよね。

まずはそこを理解してもらい、聴衆が「頭でわかる」「音的に聴きやすい」。そして聴衆を「惹きつける」。この3つができるようになるためには、具体的にどうすればいいのかを書いています。

実はこういったことって、学校では習っていないでしょう。それに、社会人になって、資料の作り方を教えてもらったとしても、「どう話すか」までは習わないですよね。また、教えられる人もそう多くはないでしょう。そういったことを体形化していますので、ぜひ手にとってみてください。

-発売が楽しみです!ありがとうございました。

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