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片岡英彦さんに聞いた! 新任の広報担当者が心がけるべきことは?

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大堀航

大堀航

PR Table 代表取締役社長。大手PR会社を経て、オンライン英会話サービスを提供する会社でPR・マーケティングを担当。2014年12月に(株)PR Tableを創業。
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これまで、PR Table Blogでは様々な方にPRパーソンへのアドバイスや激励のお言葉をいただいてきました。広報・PRへの重要性がますます高まるなか、戦略PR、オウンドメディア、コンテンツマーケティングなど様々なワードが飛び交い、広報担当に新たに就任された方からは「まず何から始めていいか分からない」という声もよく聞くようになってきました。

そこで、今回は名だたる事業会社の広報・宣伝を歴任し、現在は東北芸術工科大学 広報部長、そして同大学の企画構想学科の准教授としてご活躍されている株式会社東京片岡英彦事務所の代表で戦略PRプロデューサー片岡英彦さんに、新任の広報担当者に向けたアドバイスを聞いてきました。

■片岡英彦さん プロフィール
1970年、東京生まれ。京都大学卒業後、日本テレビ入社。報道記者、宣伝プロデューサーとして勤務。後にApple、MTV、マクドナルド、mixiの広報・宣伝・プロモーション責任者等を務める。2011年「片岡英彦事務所」を設立。企業のマーケティング支援の他「日本を明るくする」プロジェクトに参加。
2013年「一般社団法人日本アドボカシー協会」設立。代表理事として「アドボカシー活動」「アドボカシー・マーケティング」の普及、社会起業家のための広報支援プロジェクトを開始。同年『株式会社東京片岡英彦事務所』を設立。

PRは「攻めと守り」、「内向きと外向き」で考えよう

−最近、ベンチャー・スタートアップ業界でも広報・PRの重要度がかなり高まってきていて、専任の担当者を置く会社も増えてきている一方で、はじめて広報を担当する方々が多く、なにから始めたらよいか悩んでいるという声をよく聞きます。

まず大事なのは経営者とPRの目的について意識をすり合わせるところからです。

僕がクライアントの経営者や担当マネージャーにPRの話しをするときに、その方がイメージしているPRとは何なのかをお聞きます。来月発売する自社商品を経済番組で取り上げられたいのか、BtoBの会社がステークホルダーに向けて自社の存在感を高めたいのか、社長が自社の未来を新卒採用のために語りたいのか、
これらはいずれもPRの範疇です。

ざっくりいうとPR活動には「攻めと守り」「内向きと外向き」という4象限があり、だいたいこの中で考えることができます。販売促進なら外向きの攻めの活動ですし、会社報だと内向けの攻めです。また、ブラック企業と呼ばれないようにするためのガバナンスの徹底などは、内向きの守りの活動になってくる。まずはPRの目的の認識統一それから手段の話をしないと、いつまでもPRの本来の目的が定まらず、枝葉末節の手段やメディア枠の話ばかりになってしまいます。

日々の積み重ねと戦略性が大事

−たしかに、PRって言葉への意識、イメージの違いって相当多いですよね。ベンチャー・スタートアップだと、「とにかくワールドビジネスサテライトに出たい!」とかは結構多いかもですね(笑)

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「有名な番組で自社や自社商品について取り上げられたい」というのも幅広いPR活動の中の、一つではあります。でもやはり大切なのは「目的」です。同じように考えている企業はどのくらいあるのか? 何万社もありますよね。そう考えたときに、やみくもにメディアに会いに行くのではなく、いかにメディア側から声をかけてもらえるか「仕組み」を考えるようにしたほうがよいですね。何か情報提供をする際も、すでにメディア側が周辺情報を知ってくれている状態を作っておくことがポイントです。

−テレビで取り上げられるとかは、本当に地道な活動の繰り返しで、ようやくテレビ局からお声がかかる、というケースは多いですよね。

最近は何でも簡単にネットでPRできると思われがちですが、広報の中でも多くの人がやりたがらない、地味で手離れの悪い活動をきっちり続けていくことが、結果的にテレビPRなどでの差が後々出てきます。ベンチャー企業にはせっかちな方が多いので、地味で目立たない活動をやらないで、偶然テレビで取り上げられることもありますが、大抵は最初のうちだけで継続的な露出にはつながらないケースが多いですね。メディア側もそういうの分かりますから。

地味な活動とは、定期的に記者やディレクターと連絡を取っていたり、日々の丁寧な対応など本当に細いところです。こうした活動を地道に継続している企業は、ここぞというときに、しっかりPRネタを露出できたりしていますよ。また、うまくいっている会社は、地道なPR活動と合わせて、戦略的に攻めと守りを意識して、出す情報と出さない情報とのバランスやタイミングを図るなどうまく行っています。

本を読んで勉強することも大切

−戦略的に攻め守りを意識するというのはかなり難しいところですね。こうした、戦略を考えるときに大事なことは何でしょうか?

マーケティングの話に入りますけど、USPといわれるUnique Selling Proposition、その企業や商材ならではの「売り」のポイントを考えることにつきます。何を「売り」にするのかというときに一言で言えるかどうか。

これは広告に表記される「キャッチコピー」とは異なります。カタチとしてにみえるわかりやすい特徴とも限りません。例えば、僕の場合はメガネをかけている、目が細いとか、黒い服を着ているなどいくつかの「特徴」はありますが、その「特徴」を売りにしたおかげで仕事が来るわけではありません。仕事が来るのは別の話で、単なる特徴とは違うその人ならでは「売り」のポイントを決めて、それをどう伝えるかが重要です。

例えば、ドミノピザでいうと30分以内にお届けできなかったら代金を返却する、これはドミノピザでなくてやろうと思えばできないわけじゃないですか。そば屋だって、お寿司屋さんでも似たようなサービスをやろうと思えばできるけど、あえてこのメッセージを強く出して顧客にコミット(約束)したところがドミノピザのUSPということになります。

あえて「売り」として言っていますし、本気(約束)なんです。これを言った瞬間に「本格的な高級ピザのみ店」という可能性はなくなる。そういう商品を宅配してほしい顧客には逆効果になるわけです。30分以内でお届けしなかったら全額返金しますというUSPを出したことで、「手軽に早く宅配してもらえるピザ」というポジションが獲得できます。

広報はメッセージを出すだけではないので、何を「出さない」のかも考えないといけません。「こうではない」という要素は排除していかないといけないこともあります。ここが、度胸がいるんですよね。

−捨てる勇気はまさに、度胸がいるところですね。以外とUSPを徹底的に考え抜くっていう時間が作れてないのかもしれないですね。

あと、マーケティングを担当している方でUSPを知らない人はいないと思うんですよ。ただ、広報の方だと結構知らない人が多い。このあたりはもっと勉強してほしいですね。1500円ぐらいのマーケティング本の最初の方に書いてありますから。SWOT分析や3C分析の近くに書いてあることが多いですから、まずは普通のマーケティングのことを、一通り勉強してほしいです。

一通りの概要を理解したうえで、自社の広報・PRにも使えることは使えばいいし、使えないところは使わなければいい。「地球の歩き方」と同じでアメリカに行く前に一回は読んでおけよという程度のものです。そのうえで行きたいところに行くなり、寄り道したり、逆ルートで行ったりするなど、自分なりに応用が効きます。ただ、それをやらないで、交流会に出て闇雲にいろんな人に会ったりするなら、自社のUSPを1日かけて考え抜くといったことに時間を使うほうが、同じ時間を使うのであればよっぽどいいです。

社内コミュニケーションを大事に!

−これもよくあるのですが、「広報はいつも何やってるんだ?」などと、他の部署から言われ、四面楚歌状態になっているケースがあるのですが、片岡さんならどうアドバイスをしますか?

1つは、社内広報をしっかりやりましょうという話です。社内での広報をできない人が、社外への広報をできるわけがないですから。また、社内広報を単なる作業と考えないほうがよいです。本当はすごく難しいです。

あれもこれも報告しなくちゃいけないとなってただ忙しくしても、社内からは「何をやっているのだろう?」評価されない。何が一番分かりやすいかというとやっぱり露出の結果ですよね。でも、結果だけ見せるというのも本当は本質的ではありません。中長期計画みたいなものをちゃんと準備して、それに沿って広報活動の施策を計画し、実行し、検証し、結果がどうだったか、目標に対して進捗がどのくらいだったかを分かりやすく可視化して共有することが大切です。事業部や営業部は日常的にこういうことはやっています。年間目標、月間達成ということを広報はあまりやらず、長期計画の話になると急に会話が固まる人が多い。「臨機応変」であることと「長期戦略」を持つことは両立できますから。

広報部、広報担当として、1年間の活動を通じて、認知度をこれぐらいに上げる、ブランドの信頼性を安定させる、ネガティブな印象を減らす、既存顧客からのロイヤリティを上げる、オウンドメディアのクリエイティビティを上げるなどの目的を、できるだけ具体的に設定し、今それがどうなっているのかを周囲が分かるように可視化すればいいのです。

指標は件数かもしれませんし、信頼度調査、問い合わせ件数、など会社全体の目標としっかりリンクするものであればいいと思います。他部署から「広報部はがんばっているな」という声に必ずつながります。

広報担当者に必要なのは“胆力”と“クリエイティビティ”

−最後に、広報担当者に応援メッセージをお願いします!

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広報担当者には、体力、知力はもちろんですが、何よりも「胆力」が大事だと考えています。メディア対応を行う上では、時に強い意志を持って自分の果たすべき役割を演じないといけないこともあります。広報担当者は究極的には人と人とのつながりをサポートする仕事なので、常に人と向き合うための「胆力」を誠心誠意鍛えてほしいですね。

2つ目は、「クリエイティビティ」についてです。「パブリシティ、広報」と「クリエイティブ」というのは、長い間近くて遠い能力だったのです。ところが自社メディアの活用がこれだけ注目されてきますと、広報担当者にも表現力の強化としてのクリエイティビティが重要になります。単に「アート、芸術性」という意味ではなく、「創造性」という意味です。コンピュータやAIに置き換えることのできない人間(あるいは、その人自身)の視点で、差別化や選択と集中、USPの打ち出しを行っていかないといけません。これからの広報担当者にはぜひ、「胆力」「クリエイティビティ」を備えた「抜目のない」PRパーソンになってほしいですね。

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