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メディアの大転換期だからこそ、見えてくる『PRパーソンの本質』/週刊ダイヤモンド 原 英次郎 編集委員

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高橋ちさ

高橋ちさ

神奈川県出身。ラジオ局お手伝い⇒広告代理店(横浜駅スタジオDJ)を経て、現在は都内PR会社でIT企業、コンサル会社など、BtoB企業の広報を全力でバックアップ中。セミナー勉強会、飲み会の企画立てるの大好き。何かあればご相談下さい。
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原 英次郎(はら・えいじろう)氏 プロフィール
週刊ダイヤモンド編集委員。1956年生まれ、佐賀県出身。慶応義塾大学経済学部卒。
1981年東洋経済新報社に入社。金融、証券、エレクトロニクスなどを担当。95年『月刊金融ビジネス』、2003年4月『東洋経済オンライン』、04年4月『会社四季報』、05年4月『週刊東洋経済』の各編集長などを経て、06年同社を退社。
2010年3月ダイヤモンド・オンライン客員論説委員、11年10月ダイヤモンド・オンライン編集長。2015年1月より現職。

ネットが普及して、SNSなどが進化したことで、企業トップや広報が、直接メディアに情報を発信できる機会が増えてきています。『広報・PR』に対して、メディアのキーパーソンは何を思っているのか?“いいところ”も、“悪いところも”もお聞きします。

『キーパーソンに聞く』第7回は、週刊ダイヤモンド編集委員の原 英次郎氏の登場です。

「STAP細胞騒動」から見えてくる“PRパーソン”の価値

-時代の変化と共に、PRパーソンに求められることが変わってきていると感じています。

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原 編集委員(以下、原) - ネットというツールの登場によって、我々からすると「読者」、企業でいうと「お客さん」に対して、既存のメディアを介さず企業が直接働きかける手段を持ってしまった。

 そのため情報の仲介(PRパーソン)をしていた層というのは、影響を受けるというか、それ自体が必要かどうかまで問われるようになって来ていると思います。我々既存のメディアも同様で、今まではダイヤモンド社ということで、取材もしやすくて、普通の人ではなかなか知りえない情報を読者に届けることができていました。

 今は、個人までが直接情報を発信することが出来る。それゆえに情報の流通の在り方が大きく変わり、情報が洪水のように溢れていて、質の面では、ものすごく幅がある。どの情報が信頼できるかが、分かりにくくなってきている。我々も、企業の発する情報をすべて判断できるわけではありません。

 PRパーソンに対しては、そういう情報の質を判断する“何か”を与えてくれないかなと感じるし、そういった機能が求められると思います。

 例えば、STAP細胞騒動でわかるように、これが本当に革新的な技術であるとか、ないとか判断できる専門家が、常に編集部内にいるわけではありません。ですから、専門性のある情報の整理をして、判断の基準となる情報・ヒントも提供してくれないかなと。それはマスコミの仕事でしょ、と言われそうですが、それだけ情報過多で、正直言ってメディア側にも判断能力が不足している。

 ですから、PRもその存在価値とは何か、旧来のままの機能でいいのか問われているのではないでしょうか。

変わりゆくメディア業界、『出版社』という組織がなくなる?

-新興メディアがぞくぞくと誕生する中、メディア業界にとっても転換期を迎えていると感じます

原 - ちょうど我々メディアにとっても機能分解→再編成の時期だと思っています。

 少し前は今よりも、既存のメディアにはブランド力がありました。そのメディア企業が出版社なら、「エディター」、「デザイナー」、「カメラマン」、「ライター」を雇って、雑誌というパッケージを作っていたのだけれど、ネットの時代は個人で情報を発信出来て、いろんな人とつながることが出来る。

 個人で情報を発信し、ブロガーとしてものすごく人を集められるとしたら、そこに「メディア」のブランドは必要がない、その人個人がブランドになるから。そうすると、我々メディアが持っている機能を要素ごとに分解すると、「取材する」、「書く」、「編集する」、「デザインする」、「営業する」、「流通させる」となるわけですが、そのうちいくつかは必要なくなってくるわけです。

 今までは、雑誌や書籍という形で情報を流通させようと思うと、取次ぎ(書籍・雑誌の卸)や書店に対する出版社のブランド・信頼がある程度必要でしたが、今はもうそれぞれの機能をバラしても、情報を流通させることが出来る時代になってきている。

 以前のように、有名な出版社だから、良い書き手が良い記事を書いてくれるとか、伝統のある出版社だから、取材がしやすいとか、そういったことは切り崩されてきていて、自信のある筆者が、自分で書きたいことを、出版社を通さずに、自身のブログや、SNS、メルマガを利用して発信したいとなったら、そうできる時代になっているわけです。

 ブログを作るとか、メルマガを発信するとか、それだけを専門にやっている会社もあるので、一つ一つの要素に分解されている機能を、必要な部分だけ、必要な時に使えばいいのであって、永続的な『出版社』という組織である必要がなくなるかもしれないし、いまバラバラになりつつある個々の要素を、もう一度組み合わせて、プロジェクトごとの『出版社』という形で新しくやっていく場合もあるだろうし、TV、新聞、雑誌を問わず新旧両者のせめぎ合いが起こっていると感じます。いろいろトライが行われていますが、まだ答えは出ていなくて、試行錯誤している状態だと思います。

転換期に変わっていくもの、普遍的なもの

-取材や記事にする事象や出来事を、どういったところで判断されていますか?

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原 - 毎日リリースが数多く送られてきます。我々のメディアの性格からいって、主に事業戦略に関わるリリースなら読んで、取材に入る場合もありますが、基本的には、リリースから直接、記事にすることありませんね。WEBメディアの中には、リリースを元に記事を書いて、情報として載せるところもあるけど、どちらが良いかは、我々が決めることではなく、出版社やメディアによってフォーカスする部分が違うので、最後は読者が決める問題だと思います。

 少しベテランになってくると人脈も出来てくるので、例えば、金融政策とか何かの専門分野について記事を書こうと思ったら、この政策どう思う?って、その分野に詳しい知人に取材をかけたり、意見を聞いたりして記事にする事があります。そこは、やっぱり人ですね。

 情報の流通のあり方については大変化の波が押し寄せているので、表現の手法やテクノロジーなど変わる部分もあれば、メディアとして根本的なところでは変わらない部分もあると思います。例えば、メディアとしてのポジション=基本的に企業も含む権力に対しては批判的であること、できるだけ1次情報に当たり事実を確認する努力をすること、結局は、仲間同士、取材先など人と人との信頼関係をどう構築するか・・・などです。

突き詰めていくと、本質が見えて来る

-原さんが求めるPRパーソンはどんな存在ですか?

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原 - 広報やPRパーソンが情報を発信する場合に、心底本当に良いと思っていれば、自信を持って説明出来る。我々メディアからすると、良い所だけでなく、駄目なところも話してもらえると、信頼性があがると思うけど。企業に入っているとなかなかそうもいかないと思います。重要なのは、正しい情報を伝えること、読者を裏切らないこと、正しく自分の姿を認識してもらうこと、そこが最も大切ですし、自分の実力以上に自らをよく見せることはできません。

 その場を取り繕って、うまく立ち回ろうとすると、我々の様なメディアの人間にぐりぐりぐり~とそこを突かれちゃう。基本的にメディアの人間は、どうやって問題点を暴き出そうか考えているからね (笑)。 自分の姿が正しく伝わっているとすれば、御の字と考えた方がいいでしょう。

 それから、PRパーソンというより広報ですが、YESでもNOでもよいので、レスポンスが速いと、後の対応が考えらえるので助かりますね。

 いま、我々メディアも答えのない中で試行錯誤しています。PRパーソンも自分たちがどういう要素を持っているかを因数分解して考えるといいかもしれません。WEBがあって、SNSがあって、新聞があって、雑誌があって・・・。いろいろある中で、自分たちはどの要素・機能でなりたっているのか、それを突き詰めていくと、自分たちの本質が見えて来る。どこをどうやって強くし、どう再編成していくかを考えることが必要だと思います。

 
-私の中では、いつもスマートでクールなイメージのある原さんですが、今回は新たな一面に触れることができました。有難う御座いました!

(撮影:野村裕)

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