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PRパーソンは正直に自信を持って情報を発信し続けるべき/DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー岩佐編集長

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高橋ちさ

高橋ちさ

神奈川県出身。ラジオ局お手伝い⇒広告代理店(横浜駅スタジオDJ)を経て、現在は都内PR会社でIT企業、コンサル会社など、BtoB企業の広報を全力でバックアップ中。セミナー勉強会、飲み会の企画立てるの大好き。何かあればご相談下さい。
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岩佐文夫 編集長 プロフィール
1964年大阪府生まれ。1986年自由学園最高学部卒業し、同年、財団法人日本生産性本部入職(出版部勤務)。2000年ダイヤモンド社入社、DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー編集部。2004年書籍編集局に異動し書籍編集者に。2012年より現職。

DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー
2000年10月より月刊誌として新創刊。戦略から実務まで、ビジネスリーダーが知りたい情報を掲載。毎号オピニオン・リーダーから発信される鋭い提言・解説が好評。米ハーバード・ビジネス・レビュー誌と全面提携。中心読者層は30代~50代の企業マネジャークラス。

広報を介さず、企業のトップと直接やり取りすることも

-事業会社の広報とPR会社に対する印象って違いますか?あまりPR会社の方とはお付き合いがないというお話をお聞きしましたが…

そうですね(笑)。 実は、あまりPR会社の方とご一緒することは少ないです。企業のトップの方にインタビューするときは、広報の方が窓口になってくれることもありますが、結構トップの方と直接やり取りすることもあります。

-広報の方やPR会社からの売り込みはありませんか?

それは、すごく沢山あります!(笑) 広報の方からの売り込みはものすごく多いです。ただ、うちの編集部でも『どの企業のトップが、どんなお話をされているのか』常にウォッチしていますので、広報の方にお話を頂く時点で、すでに把握している情報も多いです。また、うちの雑誌は日本のオリジナルコンテンツを掲載するスペースが限られているので、毎号1~2人くらいしか、インタビュー記事に出来ないのが現状です。非常にたくさんお話をいただけて嬉しいのですが、お応えできないので申し訳ない気持ちです…

企業のトップと広報担当者の雰囲気やコミュニケーションの取り方は似ている

-企業の広報とPR会社、それぞれどんなイメージがありますか?

うーん、これは、あの変な話かもしれないですが、企業のトップと、その企業の広報の方の雰囲気やコミュニケーションの取り方ってすごく似ているように感じます。なので、トップインタビューの前に、広報の方とお会いして打ち合わせすると、その後お会いするトップの方と大体似ているなぁ、と感じます。たとえば、要点だけ抑えて細かいところは、フレキシブルに対応する広報の人だと、トップの方もそういった感じだったり。ビジョンを大切にして話される広報だと、トップもやはりそうだったり。

それは、非常に面白いなぁと感じます。PR会社の人にそういうことを感じることはありません。PR会社の方は、もっと企業を第3者視点でみていらっしゃる、というのがあって、僕たちメディアは、そういう意味ではとても助かっています。企業のエージェントというのもありつつ、べったり企業側の考えになってしまうと広報の方と同じになってしまいますよね。でも、こちら側(メディア側)に寄り添ってくれるPRの方もいる。メディア側に立って、話を持ってきてくれると、僕たちにとっては頼りになるなと感じます。

-SNSなど、テクノロジーの変化によって、メディアの領域が広がっていますが、どのように感じていますか?

dhbr_iwasa1SNSは、マスメディアじゃないと思います。セグメントされた”ミニコミ”で、すごくセグメントされているパーソナルメディアのイメージです。そうなると、ユーザーの幅がすごく狭いのがわかります。でも、いまはそういうメディアの影響が大きくなっています。

DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビューは、約3万部弱ほど出ていますけど、もうこれはマスメディアじゃないですよね。多種多様なたくさんの人にリーチするメディアじゃなくて、セグメントされた特定の人たちに届けるのが雑誌です。

広報の人は、自社のことやサービスをより広く知ってもらいたいと考えていると思うので、量の概念で来てもらうと、こちらとしてはあまり力になれないと感じます。それよりも、DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビューの読者に”ドンピシャリ”と、届けたいと思ってくれると、量より質の問題になるので、数は少ないけど、リーチするターゲットにすごく合うし、製品の消費者層にぴったりだと感じるので、僕らも共感しやすいです。

-メディアと一緒になってクリエイティブに参加してくれるような存在ですね

こういう雑誌で、こういう読者層に届けたいから、このメディアで情報を発信したいと考えてくれる人ですね。メディアの先にいる読者に何を届けたいというところまで、一緒に議論できたらいいなと思います。

DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビューをよく知ってほしいというより、読者がどういう人なのかを知ってほしい、そこを理解して、僕たち編集の想いをリスペクトしてもらえると、本当にうれしいです。雑誌に掲載しようと思うときには、こういう形で掲載した方が、読者も喜ぶし、出ていただく方にとっても一番いい出方だと、僕らはそういう気持ちで企画しています。

なので、そこを理解してくれて、信頼してほしいと思います。こういう載せ方はしたくない、こういった掲載のされ方は前例がない、というのではなく、新しい形や出し方をしてみましょう、と一緒に熱意をもって考えてくれるPRパーソンだと嬉しいです。

メディアとPRパーソンの想いが、本質的なところで重ならないとクリエイティブとして良いものが創れない。たとえば先日、ある大企業の経営者にインタビューさせていただきました。この方は、いろんなメディアに登場されているのですが、だいたい社内のどこでお写真を取るか、固定の場所が決まっているようでした。

会社にお邪魔して、あぁいつもこの場所で写真撮影されているんだなぁと、すぐに分かりましたが、僕たちは今までと違う場所で、違うイメージで写真を撮りたいと思いました。それで、20階の窓を開けて、窓の外が見えるのをバックに撮影したいとお願いしました。今まで前例のないことなので、広報の方も相当リスクがあったと思いますが、でも、その広報の方は、一緒になって社長にお願いをしてくれました。

結果的に、今まで一度もこんな場所で写真を撮ったことがない場所でもOKして下さり、とても良い仕上がりになりました。社長も、とても気に入ってくれて、社長室に飾らせて欲しいと、言っていただきました。こういう新しいことをやる時に、一緒になってリスクをとってでも、新しいことをやってみよう!と冷静に判断してくれる方だと、本物の信頼関係が結べると思います。

メディアを通じて社員にメッセージを伝えるのは効果的

-日本企業は広報・PRが、あまり上手ではないという印象がありますが、企業のトップの方の意識はいかがでしょうか?

DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビューに登場される方は、グローバル企業のトップが多いので、みなさん総じてメディアにどう対応するか、接し方などとても紳士的です。一人例をあげるとしたら、資生堂の魚谷さんですね。魚谷さんは、海外でもプレゼンテーションのレッスンを受けてこられたので、伝え方や、自分をどういう風に見せたらいいか、よく心得ていらっしゃる。ご本人が、計算しているかどうか分かりませんが、せっかく取材に来てくれたのだから、楽しんでもらおうというサービス精神を非常に感じます。言葉の使い方や、接し方が非常に素晴らしいし、本人もサービス精神がある方なので、取材したメディアの人は、きっと魚谷さんのファンになる、好きになると思います。

-企業のトップが率先してファンを増やすことも、広報・PRの重要な仕事ですね

そうですね。あとは、まぁ服装などは、きちんとするのもいいし、自分らしさを伝えてもいいし、その企業の何を見せたいかにもよりますからね。例えば、いつもはジーンズにTシャツでラフな格好のIT企業社長が、メディア対応のときには、きちんとスーツで対応するとか、その逆で普段どおりの格好で、自然体で対応するとか、その企業の広報・PRの戦略的なところもあるのではないでしょうか。

それと、メディアを通して、社員にメッセージを伝えたいという場合もあります。社内のファンを増やすのです。トップの想いを社員に伝えるために、どんどんメディアを使ってもらって構わないと思っています。うちの社長はこういうことを考えているのか、というのをあえて外のメディアを使ってメッセージ発信するというのは効果的だし、ある意味、広報・PRとして正しいメディアの使い方だと感じます。

正直者がバカをみない時代

-メディアの多様化に伴い、情報発信の方法も変化してきたと感じますか?

LINEの田端さんもおっしゃっていましたが、コミュニケーションの主導権を発信側が握れない状態になっています。宣伝もまったくきかないし、それは広報・PRも一緒だと感じています。

一昔前と、情報を伝える構図が変わってきていて、受け取り側にどう受け取られるかわからないけど、伝えていくしかない。そうすると、一生懸命伝えても伝わらないこともありますが、良い話だなと思うと、思わぬところで広がる場合もあります。うちの雑誌も良い内容だなと思う記事だと、いつの間にかネットで広がっていることがあります。

そういった経験を通じて、思うところは、やっぱり良いと思えることを続けることなのかなと。今は、さまざまな情報があふれていて、テクノロジーも進化しているので、良いことも、悪いことも伝わってしまいます。もう小手先のテクニックで自社の良いところだけを広げようとしても、コントロールできない時代になっています。

そうなると、どう伝えるかよりも、『良いことをしている』という自信を持って、情報発信を続けていくことが必要なのではないでしょうか。そうすれば、短期的には思うように行かないかもしれないけど、長期的には必ずうまくいきます。要領がわるくても、正直者はバカをみない。そういう時代です。広告量や情報発信の量などで伝わる時代から、もっと本質的なところで、きちんと伝わるようになってきたと感じます。

-最後にこれからの広報・PRに一言いただけないでしょうか。

dhbr_iwasa2以前は、広報・PRに限らず、広告でもそうですが、自社ってこんなにすごいよって情報を出すパターンが多かった。でもそれって、自分たちで発信しても少し胡散臭い。第3者が、これいいですよと言ってくれたほうが、より価値があると思います。

それと、自分たちで情報を広めるだけじゃなくて、自分たちについて、周りが評価してくれたことをどうやってより多くの人に広めていくのか、そういうアドバイスをしてくれるPRパーソンがいるといいのかなぁと思います。

-穏やかで紳士的な岩佐編集長のお話は、広報・PRの話にとどまらず、これからのメディアのあり方からコミュニケーションのあり方まで、大変参考になるお話でした。岩佐さん、ありがとうございました!

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