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PRパーソンは“事業の鎖国化”を防ぐ生命線!/デサント 加勇田雄介さん

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大堀航

大堀航

PR Table 代表取締役社長。大手PR会社を経て、オンライン英会話サービスを提供する会社でPR・マーケティングを担当。2014年12月に(株)PR Tableを創業。
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ソーシャルメディア、オウンドメディア、など様々な新しい手法に振り回されそうになってしまいがち。今回は、手法にとらわれることなく本質的な課題を追求し、自ら課題解決のために、とにかく動いている株式会社デサントの加勇田さんに、デサントのコミュニケーション活動やPRのことについてお聞きしました。

加勇田雄介さんのプロフィール
ソーシャルメディアマーケティングに強みをもつ、アライドアーキテクツ、トライバルメディアハウスを経て、現在は(株)デサントで、「PCスーツ」や「燃え尽きランナー」等で、PRを基軸に、領域にとらわれない課題解決・ビジネスモデル構築に奔走する。

株式会社デサント
http://www.descente.co.jp/

全体最適で製品をサービス化するコミュニケーション活動

-加勇田さんはマーケティングで有名な会社をご経験されていますが、その経験はデサントのマーケティングをするうえで活きていますか?
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そうですね。異なる3社で、様々なことを学ばせていただきましたが、特に前職で「本当に解決しなければいけないことを見極めなければ、部分最適の組み合わせになり、それは全体最適にはならない」ことを学ばせて頂いたのは、非常に大きな経験になっています。

「全体最適」というとイメージしづらいかもしれませんが、“本当のところ自分達が何を売っているのか?” を定義することで、私は「製品のサービス化」と言っています。

当社では「SKINS」というコンプレッションウェア(編集部注:主にランナーが疲労の軽減のために履いている黒いタイツ)ブランドを取り扱っていますが、私たちはコンプレッションウェアという商品を取り扱っているのではなく、課題を解決するサービスを提供していると考えています。

例えば、あまりの疲労のために帰って寝るだけの生活になってしまっている40%のビジネスマンに、デスクワークをしながらリカバリーできる「PCスーツ」というサービスを提供したり、ランニングブームの裏側で、がんばりすぎて半年以内に挫折してしまう、約70%の「燃え尽きランナー」のための解決策を提示するといったサービスを提供しています。

コンプレッションウェアは、そのサービスを実現する過程で生まれたツールと捉えてコミュニケーション活動をしています

社内に「池上彰」が必要!?

-なるほど。その事例はとても分かりやすいですね。でも、こうしたアイデアやサービスを実際社内の様々な部署と意思統一を図って、推進するって結構難しくないですか?

そうですね、結構難しいと思います。その原因の1つは、社内に「池上彰」がいないことだと思っています。

-あの、池上彰先生ですか!?

そうです(笑) たとえばですが、「アドラー心理学入門」を「嫌われる勇気」と翻訳せずに、頑固にアドラー心理学は重要だ!と叫び続ける。「会計学入門」を「さおだけ屋はなぜ潰れないのか」と翻訳せずに、頑固に会計学の重要性を叫び続ける。私はそこに課題があると思っています。

“正論こそサービス精神をもって”が重要で、議会で話されている難しい話を、サービス精神をもって柔らかく解説するのが池上彰さんで、その役割を担う人が社内にいることが大事だな思っています。

-加勇田さんはデサントの池上彰さんということですね!(笑)

同列に並べるのもおこがましいですが、そうなりますかね(笑)翻訳する際のフレームワークとして、現在、社内では「FNS」をキーワードとして掲げています。

決して、レインボーブリッジを渡った先にあるTV局に積極的にキャラバンしよう!という意味ではないです(笑)

Fiction − Non Fiction − Storeの頭文字をとった、私が考えた造語で、生活者にとってFictionなトピックを見つけ出し、それに対して象徴的なNon Fiction(≒Fact)を提示し、そのFactをもって、新たな店頭を獲得し、その店頭も新たなFactとして提示するという考え方です。

-FNS、なんかかっこいいですね! 具体的にはどんなことですか?

たとえば、「PCスーツ」の事例では、もとから「SKINS」という商品にはデスクワークでの負担軽減につながる機能はあり、実際ブランドサイトにもそれは謳っていました。

しかし、そうは言われてもイメージができない、というのが世の中の大半で、つまりFictionなわけです。そこで、コンプレッションウェア、RY400という商品名を、「PCスーツ」と翻訳し、さらに、よりリアリティがもてるよう、リクルートライフスタイルが、エンジニア等への福利厚生施策として導入したというFact(Non Fiction)を提示し、さらに、そのFactを、ヨドバシカメラのバイヤーが店頭をイメージしやすいFactとして活用し、店頭(Store)を獲得していきました。

「分かっちゃいるけどさー」を見つけ出す

-すごい分かりやすい!「FNS」というフレームはPRパーソンはかなり活用できそうですね。加勇田さんがこうした企画を考える際のポイントはずはり何ですか?

世の中の「分かっちゃいるけどさー」を見つけ出し、嫌われる人を決めることで、ドミノ倒しのような“自走する”構造をつくることです。

PCスーツの例では、デスクワークの疲労解消には定期的な運動が効果的なのは、みんな頭では理解しているんです。分かっちゃいるんです。でも、あまりの疲労のために、それができないビジネスマンが40%を占めています。

一方で、60%のビジネスマンは、デスクワーク対策としての定期的な運動はできていて、「PCスーツ」は必要ないわけです。実際に「PCスーツ」が各種メディアで取り上げられた際のソーシャルメディア上の反応のなかには、「甘やかしの世の中だ!」というものもありました。

ただ、60%の方々には嫌わても構わないと腹を括っていたので、問題はなかったです。むしろ、マスで「PCスーツ」というキーワードを自走させていく過程では、こういったカウンターの意見がでてくるのは歓迎すべきと思って見てました。

メディアで掲載されることの重み

-加勇田さんのような方が事業会社内にいると、エージェンシーのPRパーソンはもはや必要なさそうですね(笑)
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いえいえ、そんなこともないですよ(笑) ただ、正直、「◯◯新聞」とはリレーションがあるので、掲載できます! と軽く言う方は、不信感を覚えます。

メディアで取り上げられるということは、同時に重い十字架を背負うことでもあると個人的には思っています。

昔、日本経済新聞の「ヒットのひみつ」で取り上げたいと問い合わせがきたとき、嬉しい半面、不安もありました。「ヒットのひみつ」で紹介する以上、鳴かず飛ばずで終わってしまった場合のリスクをメディア側は負っていて、それでも紹介したいと言って下さる期待に応えられるのかなと。掲載されて、時間が経った今でも、掲載されたことに対するプレッシャーを感じるときがあります。こうした“重み”を理解して、二人三脚でPRに取り組むことができるPRエージェンシーの方と是非お仕事をできればと思っています。

PRパーソンは事業とパブリックの接点を創出する役割

-では、最後にこれからのPRパーソンの役割はどう変化していくと思いますか?

PRパーソンは、“事業の鎖国化”を防ぐうえでの生命線となる、キーパーソンだと思っています。

たとえば、純スポーツメーカーで働く人の場合、BtoEという新たな市場が勃興しつつあることや、政府の号令のもとに「健康経営」が注目されつつあることなど、外側にどんな世界があるか気づきにくい人もいる。そうすると、“今の”世の中と事業が分断され、社会との接点が少ない鎖国化されたブランドになりかねない。

そこに対して、メディアをはじめとした、様々なパブリックとの接点をもったPRパーソンが、PR独自の視点で「分かっちゃいるけどさー」を見つけ出し、人、モノ、情報を編んで集めることで、「PCスーツ」のように、世の中の新しい定義の芽にスポットライトを当てて、事業とパブリックとの新たな接点を創出する。そういった役割が、これからのPRパーソンには求められるのではないかなと思っています。

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