「働きがい」とは一体何なのか。「働きがいのある会社」とはどんな会社なのか。

「働きがい」に関する専門調査・研究機関であるGreat Place to Work® Institute Japan(GPTW)では、「働きがいのある会社」を「従業員が勤務する会社や経営者・管理者を信頼し、自分の仕事に誇りを持ち、一緒に働いている人たちと連帯感が持てる場所」と定義しています。

2019年7月4日、「働きがいのある会社」ランキングに常連として名を連ねる、アドビ システムズ 株式会社、ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ株式会社、株式会社コンカー、freee株式会社、GCストーリー株式会社の計5社、6名にお集まりいただきました。

よりよい働き方を探るべく、日頃から親交を深めながら議論し合っているという5社。「働きがいがある」と社内外に支持される秘訣は何なのか。会社と社員が関係構築をするうえでどんなことを実践しているのか。座談会形式でざっくばらんにお話いただきます。


▼ゲスト
千葉 修司さん(アドビ システムズ株式会社/エンプロイーエクスペリエンス シニアマネージャー
谷風 公一さん(ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ株式会社/アソシエイト ディレクター)
足立 繭子さん(株式会社コンカー/管理部 業務推進担当)
田中 由香さん(株式会社コンカー/チーフカルチャーオフィサー)
辻本 祐佳さん(freee株式会社/経営管理本部 カルチャー推進部部長)
大嶋 かなえさん(GCストーリー株式会社/事業推進部)


「働きがいのある会社」受賞5社で開催する「持ち回り勉強会」とは

—— 本日お集まりいただいた5社では、「働きがい」について互いに学び合うという目的のもと、持ち回りで勉強会を開催されているそうですね。きっかけは何だったのでしょうか。

▲各社が集まって学び合うコミュニケーションの場(写真提供:GCストーリー)

アドビ システムズ株式会社・千葉 修司(以下、千葉)さん:きっかけは「毎年ランクインしている会社はどんな取り組みをしているんだろう?」「どんな秘訣があるんだろう?」という純粋な疑問でした。各社のオフィスを訪問して施策について学び、高め合っていこうと、2018年に集まったのが勉強会のスタートですね。

「カルチャーやその根幹が伝われば何でもいい」というやり方で開催したのですが、その自由度の高さから感じられたものが非常に面白かったんです。

ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ株式会社・谷風 公一(以下、谷風)さん:私は自社のオフィスづくりに携わったので、「オフィスと働く人の関係」という切り口で各社を訪問できたことが非常に興味深かったですね。

働く人たちが「いかに働きやすいか」「働きがいを持って働けるか」ということを考えた時、オフィスが果たす役割は大きいはずだと日頃から感じていて。やはりどの会社も、素敵なオフィスばかりでした。

コンカー・田中 由香(以下、田中)さん:印象的だったのは、どの会社も取り組みに堅苦しさがなくて、「なるべく楽しみたい」という雰囲気があったことでした。社内にバーがあったり、マネージャーのことを「ジャーマネ」と呼んでいたり、勤続祝いが3Dプリンターでつくる自分フィギュアだったり。社員の皆さんも面白がりながら取り組めるんじゃないかな、というのは各社に共通して感じました。

谷風:「いいからとにかくやれ」という強制的なものだとうまくいかない部分もある。遊び心をいかに仕掛けられるかも、「働きがい」の一つのポイントですよね。

GCストーリー・大嶋かなえ(以下、大嶋)さん:勉強会を通じて、それぞれ“らしさ”を必ず持っているな、と感じました。施策やオフィス、おもてなしの仕方に、その会社のカルチャーが表れているんですよね。

freee・辻本 祐佳(以下、辻本)さん:他社の施策を学びながら、自社がやっていることを再確認できたことがよかったです。例えば、“オープンなオフィス”というのは5社共通して持っている要素なんですが、どういう形でオープンなのか、どういう流れでその施策を始めることになったのかはそれぞれストーリーが異なっていて、興味深いんですよ。

田中:正直、ジェラシーを感じる場面もたくさんありましたが(笑)、それ以上に勉強になることが多かったですね。どの会社も、経営層から一般社員に至るまで、全社員が会社のことを“自分事”として捉えている感じがしました。

千葉:「各社のカルチャーやそれを形成する仕掛けや考え方など、何かを参加者側が感じ取れれば」と、敢えてゆるいフォーマットで開催したのですが、不思議と同じ取り組みは一つもなかった。勉強会における私のキーラーニングは、「施策ひとつだけを取って真似しても意味がない」ということでした。さまざまな施策がうまくつながり合って、その企業カルチャーをなしているんだな、と感じたんです。一方で、「働きがい」をしっかり狙ってつくることができている点では共通していました。

ユニークなオフィスづくりから、議論、雑談、コミュニケーションが生まれる


▲ケンブリッジ:谷風さん

—— ケンブリッジの谷風さんがおっしゃっていた、「働きがいのあるオフィスづくり」について詳しく伺えますでしょうか。

谷風:ケンブリッジはファシリテーション型変革コンサルティングを売り物にしている会社です。「議論で決め切る」のが仕事のコアのひとつですから「議論に最適化されたオフィス」なら働きがいをもっと高められると考えました。

千葉:議論に最適化されたオフィスとは、具体的にどんなところに現れているんですか?

谷風:まず、議論に必要なファシリティが至る所にあります。そして、それをただの「ハコ」に終わらせないよう、様々な工夫をしています。

ひとつ例をあげると、コンサルタントは基本的に客先常駐なので、彼らがオフィスに戻りたくなる仕掛けが必要です。具体的には、社員に限らず様々な人がフラリと立ち寄って交流できるようセキュリティの考え方を見直したり、夕方以降にお酒を飲めるようなバースペースを用意したりしています。

千葉:壁面やデスクなど、あらゆるところが書けるようになっているのがすごいですね。

▲ブレストなどの場で活躍するメモができるデスク(写真提供:ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ)

谷風:書きながら議論するのが我々のワークスタイルなので、「ファシリテーターの殿堂」というコンセプトのもと、徹底的にこだわりました。人数や進め方によって議論に最適な空間がありますから社員が自分たちで自由にレイアウトできるよう、あえてガチガチには作り込みませんでした。その結果、社員は皆、移転初日からオフィスを使いこなしていました。

存分に議論して決め切ることができるし、様々な人とも交流できる場所であること。それらが社員の働きがいを高めていると考えます。もちろん、他にも多くの仕組み・仕掛けがあります。

—— オフィスを訪れた方たちからの反応はいかがですか?

谷風:「ケンブリッジがどんな会社なのかよくわかった」と言っていただけます。コンサルティングはわかりづらい仕事です。そのため、社内に事例パネルやプロジェクトの写真、行動規範のサインなどを展示したり、お客様に実際の議論の様子を見てもらったりしています。また社員には、積極的にお客様に話しかけるよう呼びかけています。例えば、自分が関わって成功したプロジェクトの内容をお客様に説明すれば、お客様の理解も進むし、社員も誇らしいですよね。こういうのも間接的に社員の働きがいにつながっています。

—— なるほど、オフィスが会社の自己紹介も兼ねているんですね。コンカーも、最近オフィスを移転されましたね。


▲コンカー:足立さん

コンカー・足立 繭子(以下、足立)さん: はい、2018年3月に移転しました。こだわったのは「ワンフロアに200人全員が集って仕事ができる環境をつくる」ということでした。

コンカーでは、コミュニケーションを活性化させて信頼感を培っていくことを重要視しているんです。実際におしゃべりをするわけではないけれど、社員同士の気配をいつでも感じられるとか、それぞれがどんな仕事をしているかがオフィスを回遊すればなんとなくわかるとか……。

そのために、ガラス張りの部屋をたくさんつくったり、一般的な会議室だけではなく、ちょっと座って話せるようなミーティングスペースやカフェ風スペースを設けたりするなど、変化をつけました。

▲対面による緊張を感じさせない会議スペース(写真提供:コンカー)

千葉:オフィスにお邪魔した際、1on1ができる会議室が印象的でした。対面ではなく斜めに目線を合わせて話せる仕様で、きっと会話が弾むだろうな、と。

——新しいオフィスのデザインも踏まえて、コンカーが大事にする「働きがい」について改めてお聞かせいただけますか?

足立「働きがい」という言葉がコンカーの中で生まれたのは、2013年の合宿です。将来のあるべき姿として「国内のIT業界で働きがいのある会社ナンバーワンになろう」という目標が掲げられ、そこからあらゆる施策が始まったんです。

働きがいを高めるために、「志と大義の一体感」「視座の高さと裁量の大きさ」そして「成長の実感」という3つのキードライバー(主要な推進要因)を社長が打ち出しました。これを指針としながらも、社員一人ひとりが自分事としてオーナーシップを持ち、充実感を持って施策に取り組めるように、少しずつ会社も変化していきました。

大嶋:個人的にはクロスランチの取り組みがすごく素敵だなと思いました。


▲コンカー:田中さん

田中:社内交流を促す試みとして、上長と部下の昼食経費を会社が負担する「コミュニケーション・ランチ」という制度があるんですが、これは社員にも好評です。

「他部門の管理職ともコミュニケーションがしたい」という要望に応えて、他部門の管理職と一般社員で行われるランチも最近始まりました。タテ・ヨコ・ナナメ、三方向のコミュニケーションをより活性化させられたら、と考えています。

谷風:クロスランチの制度は、すぐに弊社でも真似しました(笑)。

足立:「働きがいのある会社」をつくるための施策は次々に出てくるとしても、継続することこそが重要で、難しいんですよね。「どう仕組み化するか」という点において、会社の果たす役割は大きいと感じています。

時間軸を長く捉え、「未来を一緒に見ていける人」にこだわる

——マーケティングオートメーションを提供するアドビでは、社内外のエンゲージメントを高めることを目標に据えられているそうですね。


▲アドビ:千葉さん

千葉:私たちの取り組みを言語化して説明するのは、実はとても難しいのですが……。アドビが「エンゲージメント」という観点で特に大事にしてきたのは、「働いていて気持ちいい人と一緒に働ける組織をつくる」ことだと思っています。

社員が一緒に働く人は優秀であってほしいんですよね。ここで言う優秀さとは「自分はまだまだだ、という向上心があり」「顧客のことを真っ先に考えることができる」「この人から学びたい」と他者から思ってもらえる人。私たちはそれらの資質を「謙虚さ」と呼び大事にしてきました。

創業当初から、組織づくりに対してはこだわりの強い会社だったと聞いていますし、その後の採用プロセスや、入社後にどうやって既存社員が新しい人を支えていくかという意識づけに対しても重視してきました。

谷風「働きがいのある会社」ランキングにエントリーしたのが創業3年目ですよね。まだまだ組織も人も落ち着かない中だったと思うのですが、そもそもなぜエントリーしようと思ったのですか?

千葉:組織づくりにこだわって成長してきたアドビ(旧マルケト)が、「社員からどう評価されるのだろう」「経営が認識している状況と大きなギャップがないだろうか」、それを判別するための指標にしたかったんです。いわばリトマス試験紙のように、目に見えるようにしたいという思いがありましたね。

—— 結果として、初エントリーの2017年では1位に入賞されました。

千葉:信じてやってきたことに、少なくとも今のところは間違いはなかった、と確信できました。組織が大きくなるにつれ課題は常にありましたが、それを社員全員が知ることができる状態にして、話し合うためのオフサイトも設けました。課題を経営層が知り、社員間で共有する。さらに議論するという、働きがいを高めるための取り組みが実を結んだのではないでしょうか。

社員数が一桁の頃から、会社の未来図について時間軸を比較的に長めに考えられるような人たちが集まっていたんです。

組織にも成長と老いがあること、組織が大きくなると何が起こるかについて知ることは、マネジメントサイドとしてとても大事です。それらを知っている人間が最初に組織を固め、現場の最前線で働いてみたというところが大きかったかなと。

辻本:アドビさん、確か社内報にも力を入れていましたよね?

千葉:社内のいろいろな部署から有志が集まり、「社内報委員会」を運営しています。月に1回、20ページくらいの冊子をつくって社内ニュースを発信しているんです。紙という形にこだわったことで、社員が実家のお母さんの元へ送ったり、ファミリーデーに来たお子さんが、社内報に掲載された他の社員の顔を知っていたりと、いいコミュニケーションが育まれています。昨年からは、「採用のミスマッチをなくす」という目的で、社内報を社外へ向けて発信するという取り組みも始まっています。

▲社員やその家族にも評判がいいこだわりの社内報(写真提供:アドビシステムズ)

——とことん「ミスマッチのない採用」を模索し続けた結果、今のようないい状況にになっている、と。

千葉:採用には常にこだわり続けてきましたから。一緒に未来が見てみたいと思える人たちを随時巻き込みながら、その先を考えていくという取り組みを続けてきました。土台を固めた上に基盤を広げていく。振り返ると、その順番がきちんとワークしていたのかなと感じます。

カルチャーは定義されるものではない。醸成されていくものである


▲freee:辻本さん

——クラウド会計ソフトを提供されているfreeeですが、会社が急成長するなかで感じられてきた課題、それをどのように解決してきたかについてお聞かせください。

辻本:freeeは2012年の設立ですが、当初の数名から、今では従業員500名以上、という大きな規模での急成長を経験しました。そのなかで、組織カルチャーの「再定義」を行っています。

freeeは、設立初期からダイバーシティ(多様性)のある組織を大事にしていて、さまざまな人が働きやすく、高パフォーマンスを出せるような環境づくりを推進しています。ただ、人が増えるスピードが尋常ではないんですよ。その年の入社者数が、それまでの社員総数を上回る年もあったくらいで。もちろん、それまでに培ってきたfreeeのカルチャーはありますが、新しいメンバーによって持ち込まれる価値観も多い。日々の意思決定の場面で、「freeeとしてはどうするべきか?」…組織のコアとして持つべき価値観、組織の成長にあわせてアップデートしないと、ただ混乱していくばかりだという課題感がありました。

そこで、よりfreeeという組織が強くなるために、意思決定の基準となるfreeeのカルチャーの再定義をすることになりました。2018年2月に始動し、経営陣を中心に議論を重ね、同年7月に発表、再定義したカルチャーで2018年をスタート(※freeeは7月が期初)したのですが……。実は、それで終わりではなく、今年の7月にもう一度新しいものを定めたんです。

—— 一年の間に、何か方針の転換があったのですか?

辻本:実は元々カルチャーを決めた際にも、そこで終わりではなく、「1年間運用してみて、最終的に今後数年間運用していくものとして固めよう」という話をしていたんです。もともとfreeeが大切にする価値基準のひとつに「アウトプット→思考」というものがあります。「まずアウトプットする。そして考え、改善する」。この価値基準を大切にした結果、ということですね。

なので、前半期はまず再定義したものの浸透活動をしつつ、後半期に向けて社内から広くフィードバックを受け、改めて2019年1月からfreeeとして何をコアに持つべきかを議論しました。その結果、定義すべきはカルチャーではなく、「freeeの社会に対するコミットメント」とそれを支える価値観がふさわしいのではないか、という結論になりました。

「freeeはこんな人たちの集まりであってほしい」という理想のもとに、一度はカルチャーを定めましたが、結局カルチャーって、組織にいる人たちの考えや行動で醸成されていくものでもあるんですよね。最初から「これがこの組織のカルチャーです」と定義されることに、居心地の悪さを感じるという声もありました。

—— なるほど。一度決めたカルチャーをどのように変えていったのでしょうか?

辻本:約360人の社員を、支社のメンバーも含めて60チームに分けて同時間に一箇所に集め、「井戸端超会議」を行いました。チームごとに1時間かけて、freeeのあるべき姿について議論し合いました(2月と5月の2回実施)。昨年は経営陣中心の議論で、社員には議論の過程を共有するという形でしたが、今回は実際に全社員に議論に加わってもらうということを重視したんです。

▲井戸端超会議では多くの社員が熱量を持って参加した(写真提供:freee)

「freeeの社会に対するコミットメント」は、freeeがこれまでも、これからも大切にしていく価値基準「マジ価値」を置き、それを届けきることと定義しました。「マジ価値」とは「本質的(マジ)で価値ある」の略で、「ユーザーにとって本質的な価値があると自信を持って言えることをする」という意味を持っています。マジ価値はfreeeが創業当初から大事にしてきた考え方で、社内でも非常に浸透していますが、「届けきる」というところを今回強調しています。

井戸端超会議の後には「ワクワクした」「早くムーブメントを起こしたい」というポジティブな感想が多く集まりました。一人ひとりが組織カルチャーを作っていく当事者であるという体験をしてもらえたことに、やってよかったと心から感じましたね。

大規模な組織改革により果たされたのは「抑圧からの解放」


▲GCストーリー:大嶋さん

—— GCストーリーは「teal型組織」を導入し、思い切った組織改革を行われたそうですね。そのプロセスはどんなものだったのでしょうか。

大嶋:teal型組織という言い方が適しているかわからないので、社内では「フラット型組織」と呼んでいます。

そこに至るまでに、実は長年の伏線があったんです。まず2013年に、社員が大量離職をするという大事件がありました。当時70人ほどだった社員数が50人くらいまでに減りました。まさに暗黒期ですね。

そのタイミングで取り組んでいたのが、「アメーバ経営」です。要は、一部のトップのみが経営を行うのではなく、全社員が関わって行うというスタイルです。若手マネージャーが中心となり、5~10人くらいでチームをつくって1部門の採算を見るというような仕組みを取り入れていました。マネージャー育成を兼ねていましたので、経営会議では結構きつい指摘も飛び交いました。会社の土台をつくる取り組みとしては効果を発揮したところもあったのですが、徐々に若手社員が”旧来の育成方法では伸び悩んでしまう”ということに気づき始めました。

そこからですね。年次の高い社員や役員陣が若手社員の指向性を勉強し始め、それまで「課題解決型」だったスタイルが「課題確認型」へと変化していきました。経営陣の判断が正解、という前提から、社員たち自身が課題意識を持って動いていく流れができていったんです。

▲社員が主体的に解決策を探す「課題確認型」へと改革が実施された(素材提供:GCストーリー)

—— 非常に大きな組織改革だったと思われますが、現場ではどんなことが起こっていたのでしょうか。

大嶋:2017年からこのスタイルを開始しましたが、社員たちにも最初は違和感がありました。「社員みんなが課題に対する答えを持っている」「社員みんなの考えることが正解」という信頼が前提のもと、経営陣は口を出さないよう、ひたすら我慢していたんです。

千葉:1年間も我慢されたんですか?その意思決定はすごいですね。

大嶋:そうですね。当時の経営陣は、外部アドバイザーから「この1年間ストレスがたまると思うので、キックボクシングに通ってください」というアドバイスを受けていたくらいでした(笑)。そんな時期を乗り越えて、2018年からアメーバ経営の管理会計は残しつつも、マネージャー制度を廃止したフラット型組織へ移行しました。

—— 社内の雰囲気はどのように変わりましたか?

大嶋:端的に言うと、「抑圧から解放」といった感じでしょうか。あるいは「分断から統合」と言えるかもしれません。私の業務にも変化がありました。他部署のメンバーが「人事的な領域に関わりたい」と言って、実際に関わってくれるようになったんです。

以前担当していた新入社員研修に関して言うと、今は現場のみんながやってくれているので私はノータッチです。自発的に研修プログラムを作り込んでくれているので、新入社員が各部門に配属されてからのコミュニケーションも円滑に進むようになりました。

その分、私たちは業務的な余白を持てているので、人事における新規事業をつくるなど、新たな方向を向いて動けるようになっています。

谷風:会社として「採算が合っていくだろう」という見込みはあったのですか?

大嶋:正直、不安はありました。本当に私たちが自由に好きなことをやっていて大丈夫なのか、と。ですが結果的に、前期は黒字に転換しました。管理会計がベースに根付いていたからだと思います。GCストーリーでは全社員が数字を毎朝見ているので、“当事者意識”は前提としてあったんです。

むしろ改革後、当事者意識はより強くなった気がします。以前は自部門を守るために部門同士で衝突することもあったのですが、今は全社で黒字を目指そうと、みんなの意識が同じ方向に向き始めているのを感じています。

千葉:組織をフラットにしたことによって、各自が目指す方向性が揃ったという感じですね。

大嶋:そうなんです。ちなみにGCストーリーでは、「働きがい」ではなく、「全従業員の幸福」という表現を使っています。幸福の中には「貢献」と「成長」が含まれるのですが、これまではどちらかというと、会社の成長をずっと追い続けていたんです。もう一度原点に立ち戻って、「みんなが本当に幸せであることって何なんだろう?」そう考えてたどり着いたのが「全従業員が全従業員の幸せを互いに考える。そしてその輪をお客様、社会へ広げていくために成長する」という今の状態です。

苦しい時期も楽しみながら。それが「働きがい」を生む秘訣

—— 今日の座談会を通して、5社がいかに「働きがいのある会社」を主体的に構築されてきたかが見えてきたように感じます。最後に本日の感想と、今後のビジョンをお聞かせください。

足立:皆さんのお話を伺って、エンプロイー・リレーションズの変化や多様性を感じました。「個と組織がどんな関係性を持てば会社が発展するか」というのは会社によって違っていて、いろんな手法があるな、と。表現の仕方は違うけれど、みんな同じ方向に向かって動いているんだということを、ひしひしと感じました。

田中:そうですね。特に、社員が自分事として考えられるレベルまで、経営層がビジョンやミッションを共有する姿勢はとても大事だと思いました。社員側に目を転じると、会社生活とプライベートの生活があると思いますが、必ずしも切り離して考えるものではないのかもしれません。自分の楽しみや目的を、会社の中で実現することもできるのではないでしょうか。

会社と自分の持つビジョンの共通項をぐっと盛り上げていくと、楽しい会社生活が送れるかもしれませんね。

大嶋:組織改革や働きがいをつくっていくにあたり、ソフト面とハード面、どちらも大事なんだと実感しました。私たちはGCストーリーを「コミュニティのような会社」と表現しているんです。働くうえで、人とのつながりをより親密で温かみあるものとして感じられる。そんな感覚がこれからの企業には必要になってきていると思います。そんな部分をこれからも大切していきたいですね。

辻本:「カルチャーはみんなでつくっていくもの」という意識が大事だなと、皆さんの話を通して感じました。社員一人ひとりが「自分でやりたい」と声を上げたくなるようなカルチャーを目指して、今後社員数が増えていっても原点に立ち返り、社員に働きかけ続けたいです。

千葉:私の気づきとしては、皆さんが「なぜ働くのか」を再定義している状態であるという点です。同時に会社側も、「なぜ自社で働いて欲しいのか」を改めて考え直している。人が組織で働くことの意味合いが変わってきているな、と感じました。

「会社のカルチャー」とはいうものの、実際にはそこにいる「個」が集まり、醸してつくられていくものなんですよね。アドビは今、組織が変わろうとしているフェーズにあるので、これからまさにカルチャーが醸成されていくんだろうな、と期待を持つことができました。

谷風:今回改めて「皆さん楽しみながらやっているんだな」という印象を強く受けました。と言っても、必ずしも「働きがい=働きやすい」ということではない。辛いこともあるなかで、歯を食いしばりながら楽しみを見つけ出すような時だってあるんだな、と。

freeeさんの「超井戸端会議」も、GCストーリーさんの組織改革も、コンカーさんのオフィスづくりだって、きっとすごく大変だったと思うんです。アドビさんも今、組織が変わるなかで色々大変なんだと思います。ただ、「大変だけど、これをやればもっとハッピーな未来が待っているんだ」と信じているからこそ楽しめているんだと、今回改めて実感することができました。

社員が“自分事”として捉えることで「働きがいのある会社」になっていける

勉強会を通じて築いてきた信頼関係、互いへの尊敬、そしてメンバー同士の仲の良さを感じられる、和気あいあいとした座談会となりました。

5社それぞれが「面白がる」ことに重きを置き、“遊び心”をいかにして仕事の中に仕掛けられるかを、日々模索している。そんな熱さが伝わってきます。みなさんの定義する「働きがい」とは、単純な意味での「働きやすさ」ではなく、社員一人ひとりの自発的な行動が、会社組織のカルチャーとして醸造されていくという豊かな状態のことを指すのかもしれません。

一人ひとりが会社のことを“自分事”として捉えることができるのであれば、社員全員が「PRパーソン」という呼び名にふさわしいのではないか──。改めて感じさせられました。(編集部)

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