PRにも欠かせない「編集スキル」はどうすれば習得できる? コンテンツマネジメントに必要な視点を考える【Editor Meetupより】

text by Yu Oshima(PR Table)

「編集者」と聞いて、みなさんはどんな仕事を思い浮かべるでしょうか。

小説やマンガの世界で、作家さんに伴走する人? さまざまな書籍の企画を仕掛ける人? 雑誌を作っている人? Webメディアの運用を担う人? オウンドメディアを通じて企業情報を発信している人?

一口に「編集者」といっても、その役割は業界・業種によって千差万別。なかなか、一筋縄では捉えられない職種かもしれません。

ただひとつ、確かにいえることがあります。「編集者」の視点は、情報を発信していくあらゆる場面で必要とされるものだ、ということ。

それは決して、出版やメディアに限った話ではありません。一般企業にとっても同じです。むしろ、これからは企業の中にこそ、「編集」や「コンテンツマネジメント」の役割を担う人が必要になっていくでしょう。

企業としての活動や、それに取り組む姿勢、背景にある想い。パブリック・リレーションズ(PR)を実践していくうえで、そうした情報発信は絶対に欠かせないことですから。

しかし、どうすれば「編集」「コンテンツマネジメント」のスキルを習得できるのか……?

言葉の定義やその役割が広すぎるためか、現職の編集者でさえ、手探りで日々の仕事と向き合っているのが実情です。

そこで2017121日、PR Tableでは初となるイベント『Editor Meetup』を開催。今回はWebメディアで活躍する編集者の方をお招きし、「編集者のスキルアップ法」をテーマとしたトークセッションを行ないました。会場には編集・ライターとして活動する方が多数参加してくださいました。

今回は当イベントの中で触れられたトピックから一部を取り上げ、情報発信の基本といえる部分をお伝えしたいと思います。

企業の中で情報発信を担っている方は、ぜひ、メディアの「編集視点」を意識して読み進めてみてください。


登壇者プロフィール

林 亜季 (はやし あき)
ハフポスト日本版 Partner Studio チーフ・クリエイティブ・エディター。スポンサードコンテンツをはじめとした、ハフポスト日本版の広告事業を統括している。1985年、福井県出身。2009年、朝日新聞社入社。記者経験後、メディアラボで新規事業開発に携わる。経済部記者を経て、17年7月から現職。 東京大学法学部卒。
櫛田 健介 (くしだ けんすけ)
株式会社リクルートキャリア コンテンツマーケティングG リクナビNEXT編集デスク。『リクナビNEXTジャーナル』『リクナビNEXT転職成功ノウハウ』をはじめ、転職メディア関連のコンテンツ戦略・編集に携わる。特に『リクナビNEXTジャーナル』においてはチームリーダーとして、2年でPV1500%成長に貢献。1985年、千葉県出身。2008年、株式会社ベネッセコーポレーション入社。教材編集・DM制作を担当しつつ、教材を活用したオウンドメディア企画を起案。2014年10月より現職。上智大学文学部出身。卒業論文のテーマは『応仁の乱』
初瀬川 裕介 (はつせがわ ゆうすけ)
株式会社はてな サービス開発部 編集。雑誌出版社で編集業務を経て、Webの世界へ。サムライト社で、メーカー、人材系など大手企業のオウンドメディアを運営し、その後2017年5月から現職。自社サービスに掲載されるコンテンツ、またクライアントのオウンドメディアの運営を担当する。メディア運営から企画立案、取材、執筆、撮影、グラフィック作成など、コンテンツマーケティング全域での業務をフォロー。いま適当に考えた座右の銘は「インサイトは一日にして成らず」。1981年東京出身。
後藤 亮輔 (ごとう りょうすけ)/モデレーター
PR Table執行役員。宮崎県都城市出身。雑誌・CMのコピーライターを経て、エン・ジャパンで採用関連業務、CAREER HACKの運営を兼任。フォトクリエイトでのメディア事業立ち上げの後、サムライトのCCO(最高コンテンツ責任者)として2016年朝日新聞へのバイアウトに貢献。2017年6月よりPR Tableに参画。


左から初瀬川さん、櫛田さん、林さん、モデレータのPR Table 後藤。

その文章、“幕の内弁当”化していませんか?

参加者のみなさんから事前に質問を募ったところ、「そもそも良い文章とは何か。文章の良し悪しをどこで判断しているか?」という問いかけがありました。

それはその文章が書かれる目的や、使用されるシーンによって異なるでしょう。例えば企業とステークホルダーとのコミュニケーション、理解促進を目的とするならば、「事実を正確に、誰に対してもわかりやすく伝える文章」が求められます。文学作品のような秀麗な言葉づかいやレトリックに優れた文章が、必ずしも「良い」と判断されるわけではありません。

さらにトークの中では、書き手がよく陥ってしまうポイントについて言及されました。

いろいろと情報を詰め込みすぎて、“幕の内弁当状態”になってしまっている文章を見かけることがあります。ロジックがきちんと通っていて起承転結が整っていたほうが、文章としては読みやすいですよね」(櫛田さん)

情報がありすぎて言及される箇所があちこち飛んでしまうと、読者が疑問を持ってしまうんですよね。読み手が途中で『これって何のことだっけ』『これはどういう意味だっけ』と感じてしまうようでは、良い文章とは言えないと思います」(初瀬川さん)

一見、当たり前のことのようですが、文章を書くときに「あれも伝えなくちゃ」「この情報も盛り込まなくちゃ」と考えてしまい、いつも収拾がつかなくなる……という方も多いのではないでしょうか。

「編集の役割は“集めて・編む”こと。どんなに良い素材でも、集めすぎると詰め込みすぎの文章になって、結局、何が言いたいのかわからなくなります。1つの文章に1テーマが基本。伝えるためには、『削る』ことが大事なんですよね」(後藤)

具体的な表現が、アウトプットに磨きをかける

次に、毎日あらゆるメディアの記事を編集している登壇者のみなさんに、どうやってアウトプットを磨き上げているのかお聞きしました。

「基本的なことなのですが、美しいものをただ『美しい』と書いただけでは、全然人に伝わらないですよね。だからもっともっと細かいレベルで情報を集め、表現していくんです。その美しいものは何色で、どんな形をしていて、数はいくつくらいあって……というように。細部を具体的に描くことで、読み手に『ああ、美しいものなんだな』と理解してもらうことができます」(林さん)

これも基本……とはいえ、企業が情報発信をするとき、この「細部を具体的に描く」がされていないことが多々あります。

例えば「当社は顧客第一主義です」という言葉だけでは、十分な情報は伝わりませんよね。どんな風に顧客を大事にしているのか、その姿勢を徹底するために社内でどんな取り組みをしているのか、実際の顧客からはどんな評価をされているのか——。具体例がなければ、何も伝わってないのと同じこと。

そうしたポイントも含め、「本当に伝わる文章になっているのか」を客観的に振り返ることも重要になってきます。

「いたって普通のことかもしれませんが、意識しているのは“リバースエンジニアリング”です。『できた製品を解体して、どういう要素で成り立っているのか』『その製品のキーになるところはどこか』——それと同じようなことを、記事に対する分析として行なっています。具体的には、記事の内容について5W1Hを使って分解していくんです。それを積み重ねていくと、文章の構造が体系化されて、他の記事にも応用ができるようになるんです」(櫛田さん)

人は基本、「他人のことには興味がない」

膨大な情報があふれ続けるインターネットの世界では、良い文章を書いただけでは、本当に読んでほしい人たちに届けることができません。ひとりでも多くの人の目にとめてもらうため、メディア側ではどんな工夫をしているのでしょうか。タイトルワークについて聞きました。

「この記事を読むと、どんなメリットがあるか。読み手にとっての“読了メリット”をわかりやすく提示することを意識しています。『誰が』『何を』『どれくらい』語っている記事なのか。ただ固有名詞を入れる場合は、その人が語る意味があるかどうかを考えますね」(初瀬川さん)

「その人が語る意味があるか」。逆に言えば、読者は誰の話だったら気になるのか、読んでみたいと思うのか。

一般人の話なんて、正直、誰も興味がないんですよ。まず読んでもらえない(笑) でも自分と同じ性別、同じ年齢くらいの人が何を考えているのかは、なんとなく気になったりしますよね」(林さん)

実際に林さんが執筆された記事、『31歳。生まれてこのかた、一度も生理がない。(HUFFPOST 20170307日掲載)』。

タイトルワークの「女31歳。」という部分。読者は“他人”には興味がなくても、同じ属性の人には興味をもってもらえるかもしれない。実際、この記事は同年代の女性を中心に反響を集め、多くの人に読まれたそうです。

その文章を誰に届けたいのか、多くの人に届けるためにどうしたらいいのか。文章の内容をブラッシュアップするのはもちろんのこと、こうした「届け方」にも、さまざまな工夫が必要なのです。

文章よりも文脈。“編集”の基準とは

最後に、編集者にとって大切な仕事のひとつである「ライターとの関係構築」について。編集者みずから文章を書くこともありますが、外部のライターへ発注し、記事を作っていくケースがほとんどです。

企業でも、広報・PRのために実際の取材・記事執筆をアウトソースする機会が増えているでしょう。

メディアでは、ライターが執筆した記事をどの程度「編集」しているのか……?

「基本的に、文章はあまりいじらないです。ただし、Webの記事は見出しと最初の一段落(前文、リード)がすべて。ここがズレてしまっていると読んでもらえません。だから前文だけ修正して方向性を示し、全体を調整してもらうことが多いですね」(林さん)

まずは文脈。そこさえ抑えられていれば、適切な情報配置となり、赤字を入れる必要はほとんどなくなります。もちろん、最低限のクオリティが担保されていれば、ですが」(後藤)

また、誰に、どんな目的で、どんなことを伝えるための文章を依頼するのか。その目的によって、配慮すべきことは変わってくるようです。

「はてなでは、いわゆるプロのライターではなくブロガーの方に寄稿を依頼することがあります。その際、自分だったら使わない表現、自分が書かなそうなことはあえて残したりしていますね。読者の方は、そのブロガーさんの熱量だったり、独特の世界観だったりを楽しんでいるケースが多いんです。たとえ文章表現が少々粗くても、編集でその良さを消してしまわないように気を配っています」(初瀬川さん)

大事なのは、文章そのものよりも「文脈」。そこで齟齬が生まれないようにするためには、記事の方向性について事前にしっかりと打合せをし、取材・執筆前の情報共有を丁寧に行なうことが大切になってきます。

まずは「基本」の徹底から

今回は「編集」「コンテンツマネジメント」における基本中の基本を、いくつかのポイントに絞ってご紹介しました。メディアや企業の特性によって、求められるスキルはさらに細分化していると思います。

いざ振り返ってみると、意外と「基本」を徹底できていないことも多いものです。これを機に普段みなさんが書いている文章を見直し、より効果的な情報発信につなげていただけたら幸いです。

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